でも、もう、じゃなくて、やりたいかどうか
人にはそれぞれの背景がある。
私の場合、薬学部を出て、新卒で企業に就職した。
得意だった英語を活かした仕事を探した結果だった。
県外の相手と結婚しても暫くはリモートワークや出張などもあるため、遠くなった職場でも新幹線通勤で続けられた。
けれど、その後夫の転勤が決まり、更に遠くなった結果、飛行機通勤レベルになり、退職した。
退職手続きを進めながら、他人事のように
「なるほど、女性が長く続けるのは難しいってこういうことか〜」と感じた。
結婚相手が転勤族であれば、妻は正社員で勤務し続ける可能性はぐっと低くなるだろう。
勿論、単身赴任であったり、移動した先々で正社員での職を見つけ、働き続けるということも可能は可能だけれど、その先に子供の居る家族を望むのであれば、就職してすぐに産休、育休は取りづらかったり、産後も見知らぬ土地でお互いの両親などの助けは無いという前提であれば、現実的には主婦かパート勤務になる流れが自然になってしまう。
更に、子供を望んでも、子供がすぐに授かるとは限らない。私にとって、子供を計画的に授かるなんて、夢のまた夢だった。
企業での仕事を辞めて、今後も各地で働き続けたいと考えた時、私の場合は勿論薬剤師として勤務することとなる。
新卒から企業のため、実習はあったとはいえ、薬剤師は未経験。出来るだけ、早く薬剤師経験を積んで、年齢に追い付きたかった。
けれど、その頃不妊にも悩んでいた。
だから、不妊治療を続けながらも、薬剤師として勤務出来るパート勤務を選んだ。でもここで矛盾を感じた。
就職させて貰っても不妊治療が上手くいって就職してすぐに妊娠したら、逆に迷惑を掛けるのでは。就職して1年以内なら産休も取れないから、辞めないといけなくなるのでは、、。
不妊治療が落ち着いてから就職した方が良いんじゃないか、でも、それって、、いつ?それは数年、いやそれ以上先かも知れない。
そしてその後奇跡的に妊娠に至ったとしても、妊娠中や産後すぐに初めての職場での勤務は現実的に難しいし、更に保育園に預けようとしても優先順位的には最初から働いていて戻るところがあるママさん達に比べるとかなり低いので、預けられないかも知れない、、そうこうしているうちに、年齢だけを重ね、未経験薬剤師のままになる。。
もう色々考えていたら堂々巡りになって、とにかくダメ元で今の自分の状況を全部話して、それでも受け入れてくれる職場があるかどうかだけでも聞いてみようと、転職エージェントに連絡した。
すると、いくつかの薬局からオファーがあり、その内の一つは同じような境遇の薬剤師が以前勤めていて、不妊治療のスケジュールなどに合わせた勤務調整をしてくれるという。
実際、面接に伺うと、夫の転勤の可能性、不妊治療のこと、未経験薬剤師であること、全て引っくるめても、「大丈夫です。こちらもサポートしますし、結果的に短い期間となったとしても、働いて貰えるならこちらとしては本当に有り難いです。」と言って頂いた。
もう、そこまでのお言葉を頂けたんだから、
つべこべ言わず「やってみよう」と思えた。
初めは不安だったけど、薬局業務は思いの外すぐに慣れた。勿論、薬の知識が追いつかず調べることもあったり、判断に迷って先輩に聞くこともある。
シフトが決まる直前まで、ホルモン治療のスケジュールが曖昧なこともあった。
けれど、蓋を開けてみると、不妊治療は覚悟していたよりは、実際にお休みが必要な日にちは少なく、終盤に近づくにつれてスケジュールもよみやすくなっていった。(とはいえ、正社員でフル勤務ならばスケジュール調整に必ずや苦戦していたはずだ。)
最初の薬局に勤務して、約2年後、夫の転勤が再び決まった。そして、それとほぼ同じタイミングで、妊娠が分かった。
諦めなくて良かった、と思った。
でも、
これは、結果論だ。
もしかしたら、理解ある職場と予め聞いていても、実際は治療との予定調整がかなり難しかったり、嫌な素振りを見せられたりする、可能性もあったはずだし、両立が想像以上に大変で心身のバランスを崩したり、不妊治療に悪影響を与えてしまった可能性もあった。
もちろん、妊娠に至らず、それを焦って働かず不妊治療だけにもっと専念していれば良かった、と後悔に繋げてしまう可能性だって、あった。
でも、働きたい気持ちを今は我慢の時期だと抑えて、数年後にも妊娠に至っていないままの可能性だって、あったのだ。
全ては紙一重。
自分の気持ちを日々天秤にかけて、その時の自分にとって最良だと思う形を見つけたならば、「挑戦」してみる。
挑戦のその先の「結果」が人生を豊かにするんじゃなくて、挑戦そのものが「人生」だと思うから。
この記事が参加している募集
サポート頂けましたら、自分へのご褒美スイーツを買いたいです!そして次なるパワーに変えて、もっと良い文章を書きます(^-^)/