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母乳?ミルク?

産後、一番嫌な質問。

栄えある第一位は、、
「母乳?ミルク?」ではないだろうか。

産後すぐ、産院で授乳指導を受けたけれど、
中々上手くいかなかった。

毎朝、授乳室へ行く。疲れがどうしたってとれない身体で、ふにゃふにゃの心許なさすぎる赤ちゃんを抱き抱え、なんとか両胸10分ずつ吸わせる。母乳を吸わせる前と後で、赤ちゃんの体重を計測して、その差で何㎖程度飲めたか記録するのだけど、、

「あら、2日目なのに沢山飲めてるわね!」
なんて、褒められているお母さんを横目に、今日も「0」と記録する悲しさ。(ちなみに私は訳あって、産後1週間入院した。)

片胸ずつの10分間も長い。
みんな授乳室で、胸をペロンとむき出しにして、赤ちゃんに「美味しい?」と笑顔で声掛けしたりしている中で、私は見ず知らずの人達の前で胸を曝け出すことや、他の人達が居る前で未確認生命体みたいな我が子に声掛けすることもなんだか演技じみて感じてしまって、気恥ずかしい。

我が子を新生児室に預ける時間、携帯で検索を続けてしまう。本当は、産後目を休めるように言われたけれど、、どうしても現状を変えたかった。
溢れる情報の中で「決定的な何か一つの答え」を見つけられたら、あるいは「同じようなことで悩んでいる人達の存在」を感じられたら、現状を打開出来る気がした、救われる気がした。

「新生児 声掛け」
「授乳 うまくいかない」
「授乳 不快」
「母性が出ない」

授乳姿勢が悪いんだろうかと、検索を重ねて、シュミレーションをする。次は、数ミリでも飲んで欲しい。

少しでも免疫がつくように、空き時間に一人授乳室で搾乳をする。少しでも取れたら達成感があるけれど、その都度搾乳機と哺乳瓶を準備してもらい、更に搾乳後は消毒を頼まなければいけない。忙しそうな看護師さんに、頼むことが憚られることもあったし、殆ど母乳が取れなかった時には、ただただ業務を増やしてしまってごめんなさいという気持ちになった。

また、産後数日は、助産師さんがお部屋に来て、乳首や乳房をぐりぐりして、母乳の出が良くなるように揉んでくれるのだけど、これも私には中々辛かった。痛みだけではなくて、ほぼ初めましての人に、「じゃあ、おっぱい出してくださいね」と言われて、捻られたりつままれたりされることにどうしても嫌悪感を抱いてしまうのだ。

もちろん、相手はプロだし、私の胸を見たり、触ったりしたところで何も思わないことは分かっているし、そもそも同性なのに。なんで自分がここまで嫌な気持ちになってしまうのか、正直分からなかった。でも例えばエステで裸になった時なんかは、裏返る時にはバスタオルで全体を隠してくれて、「うつ伏せになって頂けますか?」なんて配慮がある。全然ケースが違うけれど、なんというか、そういう距離感や遠慮感がいきなり無くなって、私自身の身体が物体として扱われているような感覚を覚えてしまったのだと思う。
けれども、不思議。その前にはお産という、人との距離感なんてまるで0で、パカーンと恥ずかし過ぎる体勢のまま大勢の人達の前で、苦しみ悶えて、呼吸の仕方を教えて貰いながら、助産師さんにすがりつきながら、血だらけの我が子を股から出しているのに。そもそも、命の現場の病院とあくまでもリラクゼーション目的のエステを比べるべきではないのだけど、とにかく私はそう感じてしまったのだ。

授乳は結局上手くいかないまま、助産師さんからは「とにかく頻回授乳です。搾乳も良いと思います。」との言葉を頂き、退院した。退院後、両親が少し手伝いに来てくれた時にも、両親や夫の目の前でも胸を出して授乳するのが恥ずかしくて、一人寝室に行って、授乳したり、搾乳したり。

出産前は、お母さんになったら、授乳は赤ちゃんの命に関わることなのだから、気恥ずかしさなんて感じずに自然にみんな出来ることなんだろうと思っていた。それなのに、産後数週間経っても、気恥ずかしさは中々抜けなくて、授乳自体も私にとっては気持ちが良いものではないというか、出来たらあまりしたくないものだった。なんだろう、10分か15分計って、頑張ること、に近い感覚だった。

どれもこれも自分の自意識過剰なところが引き起こしている問題な気もした。殆どのお母さんは、ごく普通に自分の胸を惜しげもなく差し出して、赤ちゃんがぐびぐび飲む姿が可愛い、と感じられるのだろうから。

そんな中で、お散歩や買い物で出会ったおばさまや親戚の方に、「母乳?ミルク?」と聞かれることが続き、悲しくなってしまった。

「母乳があんまり出なくて、、殆どミルクなんです。」
と初めましての人にも、言い訳じみた回答をしてしまう。

いっそのこと、「母乳です!」と嘘を言えればいいのだけど、、それが出来ない私。

「授乳」という言葉にも、劣等感を感じてしまうこともあった。授乳の定義には勿論、ミルクも含まれると思うけれど、「授乳=母乳」の体で話が進んでいることに気付くこともあり、そういう時には嘘をついているような罪悪感も勝手に感じてしまう。

聞く人にとっては、たかが世間話。
けれど、実際には「母乳が一番」という概念もまだあちらこちらで燻っている中で、やっぱり少しプライベート過ぎる質問な気がする。

とにかく私は、今後おばあさんになるまで、赤ちゃん連れのお母さんと話す機会がある時には、この質問は絶対に聴くまいと思っている。きっと殆どの人は傷つかないのだけど。それよりも「可愛いね」「健やかに育っているね」「大変だろうけど、少しでも休んでね」そんな掛けられて嬉しかった言葉を私も出会うお母さんに伝えていきたい。


P.S.
授乳に関しては、悩みが深かったので、一つの記事に到底書ききれませんでした。次回は、母乳外来を検討したことや、その後の授乳の遷移、今になってやっと気付いた、「ミルクでも良い!」という事実について書きたいです!

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おとみ@noteworld
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