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安全保障貿易情報センター(CISTEC) 米国再輸出規制のQ&A更新

昨日2024年9月4日、安全保障貿易情報センター(CISTEC)が、米国再輸出規制のQ&Aを更新しました。
REV.07になりました。

https://www.cistec.or.jp/service/uschina/12-ear_qa.pdf


知っての通り、CISTECは「輸出管理相談」を行っています。
賛助会員は無料、一般企業等は有料。

ただし、米国法については、トップページに記載の通り対応していません。
賛助会員のみトライアルで対応中です。

■最近、米中関係の緊張に伴う米国の対中措置、EARの規制・制裁等について、個別の ご照会や講師派遣のご依頼等をいただく例がございます。 ただ、大変申し訳ありませんが、個別対応はマンパワーに制約があることやEAR等 関連での個別取引事例に立ち入っての判断は難しいこと等から、個別にお受けすること は控えさせていただいいております(元々「相談」は外為法関係を対象としております)。

■他方、それらの点についてのニーズが多々あることは認識しておりますので、以下により 当面は対応させていただきたいと考えております。 ・QA集のアップと逐次拡充 ※ 最初のQA集は本日、アップしています。 ・各種解説資料の早期アップやwebセミナー開催 ・ECRA、国防権限法2019関連の一連の下位規則等が出揃ったところでの研修会の実施

米国規制に関する個別のご照会についてのお願い

つまり米国法については自社で解決しなくてはなりません。
複雑になりつつあるEARのFDP、財務省OFACのSDNリスト、Non-SDNリスト、2次制裁などなど。
自社で知見を蓄積、継承しつつ、
わからないところは弁護士事務所などを利用するようにしましょう。
しっかり予算化しておくことが大切です。

Q&A、気になったものをいくつかピックアップしてみました。
こうしたもの新たな発見があります。理解できていなかったということですね。

Q-I-1:米国の企業からサイズを指定され、当社で設計・製造した貨物はEARの規制対象となりますか?
A-I-1:いいえ。米国の企業から入手した図面に基づいて製造されたのではなく、サイズのみを指定されて日本で設計・製造した貨物はEARの規制対象ではありません。

Q-I-2:米国から輸入したリスト規制の計測器で計測したデータは、EARの規制対象となりますか?
A-I-2:いいえ。米国原産の貨物で測定したデータそのものは、EAR の規制対象となりません。但し、§734.9の(e)から(j)の直接製品規則では、米国から輸入した計測器がプラントの主要構成要素にあたる場合には、規制対象となる可能性があります。

Q-I-5:純粋なカナダ原産品目を米国から輸入した場合にも、EARの再輸出規制の対象となりますか?
A-I-5:いいえ。米国原産品目でないため日本等からのEARの再輸出は規制対象とはなりません。但し、米国から輸出される時点では、米国にある品目の米国からの輸出としてEARの規制対象です。又、カナダ原産品目に米国原産品目が組み込まれたり、直接製品に該当したりする場合には、EAR の再輸出は規制対象となる場合もあります。

Q-I-6:米国原産のソフトウェアをダウンロードさせることなくサーバー上で使用させることは、ソフトウェアの再輸出としてEARの規制対象となりますか?
A-I-6:いいえ。外為法では、ソフトウェアをサーバー上で海外から又は非居住者に使用させることは、技術の提供として規制されます。他方、EARの場合は、ソフトウェアをダウンロードさせることなくサーバー上で使用させることは、ソフトウェアの再輸出にあたらないため規制対象ではありません。

コメント:日本では規制対象だが、米国では規制対象になっておらず、NVIDIAのAIプロセッサを使用したサーバを中国外で稼働し、中国から利用することは規制にならない。

Q-II-5:製品と一緒に消耗品を輸出する場合、製品及び消耗品の合計の価格を分母として組込比率を計算しても良いですか?
A-II-5:はい。通常の商習慣として製品と消耗品が同時に再輸出される場合には、製品及び消耗品の合計の価格を分母として組込比率を計算しても良いと考えます。
尚、「組み込まれた」と判断するためには、以下の3つの要件を全て満たしている必要があります。
1)米国原産品目が、組込品の機能のために必要である
2)通例として組込品の販売に含まれている
3)組込品と共に再輸出される


Q-II-12:設備の輸出で分割して輸出する場合であっても、組込比率は分割前の設備全体で計算しても良いですか?
A-II-12:はい。設備を分割出荷する場合であっても設備全体で組込比率を計算して下さい。

Q-III-1:米国の輸出者に確約書を提出して、米国から輸入した米国原産の技術・ソフトウェアに基づいて、直接的に製造された貨物又はソフトウェアが直接製品となる要件となっていますが、確約書は米国の輸出者が必ず要求してくるものなのですか?
A-III-1:従来の一般的な直接製品規則(§734.9の(b))の場合は、基本的にはそうです。輸出者が許可例外TSRを適用して技術又はソフトウェアを輸出する場合に、輸入者から確約書を取得することが輸出者に義務づけられています。但し、§734.9の(c)から(j)の直接製品規則の場合には、確約書に関する規定はありません。


Q-III-10:直接製品としては、従来の一般的な直接製品の規制と「Entity List脚注1のEntity List 掲載者」向けの直接製品の特別規制のみに注意しておけば良いのですよね。
A-III-10:いいえ。直接製品規則は、§734.9に(b)から(j)まで規定されています。
(b) 従来の一般的な直接製品規則
(c) 9x515 直接製品規則(衛星品目)
(d) 600 番台直接製品規則(機微度の低い武器品目)
(e)(1) Entity List 脚注1直接製品規則
(e)(2) Entity List 脚注 4直接製品規則
(f) ロシア/ベラルーシ/クリミア直接製品規則
(g) ロシア/ベラルーシ軍事エンドユーザー・調達直接製品規則
(h) 先端コンピューティング直接製品規則
(i) スーパーコンピュータ直接製品規則
(j) イラン直接製品規則

直接製品規則の詳細については、以下のURLの「米国輸出管理規則(EAR)の概要(スライド資料)」の49頁から52頁をご参照下さい。

コメント:多い。

Q-IV-1:米国原産品目に関する情報を調達先から入手することが困難な場合があります。どの様に確認すれば良いでしょうか?
A-IV-1:調達先への調達書面に「①EARの再輸出規制の対象になる場合には教えてください。②再輸出規制の対象になる場合には、ECCN又はEAR99のどちらに分類されるかを教えて下さい。」と記載し、調達先から回答がなかった場合、米国の再輸出規制を受けない品目である判断すれば良いのではないでしょうか。それらをエビデンスとして保管して下さい。但し、明らかに米国原産品目であると分かっている場合やMade in USA と記載がある場合には、米国原産品目として管理して下さい。
尚、直接製品規則については、調達先から誓約書(Supplement No. 1 to Part 734Model Certification for Purposes of the FDP Rule)を取得することを BIS は推奨しています。


Q-IV-4:米国原産品目を含まない製品を国内で製造し、「Made in Japan」と表記して販売しています。顧客から EAR の再輸出規制の対象か否かを求められた場合は、回答しなければなりませんか?
A-IV-4:はい。「Made in Japan」と表記されていても、米国原産品目が組み込まれた組込品や直接製品でないことを顧客は判断できないため、その様な製品でない場合には「EAR の再輸出規制の対象となる品目ではありません」と回答してあげて下さい。

Q-X-1:EARの記録保管期間は何年間ですか?記録を保管していないと制裁を受けますか?
A-X-1:EAR の記録保管期間は、原則として輸出・再輸出及び取引等の終了から5年間です。EARの§762.6の(a)に定められています。定められた記録保管を怠ることは、EARに定められる条項への違反(§736.2の(b)(9)の一般禁止事項9)となり、罰則を受ける可能性があります。

コメント:10年にするのだろうか。

Q-X-2:過去の違反・制裁・罰金等のデータは何処かに掲載されていますか?
A-X-2:以下のURLのBISのホームページの一番下の左端の「FOIA」をクリックし、遷移先の本文中の「BIS' Electronic Reading Room」をクリックし、「Export Violations」の「Violations」をクリックして下さい。情報公開法(FOIA)に基づいて違反事例が公開されています。過去の違反事例の一覧表が表示されますので、参照したい事例をクリックして下さい。尚、FOIAでは2007年1月以降のものが掲載されています(2024年9月現在)


Q-X-4:EARでは輸出及び再輸出に加えて国内移転が規制されている場合があります。
又、米国の通関業者や国際宅急便業者がEAR違反で制裁されていますが、日本の国内移転を行う物流業者も制裁対象となるのでしょうか?
A-X-4:いいえ。EARの§732.6の(b)にあるようにCarriersやForwarderは、通関時に許可又は許可例外等が適切に適用されているか否かを確認する義務があります。
この手続は、米国からの輸出において、CarriersやForwarder による確認が違法輸出を防止するための最終ステップとなっているためです。
したがって、第三国からの再輸出や第三国内の国内移転について、Carriers やForwarder にこの様な手続きを義務づけているものではないと考えます。


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