このリアルワールドはまったくリアルじゃないですね。
嘘っぽい感動劇、作り物の正義感、安っぽい哀愁と怒りっぽい民衆。自分のための正義感を振りかざして酩酊する市民。
どこもかしこも饐えた匂いがする。
水で薄められた安物の焼酎、酸化した赤ワイン、柔軟剤の安っぽい甘さ、炭酸の抜けきった砂糖水。人の手による合成物の織りなす香り。
誰も彼もがうらぶれて見える。
画一的なファストファッション、規格化された美しい顔、文明という名前がついただけで変化のない人間性。
身を切る冬の風も、焦がす夏の陽射しも、ひとときを過ぎゆくただの現象にすぎない。
ねえ、何度も反芻された群像劇にリアルを感じろなんて、無理な話なんですよ。