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体験格差解消プロジェクトが目指す社会を実現するために何をするのか?

今回は、リディラバジャーナルの記事「見過ごされてきた社会問題 リディラバが挑む「子どもの体験格差」とは」より、「大人の都合で「一生に一度」を失った子どもたち」のパートをまとめました。

私たち体験格差解消プロジェクトは、今後どのようなアクションを起こしていくのかを、一般社団法人リディラバ代表理事・安部敏樹が語ります。

一般社団法人リディラバ 代表理事・安部 敏樹
2009年、東京大学在学中に、社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム『リディラバ』を開始。 2012年に一般社団法人、翌年に株式会社Ridiloverを設立。2017年、米誌「Forbes(フォーブス)」が選ぶアジアを代表するU-30選出。

―「体験格差解消プロジェクト」とは、一体どんな取り組みなのでしょうか。

大きく2つのチャレンジに挑もうと思っています。

1. 「体験創出プログラム」による子どもたちへの直接的な体験提供

ひとつはシンプルに、子どもたちに体験を提供して、体験格差を解消することです。
具体的には、困難を抱えた子どもたちを日々支援しているNPOと協力し、子どもたちを非日常の場所に連れていきます。

先日実施した第一回のトライアルでは、新潟県越後妻有(えちごつまり)地域で開催される「大地の芸術祭」を訪れて、世界各国のアート作品を観てもらったり、地域のおじいちゃん、おばあちゃんと交流してもらったりしました。
中学3年生〜高校3年生の子どもたち計9人に参加してもらいましたが、半分の子どもは新幹線に乗ることすら初めてでした。

これまで、体験の機会に恵まれてこなかった彼ら・彼女らにとって、価値ある1泊2日になったと思っています。

(トライアルツアーの様子①)
(トライアルツアーの様子②)

2. なぜ体験が重要なのかを示すための調査・研究

もうひとつのチャレンジは、調査・研究です。

僕らが提供するツアーだけで、体験が不足する全ての子どもたちをカバーできませんし、1回のツアーが十分な体験とは言えません。

子どもたちには多様な体験の積み重ねが必要ですが、公的な支援も含め、まだまだ社会の側が十分な体験の量を供給できてない。この現状を変えるためは、体験の重要性を客観的に示す調査・研究が必要だと考えています。

いま既に、それぞれの現場が「子どもたちにとって体験が重要なんだ!」と声をあげています。

現場の声を「子どもたちの体験には定量・定性的にこんな価値があります」と説得力ある調査・研究に昇華させて、社会に訴える役割を担いたいです。

例えばですが、先日あるNPOの方から「定時制高校で卒業旅行を実施した学年は、卒業率が高い印象なんだよね」という話を聞きました。

高校を卒業するのと中退するのでは、卒業後の進路や収入にも大きな違いが生まれてきます。
極端な話ですが、研究として「旅行を用意すれば、これだけ卒業率が高まる。高校卒業と中退では、収入の差がこれだけあり、納める税金の額はこれだけ増加する」という結果が出たら「卒業旅行に公的な支援を投入しましょうよ」とコミュニケーションが取れるようになります。

―厳しい環境にいる子どもたちへ体験を届け、社会全体で体験の提供量を増やすため、調査・研究も行う。
これはリディラバが長年抱えてきた問題意識を形にするプロジェクトだと感じたのですが、いまこのタイミングでのスタートに意味はあったのでしょうか。

正直なところ、ずっとチャレンジしたいと思いながら、人手が必要だな、とか、調査研究ってめちゃくちゃ大変だよな、とか、色々な算段があって、一歩を踏み出せない期間がありました。

そんな中で、やるぞと腹を括ったのは、コロナ禍で子どもたちがあまりに多くを失ってしまったからです。
大人たちは、コロナ禍でも自分の判断で飲みに行ったり、遊びに行ったりしています。我慢ができなくなったら、我慢しなくてもいいんです。

でも、子どもたちは違ったんですよね。
修学旅行や運動会、文化祭と、楽しみにしていた体験は、大人の一方的な決定で失われました。

大人たちは、一生に一度の修学旅行を中止にしておきながら、その分の体験を提供できているのか。
自分たちもコロナで大変だからといって、その負担を子どもたちに押し付けているんじゃないか。

僕は大人の一員として、子どもたちの体験を奪ったままにしたくないし、大人の都合を子どもに押し付ける社会をつくりたくない、そう思ってコロナ禍の中で準備を進め、やっと公開することができました。

―最後にお聞きしたいのですが、このプロジェクトが拡がっていき、体験格差がなくなった社会は、どんな場所になっているのでしょうか。

「子どもが諦めなくてよい社会」だと思っています。
逆に言うと、今は子どもたちが体験格差によって色々なものを諦めざるを得ない世の中になっている。

例えば、AO入試ではこれまでの経験や頑張ったことを聞かれます。AO入試に挑戦して、進路を選びたいけど、どうせ自分には無理かと諦めている子どもがいます。
周囲の友達が好きな習い事をやって、「サッカー選手になりたい」「画家になりたい」と語る中で、僕は習い事したいなんて親に言えない、とやりたいことを諦めている子どもがいます。

子どもたちが、社会に諦めを覚えて「世の中どうでもいいや」と思うのか、社会に希望を持って「自分も社会で活躍したい」と思うのかは、私たち大人に懸かっているんです。

いままさに困難を抱えている子どもたちに、貴重な体験を届けるためでもあり、未来に意思ある大人をつくるためでもある「体験格差解消プロジェクト」
今後も色々な発表が控えているので、皆さん楽しみにしてもらいつつ、応援・協力をしてもらえたら嬉しいです。


これまで2回の体験プログラムを「大地の芸術祭の里」新潟県越後妻有で実施いたしました。さらに、2023年春休みでは、100人の中高生に体験プログラムを提供するために、クラウドファンディングに挑戦しております。

ぜひご支援・シェア、お願い致します!


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