見出し画像

眠れない夜

小学校5年生の時に臨海学校(宿泊活動)があった。
小学校に入ってはじめて学校の仲間と2泊3日を一緒に過ごした。
1日目の夜のこと。
消灯時間は21:00だったか、22:00だったか、記憶が定かではないが、消灯時間になり10人くらいの部屋の仲間たちは、2段ベッドの布団に入った。
はじめの頃は、友達と宿泊するというワクワク感で、おしゃべりしたりしていた。何度か見回りに来た先生に「もう寝なさい」と言われた気がする。そして、気が付くとみんな静かになっていった。

眠れない。
私はいつまでたっても眠れなかった。
「眠れない、どうしよう」そう考え、余計に眠れなくなっていたのかもしれない。枕元に置いていた腕時計を見ると23:00くらいだった。
「このまま眠れないんじゃないか…」そう思うと急に不安になってきた。
その矢先、そっとささやくような声で「失礼します」という声とともに、学年主任の女の先生が入ってきた。またそっとささやくような声で「眠れていますかぁ~」と言った。その瞬間
「ぐふっぐふっ、ぅう~」と泣き声が聞こえた。
その声で小3・4が同じクラスで、時々遊んだことがあるスギの声だ。
スギは「眠れない」と泣きながら先生に言った。
「こっちだって眠れないんだ。そのくらいで泣いて先生に言うなんて、なんて弱っちいやつなんだ。カッコ悪ぃなぁ」そう思ってやり取りを聞いた。

「あらあら、こまりましたねぇ」
先生はそう言いながら、スギをどこかに連れて行った。

そこからまた、布団の中で眠れない時間が続いた。
やはり眠れないのだ。「いっそのこと、自分もスギのように、先生の所へ行って相談しようか…」そう思いながらも「先生眠れません。って相談に行くのはカッコ悪いなぁ」そう思い、また一人で布団の中で過ごした。

スギが出て行って、20分くらい過ぎたころ、スギが先生と一緒に戻ってきた。
「それじゃあ、おやすみなさい」
先生がそっとそう言い、去っていった。「今、追いかければ、助けてもらえるかもしれない…。」「さっきのスギのように今、ここで泣けば助けてもらえるかもしれない…。」という思いもあったが、そのまま我慢してみた。

それからまた時間がたち、時は12:00頃。まだ眠れないのだ。
スギはどうやら寝たようだ。部屋は静か。わずかに友達の寝息が聞こえてきたり、布団の上で姿勢を変えたときの布団の音が聞こえてくるのみ。
いよいよ困った。眠れないまま日付を跨いでしまったのだ。
もう泣きたい気持ちになった。「あのスギが泣いたときに、一緒についていけば良かった。」つまらぬ意地を張った自分を後悔した。
そんな夜だった。

その後、しばらくして気付かぬうちに眠りにつき、朝を迎えた。2泊目は、2日目の活動の疲れのせいか、すんなりと眠ることができた。

いいなと思ったら応援しよう!