北海道一周秘境駅めぐり⑦ 札幌駅~釧路湿原駅~初田牛駅跡~東根室駅
こちらの記事の続きです。
初回はこちら。
札幌から釧路へ
翌日、ホテルの朝食バイキングを泣く泣く諦め駅のホームへ。
鉄道旅行では必然的に朝が早くなるので、朝食付きの宿を取っても間に合わないのは割とある話なのです。
ここから特急「おおぞら」に乗って北海道を横断し、一気に釧路まで向かいます。函館本線・千歳線・石勝線・根室本線を跨ぎ、4時間かけて走り抜ける長距離特急です。
ほとんど人の住まない石勝線の沿線を眺めつつ読書をしていると、やがて太平洋が見えてきました。
昨日石狩湾を見ていたことを思うと不思議な感覚です。あの巨大な北海道を横断してきたのを実感して感慨深くなりました。
釧路駅
釧路に着く頃にはもう昼前になっていました。
当初の予定では釧路で2時間半待って花咲線に乗る予定だったのですが、もしやと思って確認するとこの2時間半で釧路湿原駅に行って帰って来られることがわかりました。
善は急げ。釧路駅のコンビニで急いで水分と軽食を確保し、観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」に乗り込みました(余裕がなかったため写真はなし)。
釧路湿原駅
「ノロッコ号」は毎年春から秋にかけて釧路湿原をゆっくりと走行する観光鉄道です。さすが夏休み期間、列車内は親子連れで賑わっていました。子供の熱気で満ちた車内というのは、これはこれで悪くないものです。
乗車すること25分、釧路湿原駅に到着しました。
多くの観光客とともに列車を降りました。湿原見物へ向かう観光客が捌けるのを待ちながら、簡素な板張りホームを歩き回ります。
森に囲まれ人家が一切ない立地はまさに秘境駅ですが、観光列車が停まり立派なログハウス駅舎のある当駅は手入れが行き届いており、秘境駅特有の「寂び」が足りない気がしました。
ただ、観光客の少ない平日などにくれば比較的安全に大自然を味わえる駅でもあるわけです。初心者向けという見方ができるかもしれませんね。
釧路湿原
滞在が1時間あったので、山を登って細岡展望台まで辿り着きました。しかし、この日は天気が悪かったためか霧に包まれてほとんど何も見えず……そもそも道東は霧が発生しやすい地形だそうで、仕方ありませんね。
霧の中の湿原というのも悪くない眺めでした。
花咲線へ
1時間後、釧路湿原駅から逆方向の「ノロッコ号」に乗りこみ、釧路まで引き返してきました。
コンビニで食料を調達したら、いよいよ最東端を攻める路線、根室本線・花咲線へ乗車です。
ソフトカツゲンを味わっている間に発車時刻がやってきました。
釧路を発車してものの数十分、住宅街を抜けると花咲線はひたすら原野と鉄道林の中を進みます。さすがの秘境路線です。
花咲線と宗谷本線は同じく「さいはて」を目指す路線ですが、旅情としては全く違うものを感じました。
花咲線は宗谷本線と比べて周辺人口がそこそこあり、緯度が高くない影響で植物が鬱蒼としているので、「何もない原野を最果てに向かって突き進んでいく」感覚はさほどありません。
一方で、その鬱蒼とした雰囲気が霧とマッチし、異世界に迷い込んだような気分にさせてくれます。鉄道林の間から時折エゾシカが覗いたり、馬の放牧が原野の果てに見えたりするのも雰囲気を盛り上げてくれました。
「この先に何があるのだろう」と思わせてくれる路線です。
初田牛駅跡
さて、そんな花咲線ですが宗谷本線と同じく秘境駅跡を車窓から確認することができます。代表的なのが初田牛駅です。
初田牛駅は鉄道林にひっそりと存在した駅です。駅に続くのは未舗装の砂利道しかなく、その砂利道を進んだ先も人家が一軒、あとは原野、という駅でした。
牛山氏の秘境駅ランキングでは糠南駅よりも上位に位置していた、というとどれほど人のいない場所にあったかがイメージいただけるかと思います。
初田牛駅は2019年に廃止されたのですが、跡地には駅名標を模した看板があり、ここに駅が存在したことを伝えていました。
5年という月日は残酷なもので、ホームはすっかり草に覆われてしまっていました。十年、二十年の後にはこの看板も自然に飲み込まれてしまうのでしょうか。
東根室駅
さて、釧路を出発して2時間半、東根室駅に到着しました。
根室市内の住宅街に位置するこの駅は秘境駅ではありませんが、日本最東端の駅です。
簡素な板張りホームを降りて高架をくぐると公園があり、そこにモニュメントが立っていました。
この駅での下車をもって、2024年は日本の東西南北の端にある駅(東:東根室・西:那覇空港・南:赤嶺・北:稚内)全てに下車したことになりました。
特に何があるわけでもありませんが、遠くまで旅をしたという事実はそれだけで心躍るものですね。
この旅行から帰ってすぐにこの東根室駅の廃止が検討されているとの報道が出て、寂しく思うと同時にこの旅で下車しておいて良かったと心から思いました。
さて、駅の周囲にあった廃墟を眺めているうち、隣の根室駅で折り返してきた列車がやってきました。
次に訪問予定の昆布盛駅を目指して、列車に乗り込みました。この日の旅はまだまだ続きます。
(追記)続きです。