グッドデザイン賞とったー【提出資料公開】
渋谷ズンチャカ!が「地域の取り組み・活動」部門で2024年度グッドデザイン賞を受賞した。
10年間、みんなで試行錯誤とブラッシュアップを重ねてきた成果なので、素直にとてもうれしい。
応募の動機は、渋谷の真ん中でボランティアが”当日運営のお手伝い”ではなく”企画立ち上げの主体者”となって、台風が来てもコロナが来ても開催しつづけてきたこの音楽祭の事例が、各地のローカルプロジェクトの立ち上げの参考としてお役に立てるのでは?と思ったから。
特に二次審査に出した補足資料たちは具体事例としていろんなローカルで活用されたらうれしいのと、以下の記事にリスペクトを込めて、グッドデザイン賞の一次審査と二次審査に提出した資料を公開します。
ちなみに、渋谷ズンチャカ!はこんな感じのお祭りです。
一次審査
一次審査はこんな感じ。
フォーマットに沿った書類審査なので、以下、設問ごとに何を書いたか展開していきます。
■ 概要(公開・160字以内 / 英文400字以内):
音楽に詳しくなくても楽器ができなくても誰もが音楽を楽しめる場を目指し、音楽観賞のクオリティを上げることより音楽体験へのハードルを下げることに重きを置き、誰かが決めた音楽の正解を享受するのではなく各々の好きや楽しみ方を持ち寄って、毎年新たなボランティア主体で企画立案から担う、渋谷の真ん中で”みんなでつくる”まちの音楽祭。
This is a music festival "created by everyone" in the center of Shibuya. We will create a place where everyone can enjoy music, even if they don't know much about music or play an instrument. Here, everyone brings their own likes and way of enjoying music, not a pre-determined definition. Volunteers take the initiative in planning and organizing the event and they are reorganized each year.
■ デザインのポイント(公開・各50字以内):
企画をするのがはじめてのボランティアでも実現へと進められる緩やかなガイド。
「ためしにやってみよう」を促進しつつ、主体者が不在のことは勇気を持ってストップする。
誰かがつくった「正解さがし」ではなく、自分たちなりの「正解づくり」を促す。
■ デザインが生まれた理由/背景(公開・400字以内):
「本気の素人はやっつけのプロを超せる」と信じている。もちろんプロの本気は面白いが、プロや有名かどうか?に躊躇せず皆がもっと「やってみたい」を幸せに試みられたら、もっともっと世の中面白くなるはず。大きな主語でつくられた面白いことを受け身で消費するだけでなく、手探りでいいので自分たちという小さな主語でつくってみる。とはいえ、自分の考えを場に出すことって本当に勇気のいることだし、そもそもやりたいことを言葉にできるってすごいこと。漠然とした「なにかやりたい」が主体的具体的な「もっとやりたい」へと昇華する一助となるためのデザインが必要だ。そして、わたしたち自身の手でデザインをアップデートし続け、渋谷の真ん中でそれぞれを主語に社会を彫刻することを試みる。まちの主役は”人”である。音楽を通して多様な人々が能動的にまちに関われる機会を創出することで「誰もがまちの主体者であれる」という気付きを増やしていく。
■ デザインを実現した経緯とその成果(公開・400字以内):
目指したいのは、平均値としての”みんなでつくる”ではなく、たくさんの"わたしがつくる"まちの音楽祭。それぞれの”わたし”の主体性の発露に寄与するために、背中を押すよりも障壁を減らすこと・ベストプラクティスへの精度を上げるよりチャレンジの母数を増やすこと・安易に巻き込まないことを意識し、「先に役割ありきではなく、関わるメンバーの"担ってみたいこと"ありきでのチームデザイン」「企画のプロのやり方を因数分解し順を踏みつつ、メンバーからの称揚と気付きを得ながら進めるプロセスデザイン」「限られた時間で多数の対話を交わしつつ、共感度の可視化を挟むことで声の大小に引っ張られない議論のデザイン」「演奏技術だけでなく、多彩多様なアピールや持ち味を加味するステージ出演者選考のデザイン」「発言者の偏りを抑え、雑談を交えたオープンなコミュニケーションを促進するチャットツールのデザイン」などに工夫を重ねてきた。
■ 仕様(公開・200字以内):
【2023/7/9(日)「第9回 渋谷ズンチャカ!」開催情報として】通年企画ボランティア:105名 + 当日運営ボランティア:126名|まちなかステージ出演者:137組・403名|会場:ハチ公前・渋谷駅・渋谷センター街・宇田川交番前・神南小学校・宮下公園・キャットストリート ほか|協賛:サッポロビール・東急・東急不動産・東京建物・三井不動産 ほか|助成:アーツカウンシル東京(芸術文化魅力創出助成)
■ デザインの改良、競合・類似デザインとの差異について(非公開・400字以内):
2014年当時、渋谷で新しい音楽祭をつくるにあたって、いまここでやるべきは所謂「渋谷っぽい」キュレーションプログラムなのか?、シティプライドの醸成が目的であれば渋谷の真ん中でやるからこそDIYに振り切った方がインパクトをつくれるはず、と舵を切った。本番当日よりも当日までのプロセスに重心を置き、観客数よりも渋谷のまちへの関わりしろを広げることに注力する。そして、渋谷のまちなかで幸せに音が鳴った前例をつくり、後続がその場所で音楽活動を行いやすくする。また、ボランティアが「お手伝い」ではなく「主体者」となって、関わり方の濃淡を選べるゆえに多様な背景の人が参画でき、淡い関わりでも歓迎されるし汗をかいた分だけ報われるようにする。DIY主体ではあるが限られた予算の中でクリエイティブの強度を担保するために、PR映像だけ予算をかけてクオリティを突出させWebのメインビジュアルや街頭ビジョンで展開している。
■ これまでの実績(非公開・400字以内):
2014年6月『東京2020オリンピックに向けて新たになりゆく渋谷の未来に音楽を通じて市民が誇りと愛着を持って関わるきっかけをつくりたい』という当時の渋谷区長の意に賛同した地元商店会が集まって実行委員会を発足。渋谷のまちなかを舞台に、渋谷に集う人々自らの手でつくる「市民共創型」の音楽祭を立ち上げようと、2014年7月にプレイベント「第0回 渋谷ズンチャカ!」を実施。その上で2015年8月の「第1回 渋谷ズンチャカ!」を企画から担うボランティアを募り、実現性・安全性・体験強度の担保として各分野のプロをガイド役に、企画運営の主体をボランティアチームにシフト。以降、2019年の台風直撃や2020年以降のコロナ禍も市民ボランティア主体で乗り越え、一度も中止することなく毎年開催している。
過去10年間の延べ実績として、ボランティア1,451人、出演者685組・2,593人、会場50ヶ所。
■ 自由記入欄(非公開・400字以内):
プロでも有名でもない普通の人たちでも「やってみたい」と「やれること」を持って踏み出せば、こんなことが実現できる。10年間、試行錯誤を重ねてきた「渋谷ズンチャカ!のつくり方」のデザインは、各地のローカルプロジェクトの立ち上げに役立てるのでは?と今回応募した。
実際、過去のボランティアメンバーが渋谷ズンチャカ!での経験を活かして、大手IT企業での自主プロジェクトや成田市での地域プロジェクトを立ち上げ実行した。重視するのは利己を起点とした利他。「誰かのために」だけだとピントがズレがちだし、「自分のために」だけだと独りよがりで広がらない。自分の好奇心や偏愛で動き出した結果、他の誰かも喜んだ。この流れを大事にする。
予算面での継続のしくみとしては、協賛各社に賑わいづくりのショーケースで応えるとともに、年々ボランティアのできることを増やして外注コストを下げていく。
二次審査
二次審査はこんな感じ。
A1パネル1枚(必須)と補足資料(任意)という提出形態だったので、A1パネルで「全体のデザイン」として1年間の流れを示して、補足資料として実際に各回の企画会議で使ったスライド類を添えた。
1年間の流れの中で、特にポイントとなる部分に「補足資料 ##」と番号を振って各補足資料の該当ページへ飛べるようにしてるので、あわせて参照してみてください。
(二次審査の際は紙資料だったので、各該当ページにインデックスタグを付けてた)
■ A1パネル:
■ 渋谷ズンチャカ!づくりにあたって:
■ 企画のヒント:
■ 全体:
■ 部門:
先に役割ありきではなく、関わるメンバーの”担ってみたいこと”ありきでのチームデザイン
■ アトラクション:
企画のプロのやり方を因数分解し順を踏みつつ、メンバーからの称揚と気付きを得ながら進めるプロセスデザイン
■ ステージ:
初心者でもエントリーできて、演奏技術だけでなく多彩多様なアピールや持ち味を加味する出演者選考のデザイン
■ 決め方・進め方:
限られた時間で多数の対話を交わしつつ、共感度の可視化を挟むことで声の大小に引っ張られない議論のデザイン
■ コミュニケーション①:
発言者の偏りを抑え、雑談を交えたオープンなコミュニケーションを促進するチャットツールのデザイン
■ コミュニケーション②:
アトラクション企画の練習を通して、メンバー同士のコミュニケーションの量を増やすきっかけのデザイン
■ テーマへのリスペクト:
「音楽≠ツール」とするために、音楽の身体的体験から音楽へのリスペクトを醸成する機会のデザイン
まとめ
今回のグッドデザイン賞に取り組むにあたって、これらの資料づくりも「一緒にやりたい!」って挙手してくれたチーム・ズンチャカ!の面々と「あーでもないこーでもない」&「それ超いいね!」って言い合いながら、それぞれの得意や興味や出来ることを持ち寄ってつくりあげた(超おもしろかった!
「正解はない≒たくさんある」ので、引き続きいろんな面々と一緒に試行錯誤~ブラッシュアップを重ねていきたいす。
、、こっちも続き書かなきゃなー(この2年でけっこうアップデートしたから書き直さなきゃだ。
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