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【映画】ザ・スクエア 思いやりの聖域【感想】
※この記事はネタバレを含みます※
●あらすじ
クリスティアンは権威ある現代美術館のキュレーター。洗練されたファッションに身を包み、バツイチだが2人の愛すべき娘を持ち、そのキャリアは順風満帆のように見えた。彼は新たな企画として「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いたアート作品を展示すると発表する。四角の中は人々に「思いやりの心」を思い出してもらうための聖域であり、社会をより良くする狙いがあった。だが、ある日、携帯と財布を盗まれたことに対して彼がとった行動は、同僚や友人、果ては子供たちをも裏切るものだった…。
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●『 ザ・スクエア 思いやりの聖域 』の感想(※ネタバレ注意)
本作は全編通して、映像で魅せる映画である。
ストーリーが無いというわけではないが、それよりも、人間の愚かさ、面白さを、様々なアプローチで視聴者に訴えかける短編集のようだ。という印象を受けた。
主題にもなっている、『ザ・スクエア』は思いやりの聖域であり、『ザ・スクエア』の中では人々は平等でなければならない。
しかし、本作の登場人物は全員、『ザ・スクエア』の外にいる。
だから、自己中心的な理由で周りに迷惑をかける。
都合の良いときだけ人を頼りにして、都合が悪くなると言い訳をする。
だが、環境や状況によっては、これらの行為が正しい場合もある。
『思いやり』の線引きはどこなのだろうか?
どこまでが良いことで、どこまでが良くないことなのか?
どんな状況の人を助けて、どんな状況の人を助けないのか?
これが本作の一貫したテーマであるといえる。
特に主人公は、本作のテーマに踊らされている存在である。
私が一番面白いと思った主人公の行為は、物乞いに頼みごとをするくだりだ。
物乞いは一度主人公に金銭を要求するが、主人公はそれを拒否する。
その後、主人公は先程拒否した物乞いに対し、荷物番をするよう頼む。
主人公がいかに自分のことしか考えていないかが非常にわかる展開である。
自分は他人を助けないが、自分は他人を頼る。
また、そもそも主人公は序盤に、助けを求められた人にスリをされている。
人間は簡単に助けを求めるが、一方、助けを求められた場合には、”助けるかどうか””助けるに値する人間かどうか”という判断が付与されてしまう。
本作内で炎上して問題になった動画でも言っていたが、社会的弱者であれば簡単に助けるのか?では、どこからが社会的弱者なのか?
答えは人によって異なるものであるだろうし、正解のない問いかけである。
しかしながら、本作のこの状況に遭遇したら、自分はどうするか?と考えさせられる。
また、本作は”いたたまれない状況”を作り出すのが上手いと感じた。
ほとんど全てのシーンでいたたまれない気持ちになり、実際にこの状況になったら雰囲気の悪さで、気分が悪くなることだろう。
シェフが怒りのあまり大声を出し、会場が静まり返ってしまうシーンは、いつまでも私語を止めない生徒に向かって、急に声を荒げて怒り出す先生を思い出した。
突発的に大きな声で暴言や奇声を口にする障がい者の人や、パーティ中に言葉が通じない(人間が演じている)猿が乱入するパフォーマンスなどは、本当にリアリティがあり、実際に似たような状況にいたときと全く同じ気持ちになった。
それ以外にも、いたたまれない気持ちになるシーンは、特殊な状況というわけではなく、人間が今まで経験したことのある日常生活上の”いたたまれなさ”なので、監督は本当に趣味が悪いと思う。(褒め言葉です)
本作の監督は『フレンチアルプスで起きたこと』という映画の監督でもあり、こちらも、非常にいたたまれない気持ちになる映画なので、本作を気に入った人は、是非観てほしい。
本作は人間の面白さや愚かさを皮肉たっぷりに訴えかける映画である。
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●今回レビューした映画の詳細
題名:ザ・スクエア 思いやりの聖域
監督:リューベン・オストルンド
2017年公開
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