一挙一動皆責任あり 読書ノート#15
<著作名>人生 <著者>夏目漱石 <レーベル>kindle
昨日の「夢十夜」に引き続いて、今日も夏目漱石の作品をかじってみる。
「人生」は、夏目漱石の作品とは一風変わった文体であると思う。格調高く、少し読みにくい。だが、夏目漱石がどう云う風に人生を考えているのかを理解するには、分かりやすい作品である。
この作品の真髄は、次の一文に尽きる。
思ひがけぬ心は心の底より出で来る、容赦なく 且 乱暴に出で来る
私は、目標がなくても、アイデアがすぐに出てこなくても、焦る必要はない。そのようなこと(=思いがけぬ心)は、ある時突然顔を出すのだ、と解釈した。しかも、少しずつ顔を出すのではなく、突如として顔を出す。
例えば、一般的な大学生の場合。目標もない。夢もない。毎日遊んでばかりいる。そんな大学生が大勢いる。ある大学生もそんな状態だった。しかし、ある時急にあることがきっかけで、夢や目標を見つけ、一心不乱に勉強し、読書し、生活を含めたすべてをその目標に捧げる。そんな状態を言うのではないか。
ここで私自身の話をしよう。私は、あるとき急にアイドルが好きになった。何の前触れもなくだ。そのアイドルに出会ったときは、本当に雷に打たれたような気持ちになった(心の底より)。それから、その子が所属するグループのファンクラブに入り、楽曲はすべて聴き、雑誌もすべて読んだ(容赦無く、且乱暴に出で来る)。
最後に、夏目漱石「人生」の作品中に今の社会にぴったりな箇所があった。
三陸の 海嘯 濃尾 の地震之を称して天災といふ、天災とは人意の 如何 ともすべからざるもの、人間の行為は良心の制裁を受け、意思の主宰に従ふ、一挙一動皆責任あり、 固 より 洪水 飢饉 と日を同じうして論ずべきにあらねど、良心は不断の主権者にあらず、 四肢 必ずしも吾意思の欲する所に従はず、一朝の変 俄然 として己霊の光輝を失して、 奈落 に陥落し、闇中に跳躍する事なきにあらず、 是時 に 方 つて、わが身心には秩序なく、系統なく、思慮なく、分別なく、只一気の盲動するに任ずるのみ
今の地球の状態も「天災」と言うだろう。その天災の時人間は、
「一挙一動皆責任あり」
だと言う。大人しく家で読書でもしていたい。