捨てる力 読書ノート#19
<著作名> 捨てる力 <著者> 羽生善治 <レーベル> PHP文庫
日々の暮らしが窮屈になっていく中、自分の展望が明るくなり、今やるべきことは何かという「考え方」の部分に指針を与えてくれる書籍に出会った。ここ半年くらいで読んだ本の中ではダントツに刺激を与えてくれた。
私は、何回か斉藤孝氏や外山滋比古氏の本を紹介している。両氏の著書には共通する考え方がいくつかあり、私もそれをよく実践する。羽生氏もこのグループに入りそうだ。今回は、3人の方が日々している考え方を本書の引用を元にまとめた。
1.自分の頭で考える
羽生氏が頭が良くなる方法として紹介しているのが「自分の頭で考える」こと。言い換えてみれば、思考することだろう。外山氏の大ベストセラー「思考の整理学」があるように思考をし、アイデアを出すことは、大前提なのだ。
思考する時に大切なこととして次のように述べている。
まっさらな状態で先入観なしで見ることが一番重要でしょう
既存の固定観念にとらわれず、簡単に、単純に考えること。そうすることによって、自然と直感力が冴え、進むべき道が見えてくる。
2.繰り返しやる、真似をする
何度も何度もやることで、自ずとその物事の本質が見えてくる。繰り返し物事をやる時には、基礎的なことを真似することが重要。基礎が完璧に押さえられていることで修正や方向転換がしやすい。ここで「押さえる」と表現したのがポイントで、この時点で理解する必要はないという。ただ、繰り返しやりながらその<プロセス>を理解していくのがコツなのだ。「量」をこなすことで自ずと、次項で紹介する「直感力」を鍛えることにつながるそうだ。
(基本的なことや基礎的なことについて)技術的にも重要で、そこがきちんとしていれば、方向を間違った時や誤った時に修正が利きやすいのです。
真似ることで成り立ちを理解し、一部分をくっつけたり話したりしながら、想定外のものに対応する力をつける。
真似から入って、プロセスを知ることです。
対象をじっくり観察して、特徴をとらえ、形を模倣する。
3.直感力を持つ
生活する中で何かに直面したり、勉強をしたりする時、重要なのはその物事の本質や核となる部分を直感的に理解することだ。この考えは、斎藤氏の著書のなかでよく述べられているものだ。直感力の良いところは、鍛えることで素早く本質がわかることだ。本質が分かったら、そこから物事を「読む」、つまりさらぬ深く理解していくことが大切だ。
直感力とは物事の進むべき道を示す「羅針盤」のようなもの
相手の意図を考えることから駆け引きは始まる
洗練されるとは、無駄をなくすこと。
4.真似から理解へ
物事は真似しただけでは身につかない。さらに、自分自身の視点を加えて、自分のフィルターに通さなければならない。料理もレシピ通りではなく、隠し味を加えるとさらに味に深みが増したり、旨味が出てくることがあるのと同様の原理だ。そして、自分が身につけた知識を昇華して、知恵にする。この作業こそ普遍化だ。
知識(一時的なもの)は単に得ればいいというものではなく知識を積み重ねて理解していく過程で「知恵」(普遍的なもの)に変える必要がある
定跡はただ覚えるだけでは役に立たない。自分のアイデアや判断を付け加えることで初めて価値が出てきます。
定跡はただ覚えるだけでは役に立たない。自分のアイデアや判断を付け加えることで初めて価値が出てきます。
理解しているものの一部分を切り取って違うもののヒントにする。理解するということは、それを分解したり組み立て直したりして、実践的に実用的に使うことだと思います。
こうして著者の考え方と自分の経験をまとめるのも一種の普遍化だ。
最後に、こんなご時世だからこそ一番響いた言葉がある。今のこの窮屈な生活をどう考えるかは全て自分次第なのだ。(Everything depends on me.)
人間にはふた通りあると思っている。不利な状況を喜べる人間と喜べない人間だ。
おまけ その他心に残った箇所
時間制限があるからこそ目標に向かって集中できる
自分自身を裏切らない努力の姿勢が未来の結果として現れてくる
未知の局面に出くわした時どれだけ素早くその局面に対応できる力を持つか
「勝った」「負けた」だけではない、違う視点が必要
仮説・検証・反省
好きなことなら時間が経つのも忘れてやり続けることができる。本当に夢中になったら黙っていても集中するものだ
将棋に限らず何事でも発見が続くことが楽しさ、おもしろさ、幸せを継続させてくれる
(引用:捨てる力 羽生善治著 PHP文庫)