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ロスジェネ氷河期が問い直すコミュニケーションの価値 本音と建前の間で揺れる私たち



コミュニケーション能力の重要性が叫ばれる現代、私たちロスジェネ世代もまた、その波に翻弄されている。しかし、時には「コミュニケーション能力」とは何かを、改めて考え直す必要があるのではないだろうか?ビジネスの場で強調されるのは“表面的な”コミュニケーション。だが、私たちは本当にそのような表面だけの付き合いを求めているのだろうか。

私はむしろ、人と心を通わせた「本音の付き合い」を大切にしたいと感じる。しかし、世間が要求するコミュニケーションスキルは、「心よりも場の空気を読むこと」「うわべを整え、事をスムーズに運ぶこと」を重視している。ここに、現代社会の一種の矛盾が見えてくる。この矛盾が生む窮屈さや疲れについて、ロスジェネ世代の視点から深堀りし、今後の向き合い方を考察してみたい。

1. 表面だけのコミュニケーションが求められる社会

今の社会では、どんな場面においても「空気を読む」ことが重要視されている。特にビジネスシーンでは、相手との表面的な会話で場の和を保ち、「問題なくこなす」能力が強く求められている。ここには、「失礼のない対応」「円滑な進行」といった効率や表面上の円満さが重視され、本音や個性を前面に出すことが敬遠される傾向がある。

しかし、これによって感じるのは「自分が偽られているような感覚」だ。話の内容よりも「空気を壊さない」ことが重要視される現代の人間関係では、心を通わせる機会が減り、ただの形式的な会話が中心となってしまう。これにより、孤独感が増してしまう人も多いのではないだろうか。

こうした「うわべの付き合い」によって、人間関係がスムーズに回る一方で、どこかで「自分の本音はいつも隠されている」というもやもやを抱えている人も少なくない。ロスジェネ世代としては、心を通わせた関係を望むが、社会が表面的な付き合いを求める以上、その葛藤が尽きることはないのかもしれない。

2. ロスジェネ世代が「心を通わせた付き合い」を求める理由

なぜ私たちが心を通わせた付き合いにこだわるのか。それには、私たちが育った環境が大きく影響している。ロスジェネ世代は、バブル崩壊後の不安定な経済の中で育ち、「苦労してこそ意味がある」と教えられてきた。このため、上辺だけの付き合いに価値を感じることが難しい面がある。

また、私たちは「本当のつながり」を求めることで支え合ってきた経験が多い。リーマンショックや、就職難を経験したこの世代にとって、表面的な付き合いよりも、互いに本音で支え合う関係の方が心の拠り所となることが多い。いわば、私たちにとって「心を通わせる関係」は、これまでの苦労の中で見出した生きるための手段とも言えるだろう。

そのため、表面だけの関係では物足りなさを感じてしまう。「心を通わせた本音の付き合い」を持つことは、世代的な価値観とも関わっており、私たちが生きていくうえで必要不可欠なものだと感じる。

3. 表面的なコミュニケーションの必要性とその疲れ

しかし、私たちは本音を重んじる一方で、表面的な付き合いも必要であることを痛感している。なぜなら、社会が求めるスキルセットとして、こうした「無難な付き合い」が不可欠だからだ。

例えば、職場の飲み会や、取引先との会話など、日常の多くの場面で“本音”を前面に出すことは現実的に難しい。場を壊さず、適切な距離感を保ちながら会話をすることが求められる。そして、その「うわべのコミュニケーション」は、周囲との関係を壊さずに維持するための手段だとも言える。

しかし、この表面的な付き合いが続くと、心のどこかで「本音を伝えられない自分」に疲れを感じてしまう。また、いつも「うわべを装う」ことで、本当に心から話せる相手が少ないことにも気づいてしまう。ロスジェネ世代にとって、これは心の拠り所を見失うような感覚だ。だからこそ、「本音で話せる相手が少ない社会」に対する苛立ちや寂しさを感じてしまう。

4. 心を通わせた付き合いを実現するために

このように、表面的なコミュニケーションと本音の付き合いの間で揺れるロスジェネ世代が、今後どのように人間関係を築いていけばいいのか。

一つの提案としては、「本音の付き合い」を少しずつでも増やしていくことだ。例えば、仕事関係でも信頼できる相手がいるなら、積極的に少しずつ本音を交えて会話をすることを試みてみる。表面的な付き合いが続くと、徐々に「自分の意見や感情を出すこと」に対しての恐れが大きくなってしまう。しかし、一方で少しずつ本音を話す場面を作ることで、「意外と相手も本音で話したかったんだ」と気づくことがある。これはお互いにとって救いになる瞬間だ。

また、「本音と建前を使い分ける場面を明確にする」ことも重要だ。すべての場面で本音を出すことは難しいが、プライベートな場面ではなるべく「素の自分」でいられるように意識する。友人や家族など、信頼できる相手と過ごす時間を大切にし、その時間を「心の回復」の場とする。こうすることで、仕事や表面的な付き合いで感じるストレスも、少しずつ和らいでいく。

5. ロスジェネ世代の考える新しいコミュニケーションの形

現代社会で求められるのは、表面的なスキルだけではない。むしろ、表面だけのコミュニケーションではなく「自分の本音を少しずつ出せる」勇気や、「相手の本音を受け入れる」広い心が、今後の人間関係を豊かにしてくれるかもしれない。

私たちロスジェネ世代が培ってきた、「苦労を共にする仲間との絆」や「心からの支え合い」の価値観は、今後も重要であり続けるだろう。そして、社会に合わせるだけではなく、私たち自身が新しいコミュニケーションの形を提案していくことが、次世代にとっても大切なことだと感じる。


私たちは、「うわべだけの付き合い」に違和感を抱きつつも、「本音を語れる場」が少ない現実に直面している。しかし、それはロスジェネ世代が新しいコミュニケーションの在り方を模索し、提案していくきっかけにもなるはずだ。本音を少しずつでも取り戻し、心を通わせた関係を築いていくことこそが、これからの社会で真の人間関係を築くための一歩なのかもしれない。

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