「遺留分」を侵害する遺言は要注意!
相続財産は被相続人(亡くなる方)の所有物です。自分の財産を誰に相続させるかは被相続人の意思が尊重されるため、たとえ遺言書に「友人Aに全て相続させる」「息子Bに全て相続させる」と書かれていたとしても、その遺言書は有効です。
遺留分侵害額請求って?
しかし、配偶者や子などの法定相続人が財産をいっさい相続できないとなると、その後の生活に支障が生じるかもしれません。法定相続人にとって過度に不利益な事態が生じることを防ぐため、一定範囲の法定相続人には民法で遺産の最低限度を保障しています。
この保障範囲を「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。そして、「遺留分」を侵害している相続人に対して「遺留分」の請求を行うことを「遺留分侵害額請求」といいます。
【 法定相続分と遺留分 】 ※兄弟・姉妹には遺留分はありません
相続財産は預貯金などの「お金」よりも、主に「不動産」であったり、亡くなったのが経営者であれば「自社株式」であるケースが多いため、「遺留分侵害額請求」をする相続人にとっては不動産を共有名義としてもらうことでその後の権利関係が複雑になってしまったり、経営に興味がないのに非上場株式を相続したりと、請求する側、請求された側どちらも望まない結果になってしまうことが頻繁に起きていました。オーナー系企業では頻繁にあり得る話ですので、特に注意が必要です。
2019 年 7月から施行された民法(相続法)改正により、この「遺留分」に関する制度の内容が改められ(新民法1042条~1049条)、2019年7月1日以降開始の相続を対象とした「遺留分」については「金銭」での請求が原則になりました。
支払う側は大変!
「遺留分」を請求する側にとってはありがたい改正ですが、「遺留分」を支払う側としては相続財産が「不動産」「自社株式」が中心で「お金」が無い場合には、相続した「不動産」を処分するなどして「お金」を工面しなければなりません。
被相続人(亡くなる方)が加入している生命保険の死亡保険金受取人を、「遺留分」を請求される立場になる可能性が高い法定相続人に指定しておけば、いざ相続時には受け取った保険金をもって遺留分侵害額請求に充当することが可能となります。
*生命保険の死亡保険金受取人には法定相続人しか指定できませんので、冒頭の遺言例に出てくる友人Aが遺留分侵害額請求をされた場合にはこのスキームは成り立ちません
【まとめ】
※遺言を作成する場合は、法定相続人の「遺留分」を理解し、禍根を残さないような財産の分け方にしておく配慮が必要です。
※「自宅」や「不動産」を相続する予定の法定相続人は、「遺留分侵害額請求」に備えて「お金」の準備をしましょう。(生命保険の死亡保険金受取人にしてもらうなど)
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