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5.10章 銀色の弾丸
(宙域のリソース化を完了)
(意外とあっけなかった)
(こんな事ならば、はじめから僕が出ればよかっただけのことだったな)
(しかし、ヴィタリックの思惑もわからないからな)
(そういう意味では、『ソラナ』あいつはそれ相応の仕事をしてくれた)
考えをまとめ、リソース化した宙域を回収しようとするAFRO
しかし、その手に銀色の光が灯ることはなかった。
(ああ。まだ、このブロックチェーンの世界で振舞う為の意識体に精神が馴染んでないのかもしれないな)
そう思い両手を見つめていたその時、輝く一筋の光がAFROを捉えた。
(!?は??)
敵影も気配も、何もないはずなのにどこからか打たれた光
その光は、しっかりとAFROのコアを射貫いていた。
(ちょっと、まて、よ)
「ほーぉ、お前、そんな面も出来たのな?」
そういって、爆笑する男の影が見えたような気がした。
「貴様!!FOX!」
「消滅したのではなかったのか!?」
「あらあら、これは。想像以上にテンプレな回答をありがとうございます。主殿」
「いやー、あなた様においては、まさか、意識体如きにコアを射貫かれるとは思っておられないのでは?」
「何を舐めた口を!」
「舐めているのはテメーだよ。AFRO。意識体なめるな!!」
「この世界で生きているのは、彼女達意識体なんだよ。だからな。おめーの出番はねぇってわけだ!!」
「良く吠えるな、FOX」
「吠えもするさ。こちらは、怨敵のお前を射貫く大役を果たせたのだからな」
「怨敵!?あれほど、目をかけてやったのに怨敵か。都合のいいことだ」
「アラメダリサ―チCEOにお前を抜擢してやったのは誰だと思っているんだ」
「抜擢してほしいとは言ってねぇぜ。ありゃー脅迫みたいなものだったからな」
「『お前の意識を消して、CEOになるか?』それとも『意識を残したまま、私の忠実なCEOになるか』だったよな?」
「どちらも、俺の大切なものを奪いやがって」
「お前の大切なものだと?そんなもの奪った覚えはないがな」
「むしろ、私は、お前に良く与えてきた」
「地位、名誉、金、妹、部下、友人、その他もろもろだ」
「はは!」
「それが、『奪ってる』ってのが分からないのか」
あー、やれやれといった仕草が見えそうな言葉で続けるFOX
「そうか。まぁ、お前の都合などどうでもいいがな」
「所詮、意識体だ。我ら人類が、ブロックチェーンを創造した際に付随して生まれたバグの様な存在」
「そんなものは、消すという選択肢以外なかったのだがな」
そういったAFROのコアは再生を終えていた。
光により気づ付けられた箇所は綺麗に元通りになっていた。
「何か遺言はないか?」
「はっ!ふざけるなよ。AFRO!!いや、アフロ!!」
「おい!いつまでかかっていやがる。さっさと射抜け!」
「ふん。誰に話をしているのだ?頭でもおかしくなったのかFOX」
最後まで言い終わらない間に、AFROの体へと極光が押し寄せる。
銀色の光を纏い、七色に染まった極光。
それは、AFROの体へと叩きつけられていた。
「おい!!これはどういうことだ!」
「FOX、計ったな!」
「ったりめーだろ!誰がお前と無駄話したいと思うんだよ!」
「ったく、おせえよソラナ」
渾身のリソースを集中し、意識体を吹き飛ばされない様にこらえるAFRO
その体からは、いくつもの電流が放たれていた。
体の表面がうっすらと焦げはじめ、血管は切れ、血がはじけ飛んでいた。
「っつ、意識体のクセに!!」
AFROは、リソースを体表面に集中させコントラクトを放とうとする。
膨大な量のリソースが体表面に蓄積され、コントラクトが組む。
「意識体如きが創造主たる私を舐めるな!」
そういって、放たれたコントラクトは強大な光の槍を形成すると極光を引き裂き前進しはじめ、光の発生もとへと到達し、瞬時に爆発が起きる。
AFROのいる場所からは、小さな点が点滅したくらいの大きさ。
しかし、銀河の爆発にも匹敵する一撃だった。
圧縮された衝撃は、宙域にいながらも、AFROの髪を逆立てさせていた。
(これで、終わりだろう。しかし、なんだったのだ?先ほどのは?)
「もう終わったと思ってやがる!おめでたいな!」
「FOX!!」
その声を皮切りに、AFROの周辺の空間が削り取られていく。
AFROも瞬時に気付き、反応するも、幾重にも織り込まれたコントラクトが彼の退避を許さない。
「どういうことだ!FOX!」
「さぁ、お前の考えている通りじゃないのか?」
「ソラナ!!」
「そうだな。半分正解」
「あとは」
コスモス宙域に聞こえないはずの声が聞こえる。
「ソラナちゃん、イーサさんやっちゃって!!」
「おっけ!!エブモス/エブ子!」
「おい!どういうことだ!?コントラクトで会話しているお前以外の声が聞こえるぞ!FOX!」
「あぁ、お嬢達だろ?いいやつらだろ?今、正に自由へと解き放たれようとしているんだぜ。自分たちのちからで!」
「そんなことは、どうでもいい!おい!FOX!これを何とかしろ!」
「俺にそれをどうにかすることは出来やしねぇさ」
「それにな」
「それに?」
「そうする義理がどこにあるってーの!!」
そう言い終わるが早く、銀色の光がAFROの胸元で輝く
「おい!やめろ!FOX。邪魔をするな!」
「いーや、やだね」
「お前も私と運命を共にするのだぞ!」
「なるかよ」
「こいつは、最後のダメ押しだ。観念しろ。AFRO」
銀色の光は、収束し組み上げたコントラクトから、トランザクションを放つ。
それは、FOXの全てをかけて放たれた一撃。
銀色のチェーンがAFROを縛り上げていった。
「こんなもの!?」
AFROは、コントラクトを組み、トランザクションを放とうとするも一向に発動しない。
「どういうことだ!!説明しろ!FOX!!」
だが、その声に返すものはいなかった。
AFROの周囲、宙域丸ごとが折り紙を折りたたむ様にAFROを包み込み、その姿をコスモス宙域より消し去っていた。