ACFA_NEVER FALLEN LIONHEART:EP8-1
EP8-1:オーメルとローゼンタールの決裂
ローゼンタールがオーメルと明確に決別するという事実は、地上の荒廃した空気をさらに張り詰めたものへ変えていた。かつては企業連合(リーグ)の一角として同じ方向を向いていたはずの両者が、いまや対立の構図に陥りつつある。イグナーツ・ファーレンハイトによる「ネクスト不要論」と「アームズ・フォートの完全管理戦争」が一気に現実味を帯びてきたことで、ローゼンタールの貴族たちが危機感を募らせ始めたのだ。
その中心にいるのは、ローゼンタールの当主代理と言っても差し支えない存在であり、かつてはオーメルで実質的な“つがい”として結ばれたカトリーヌ・ローゼンタール。彼女は家名の再興と企業内の権力維持を狙いながらも、“人間の意志を捨て去る戦争”を良しとしない立場を鮮明にしていた。
そして、その後ろ盾となるのが、かつて「孤高のリンクス」と呼ばれたレオン・ヴァイスナーや、自律進化AIのオフェリア、さらには企業の内部や地上のレジスタンス組織と水面下でつながりを持つエリカ・ヴァイスナーだ。
彼らが一堂に会す形で、ローゼンタールの前線拠点の一室に集められた。オーメルから届いた“最後通告”とも言うべき文書を前に、ローゼンタールが正式に「独立宣言」を視野に入れる瞬間が訪れようとしていたのである。
拠点の広いブリーフィングルームには、ローゼンタールの幹部や騎士的な役職を帯びた兵士たちが整然と席に着いている。円卓の中央には立体の地図が投影され、そこにはオーメルの拠点やドラゴンベインの展開位置が点滅していた。
カトリーヌ・ローゼンタールが椅子から立ち上がり、その場にいる全員の視線を受けながら淡々と口を開く。
「……今回、オーメルが“ネクスト不要論”を掲げるイグナーツ・ファーレンハイトを中心に、大規模な兵力を地上へ送り込みました。これまでリーグを形作っていた企業同士のバランスが崩れ、わたしたちローゼンタールにも“全面協力”の要請――いえ、強制が押し付けられています。ですが、それに従えば、“完全管理戦争”の片棒を担ぐことになる」
そう言いながら、彼女は手元の端末を操作し、複数の映像資料を示した。そこにはオーメルの主力アームズ・フォートの行進や、アポカリプス・ナイトが駆け抜ける戦場の記録などが映され、観る者に圧倒的な威圧感を伝えてくる。
幹部の一人が重い口調で発言する。
「オーメルとは、長らく利害を共有してきたはず。だが、イグナーツのやり方はあまりにも強引すぎる。彼は企業内部の合議も無視し、AIに絶対的な権限を与えて個人の意思を排除しようとしているのでは?」
「ええ、わたしもそう見ているわ」
カトリーヌは低く頷く。「しかも、この状況は一企業の問題にとどまらない。いずれラインアークや地上の諸勢力を制圧して、人々の生活をも管理しようとするでしょう。……わたしたちローゼンタールは、これを『革命の機会』と捉えている。オーメルから決別し、真に“貴族の義務”を果たす未来へ歩みたいの」
会場には微かなざわめきが生まれる。ローゼンタールの高位貴族たちは、もともと家名や血統を重んじる一族である。かつてはリーグの頂点であったこともあり、独立と聞けば誇りを取り戻せるという期待もある。
しかし同時に、「オーメルを敵に回すのか?」という恐れや、「本当に勝ち目があるのか?」という疑問も拭えない。
「カトリーヌ様、もし決裂すれば、わたしたちはオーメルの巨大戦力を一挙に敵に回すことになります。いくらローゼンタールの意地があっても、イグナーツのアポカリプス・ナイトやドラゴンベインの数には対処しきれないのでは……」
「そこは“新たな手段”を用意するつもりよ。ラインアークとの連携、そしてわたしたちの試作ネクスト“リュミエール”の完成。さらに、ここにいるレオン・ヴァイスナーとオフェリア、エリカが加わってくれれば……状況は一変するはず」
カトリーヌの視線が自然に、円卓の端に座るレオンとオフェリアへ注がれた。会場の注目が二人に集中する。以前なら考えられない光景だ――企業の貴族たちが、外部の一介のリンクスとAIに視線を投げるなど。
「……俺がここにいるのは、イグナーツを止めるためだ。オーメルの干渉を跳ね返したいと思っているのは本音さ。企業の論理にはうんざりしているし、俺が捨ててきた“家族”を守りたいってのもある」
レオンが肩をすくめ、複雑そうに口を開く。かつてなら企業の会議で偉そうに発言するような立場でもなかったが、今はローゼンタール当主が彼を頼りにしている、奇妙な逆転現象だった。
幹部の一人が素直に疑問を述べる。「レオン殿、その思いだけで勝算はあるのでしょうか。あなたはネクスト乗りとして天賦の才をお持ちだと聞いていますが、イグナーツの大軍勢を倒せる保証はないのでは?」
「保証なんてない。ただ、俺やオフェリア、エリカが力を合わせれば勝機はあると思ってる。ラインアークも協力してくれてるし、ローゼンタールが総力を挙げるなら、イグナーツ一派を抑えることはできるかもしれない」
レオンはそう言いながら、自分を鼓舞するように言葉を選んだ。実際、以前クレイドルでアポカリプス・ナイトと死闘を演じたときに痛感したが、あれほどの強敵を相手にするなら万全の準備が欠かせない。それでも逃げないと腹をくくった以上、ここで弱気は見せられない。
オフェリアが静かに補足する。
「イグナーツは“完全管理されたAI戦争”を志向している。企業の意思ですら霞むほどにAIを重視する路線です。わたしたちとしては、人間の意志を中心に据えた戦いを望むし、それがローゼンタールの理念とも合致していると考えています。戦いの形は変えられます」
「人間の意志を中心に……確かに、それがネクストの本来の姿でもある。イグナーツがAI制御を徹底するなら、その隙を突く形で打倒は可能かもしれないわね」
カトリーヌは賛同するように頷き、部下たちに目配せをした。「わたしたちはローゼンタールの独立宣言を近日中に発する予定よ。そしてオーメルとの決裂を公にする。オーメルがどう動こうが、従わないという意思表示だわ。……あなたたちに協力してもらい、ラインアークや他勢力と手を結ぶ流れを加速させたいの」
そこに落ち着くまでのプロセスは、カトリーヌと幹部たちの綿密な裏作業があったらしい。正式に文書を交わし、企業連合の管理から離脱を宣言するのは容易ではないが、イグナーツの横暴に追随するよりは己の誇りを貫くというのがローゼンタールの結論だった。
会議室には、兵士や騎士たちの動揺や興奮が静かに伝わる。“決裂”すれば自分たちも戦火の最前線に立つ運命になる。それでも、カトリーヌの言葉には強い意志があるし、貴族としての決断だと認識すれば彼らも背を向けるわけにはいかない。
「これほど大きな決断が……すべてはイグナーツの暴走が引き金、ですか」
会議に参加するある老獪な騎士が呟く。カトリーヌは厳しい表情を見せ、「イグナーツが火をつけたのは事実。ただ、わたしたちローゼンタールも、もともとオーメルとの関係には限界を感じていたのよ。“貴族企業”の立場などとっくに形骸化しかけていたから」と答えた。
会議が終わって幹部たちが散会すると、レオンは部屋の片隅に残る形でオフェリアと顔を合わせる。テーブルには大量の資料が積まれており、イグナーツをはじめとするオーメル部隊の展開予想や、アポカリプス・ナイトの特性、ドラゴンベインの配備数などが書かれたデータが散乱している。
「……とうとう決裂するんだな、ローゼンタールは。カトリーヌも腹を括ったようだが、オーメルが黙ってるはずはない」
レオンが苦々しげに呟くと、オフェリアは小さく頷く。「ええ。これでローゼンタールは正式に“敵”になる。オーメルと正面切って争うことになるわ。間違いなくイグナーツの矛先もわたしたちに向くでしょう」
「ネクスト“リュミエール”は、まだ完成にはもう少し時間が要る。ラインアークとの連携でドラゴンベインの動きを制限し、俺が間に合うように調整して……どうにかアポカリプス・ナイトを止めるんだ」
レオンの声には、いつになく力がある。いつまでも受け身でいるわけにはいかない。彼は“孤高のリンクス”としての技量だけでなく、家族や仲間を守りたいという強い思いを抱いているからこそ、この混沌を突破できるかもしれないと自分に言い聞かせていた。
「わたしも前線に立つわ。人型AIとして、もしドラゴンベインとの白兵戦が発生しても、わたしなら高速機動で撹乱できる」
「危ないぞ。でも……頼む。お前がいれば俺も心強いから」
二人は互いを励まし合うように頷き合い、テーブルに散らばる資料を手際よくまとめる。ちょうどそこへ、カトリーヌが部下を伴って入ってきた。彼女は凛とした表情で手を振り、彼らを呼び寄せる。
「レオン、オフェリア。すぐに準備に移りましょう。わたしはローゼンタールの貴族会議をまとめ上げ、正式に“決裂宣言”を出す段取りを固める。あなたたちには……できるだけ早くイグナーツの動向を探り、ラインアークとも作戦の細部を詰めてほしい」
「分かった。カトリーヌ、お前も気をつけろよ。オーメルの中には、お前を排除しようとする連中が動いてるかもしれない」
そう警告するレオンに、カトリーヌは短く微笑む。「大丈夫。私もそんなに甘くないわ。……ありがとう、あなたが心配してくれるなんて、ちょっと嬉しい」
「……別に、余計なお世話かもしれないが」
レオンは照れ隠しのように肩をすくめるが、カトリーヌは満足げに微笑んで兵士たちに指示を出す。多くのローゼンタールの幹部や騎士が彼女を取り囲み、決断を後押しするため動き出した。
その姿を見つめて、オフェリアが小声でレオンへ話す。「やはりカトリーヌさんは強い意志を持ってるわね。企業に生きながらも、人間らしさを捨てないで独立を選ぼうとしてる」
「ああ、俺もあいつのこういう面は嫌いじゃない。……昔は、そこに息苦しさを感じたが、いまは頼もしささえある。まったく、何がどう転ぶか分からないもんだ」
レオンは自嘲するように笑い、しかし決然とした瞳でカトリーヌの後ろ姿を見つめる。これで本当にオーメルと決裂する――かつて彼が飛び出した企業と、二度と交わることはない。その事実に寂しさや怖れはあるが、それよりも家族としての絆を取り戻し、世界を変えるチャンスが生まれる期待のほうが大きい。
オフェリアも同じ思いを抱えている。AIとしての思考力と覚醒が、いまは「人間の意思を中心に据えたい」という願いに繋がっている。この先、自分がさらに進化すれば、イグナーツのヴァルキュリアシステムと対等になれるかもしれないが、それによって失うものもあるかもしれない。
しかし、目をそらすわけにはいかない。レオンとともに戦い抜き、カトリーヌやエリカとともに“企業の理不尽”を変革したい。その確固たる意思が、彼女を前へ駆り立てる。
翌日、ローゼンタールの前線拠点にて臨時の“貴族会議”が開かれた。ホログラム通信を介して本社や各地の有力者を集め、カトリーヌが明確に宣言する。
「――本日をもって、わたしたちローゼンタールはオーメルとの対等関係を破棄します。イグナーツの完全管理戦争には協力せず、独自の道を歩むことをここに宣言するわ」
それは、事実上の決裂を世に示す一手だった。オーメルのエリートたちがこの通信を傍受すれば、即座に反発が起きるだろう。イグナーツが黙って見過ごすわけがない。
だがローゼンタールの騎士や兵士たちは大きく声を上げ、一部の貴族たちも拍手に似た仕草で同意を示す。長く続いたオーメルの影響下から逃れ、自らの誇りを取り戻す瞬間。それは歴史的な転換点だった。
会場の片隅でレオンとオフェリアもその宣言を見守る。カトリーヌが堂々と意思を示す姿に、レオンはかすかな微笑をこぼす。
「やるじゃないか。あいつ……本気なんだな。きっと、ここから本当の地獄が始まるぞ」
「そうね。イグナーツが黙ってるはずがない。わたしたちの戦いは避けられないわ。でも――」
オフェリアはレオンの顔を見つめ、「あなたと一緒に、未来を掴みたい。逃げないわよ」と囁く。
レオンは頷き、拳を軽く握る。「同感だ。今度は俺が背を向けるわけにはいかない。家族を取り戻すためにも、イグナーツに負けるわけにはいかないんだ。お前がいれば、きっと大丈夫だよ」
そう交わした言葉の裏には、“ローゼンタールの決裂”がもたらす嵐への覚悟がある。オーメルとローゼンタールが完全に敵対すれば、もう後戻りはできない。地上の多くの地域を巻き込み、大きな戦火が起こるのは必至だ。そこにラインアークやレジスタンス勢力も合流し、イグナーツの軍団と正面からぶつかる構図が見えてくる。
だが、その先にしか“変革”は存在しない。カトリーヌやエリカ、そしてレオンとオフェリアが信じる“人間の意志”を捨てない未来を築くために――すべてを賭けてこの決断を下したのだ。
夜が深まると、拠点の警戒レベルが引き上げられた。オーメルとの絶縁が公になれば、いつ襲撃があってもおかしくない。兵士たちは防衛体制を固め、アームズ・フォートやネクストの整備を慌ただしく進める。ラインアークへの連絡も増え、共同作戦に備えるムードが加速していた。
そんな騒然とした中でも、レオンは工廠の片隅でネクスト用のパーツを覗き込み、頭の中で『リュミエール』の完成図をイメージしている。試作コアユニット、フレーム強度、AMSとの適合率……膨大な要素を組み上げる作業は長期戦になるが、時間がない以上、やるしかない。
「レオン」
声をかけてきたのはオフェリアだ。「メカニックたちがあなたの意見を求めてるわ。強化フレームの素材をどれにするか迷っているみたい。カーボン系か、コジマ粒子対応の合金か……」
「ああ、すぐ行く。……悪いな、疲れてきたけど、ここで踏ん張らないと。イグナーツと対峙する日も近いだろう」
レオンはそう言いつつも、決意の炎を燃やしている目をしていた。昔からメカに触れるときだけは集中力が増すのを、自分でも感じているのだ。孤高だった頃には、これを楽しいと思えなかった。いまは“守るものがある”からこそ、作業に熱がこもる。
「大丈夫、わたしも一緒にサポートするわ。制御AIの連携や、あなたのAMS適性が最大限に引き出せるようにしたい。急いで作っても精度が落ちたら意味がないものね」
「ああ、よろしく頼む。お前がいれば俺も心折れないよ」
二人は火花散る工廠の中へ戻っていく。周囲では技術者や騎士が必死になって装甲パーツを運搬し、ネクスト骨格を微調整している様子が見える。誰もが分かっている。この“リュミエール”が完成すれば、ローゼンタールの看板とレオンの意志を示す象徴となる。一方で失敗すれば、イグナーツの軍門に下るより先に、全滅の危機を迎えるかもしれない。
外の夜空を見上げれば、黒い雲が月を隠していた。闇は深い。だが、この拠点には今しっかりとした熱がある。決裂への一歩は踏み出された。オーメルを捨て、貴族企業としての誇りを抱えながら、人間の意志を賭けて新たな戦いへ進むと宣言したのだ。
その熱は、レオンとオフェリア、そしてローゼンタールの全員を突き動かす原動力となるはずだった。エリカがいつ合流するかは分からないが、いずれ彼女も決断を下し、カトリーヌとの合意のもとで父と行動を共にすることになるかもしれない。
いまはただ、迫りくるイグナーツの脅威に備えるため、力を結集する――この夜から朝にかけて、拠点には休む間もなく騒ぎが続く。カトリーヌも幹部たちも、切迫した表情で会議を繰り返し、兵器と人員を再配置し、ついに“独立の狼煙”を上げたローゼンタールとして動き出していた。
やがて夜明けが近づくころ、工廠の片隅でレオンとオフェリアは束の間の休憩を取る。疲れ果てた体を椅子に預け、汗を拭うレオンに対して、オフェリアは水を差し出した。AIとして体が疲れるわけではないが、彼を支え続けたことで精神的な重さを感じている。
「決裂した以上、オーメルはすぐに動くかもしれない。イグナーツがドラゴンベインかアポカリプス・ナイトを送り込むリスクもあるわ」
「分かってる。今のローゼンタールにそれを受け止める力があるかどうか……信じるしかない。リュミエールが完成するまで俺も逃げずに準備を続けるさ。お前も大変だろうけど頼む」
「もちろん。イグナーツのヴァルキュリアシステムに対抗するため、わたしの覚醒もさらに進めなきゃならないし……。覚悟はあるわ」
“覚醒”――それはオフェリアが自律進化する過程で、人間を超える力を得る可能性を秘めた言葉だ。あまりに深くAIを変化させれば、自分が人間らしく振る舞えるか分からなくなる不安もある。だが、いまはそれをためらう余裕がないのが現実だった。
レオンはオフェリアの手を握り、ほんの少し笑う。「家族でいよう、俺たちは。一緒にいれば何とかやっていける」
「ええ、わたしもそう思う」
二人が想いを交わす姿は、かつての孤独なレオンからは想像もつかない。家族の再会を望み、企業の理不尽を変えるために覚悟を固め、ローゼンタールという後ろ盾を得て遂にオーメルと決裂した。この一連の流れが“正しいか”は分からない。それでも、悲劇を回避するためにできることをしなくてはならないと彼らは信じている。
外で兵士が大きな掛け声を上げ、どこかでタービンが回転する音が響く。遠くの空にミサイルランチャーのシルエットが浮かび、連携確認の試射が行われているのかもしれない。すべては「次の激突」へ備える動きだ。カトリーヌと貴族たちが放った決断により、ローゼンタールの進む道は決まった。
夜明けの光がふと射し込み、工廠の奥を白く照らす。レオンとオフェリアは立ち上がり、再び作業へ向かう。その背中には確かな決意が宿っていた。オーメルとの完全な決裂――もはや後戻りはできない。イグナーツと正面衝突する運命に挑む、揺るぎない意志がそこにある。
ローゼンタールが提案する“人間の意思”を軸にした戦いが、オーメルの“AIによる完全管理”の野望を阻止できるのか。その命運を賭けて、レオンたちは新たな目標へ向けて突き進む。これがただの理想論で終わるのか、それとも企業の在り方を激変させる革命となるか――勝敗を分かつのは、ほんの小さな違いかもしれない。
しかし彼らは信じている。家族や仲間、そして自分を慕ってくれる人々の思いを裏切らないために、もう逃げはしないと。決裂した企業の行く末を大きく左右するこの選択に、彼らのすべてを賭ける覚悟があるのだ。夜と朝が入り混じる薄明の時間に、工廠は激しい熱気を帯びて動き続けていた。