花が枯れたら、泣き虫
言ってみたかった。どんな顔をするのか、試してみたかった。
きっかけは、とあるイベント。偶然いた君を見つけた。それから缶ビールを開けることになって、いい感じに酒に溺れて、そのまま。
すぐに何度も会うようになった。名前のない関係は絆を深めた。数回会っただけでまるで長い間一緒にいたような安心感と居心地。柔らかで綺麗な声、男らしい体つきに無駄に相性のいい体。体だけなんて思えないくらい優しく扱ってくれて、何一つ申し分はなし。敢えて言うなら関係に名はない。
可愛い、かっこいい、エロい、お互いについてかけた言葉はそのくらいだ。
私は言ってみたかった。好きと言ったらどんな顔をするのか。好きと言ったら好きと返してくれるのか。
いつもと同じように致していた時、
「好き」
面白半分に言葉を発した。
それを聞いた彼はすぐに、目を細めて満面の笑みを見せた。
それだけ。だから何度も言ってみる、好き、好き。
「好き?」
そう聞きながら彼は見た事もない、儚く綺麗な笑顔をつくる。
…ふーん。
どんな言葉で返されるよりも最高な返し…かな。脳裏に焼きついた"この事"を思い出しながら、そう思った。そしてまた綺麗な笑顔を見たいと、会う日を楽しみにしたりして。