「救急車体験記」#5
2018.6.26
もはや救急車は登場しないが、連作によりタイトル続行。
朝目覚めると、夜中にいろいろと格闘したせいもあってか、多少だるい。
もう少し寝たいなぁ。でも仕事だしなぁ。
もぞもぞとベッドを出て歯磨きに行くと、部屋の外から物音が聞こえてきた。
ダダ…ンダン。バタン。ダダ…ンダン。
ワイワイガヤガヤ。
人の話し声に混ざって何度もドアの音がする。
ドアの覗き窓から廊下を見てみると、ちょうど向かいの部屋に女性が入っていくのが見えた。
ダダ…ンダン。
後ろ手にドアを閉めないので、ドアがバウンドして閉まっているらしい。だからダンダン言うのか。
さらに周辺の部屋はみんな同一グループの海外観光客らしく、一斉に出入りしながらワイワイガヤガヤと会話をしている。
ガン。バタン。ダン…ダンダン。
ワイワイガヤガヤバタン。
朝7時前。
二度寝しても結局寝られていなかったな、と納得。
出社すると、左手に巻かれた包帯を見てみんなびっくりして心配してくれた。
しかし、説明が悲しい。
「ガラスで手を切った」と言うのと「お酒の瓶を割った」と言うのとでは、相手の心配具合に変化が見られる。
昼休み前、隣の部署の上司が「いいものあげるわ」とやってきた。
「絶対いらないと思います」と言ったものの、上司は指に手書きのシールを貼って去って行った。
<了>