仕事のキホン #毎日ネタ出し83日目
【タイトル】
仕事のキホン
【あらすじ】
「テンパる」は、焦る、いっぱいいっぱいになる、慌てて動揺する、といった意味である。
もともと要領が悪い私は、よくテンパってしまい仕事でもミスが多い。ミスが続けば周りの目も厳しくなり、更にテンパる。
この悪循環をひたすら繰り返してきた。
そしてまたやらかしてしまう。
「おい! ●●会社に商品発注したの誰だ! 先方から数が違うってクレームがきてるぞ!」
上司の怒った声が社内に響き渡る。
(●●会社…。。わ、わたしだ! ど、どどうしよう……)
社名を聞いて、すぐ私のミスだと気づいた。しかし、あんなに怒っている上司を前にしては、すぐに名乗り出ることが出来ない。でも、バレるのも時間の問題だ。すぐ履歴を調べれば誰が発注したのかすぐにわかってしまう。
私は意を決して、手を挙げた。
「す、すいません……。私です……」
私が手を挙げると、社内は静まり返った。そして上司は呆れた顔で、
「おい、いま手が空いてる奴いないか? すぐ不足分の商品発注しろ。俺は先方に謝罪の電話いれるから。……お前はもうこの仕事から降りろ」
と言い残して去っていった。余計な仕事を振られた他の社員は舌打ちして私のミスをカバーしてくれている。他の人も私のことは厄介者として扱っている。
テンパった私は、何か役に立てないかと思い、片付いていないファイルの整理や不用品の処理などを行った。途中、処分していいかわからない物もあったが、今他の人に声をかけたら迷惑だと思い、とりあえず処分してしまう。
この判断がミスを招くのだ。しばらくして、誰かが社内で声をあげた。
「すいません、誰かここにあったファイル知らないですか?」
どうやら何かのファイルを探しているらしい。
「ああ、多分あっちの棚にあると思うよ。さっきみたから」
と、他の社員が私が整理していた棚を指差した。私は直感でまずいと思った。さっき処分していいかどうかわからないファイルだったらどうしよう。もう処分をしてしまったのでファイルはない。私はドキドキしながらうつむいた。
「うーん。こっちにもないみたい。他探してみますよ」
何とかこの場はやりすごすことができた。ただ、これもバレるのは時間の問題。私はいてもたってもいられなくなり、トイレへと駆け込んだ。
(何でこんなミスばっかりするんだ……。もうダメだ、仕事辞めよう)
そんなことを考え、しばらくトイレでうなだれる。そして、ゆっくりとトイレから出ると、ある一人の男性が待ち構えていた。ファイルの件がもうバレてしまったのか。私はそう思ったが、男性は笑顔だった。
「今日から君の教育担当になった橋上だ。よろしくね」
どうやら、私のミスの多さを見かねた上司が、私に教育担当をつけたらしい。新卒でもないのに教育担当がつくなんて、恥ずかしいことこの上ない。
しかし、橋上さんは笑顔で、
「大丈夫。俺がついたからには、君を誰よりも仕事が出来る人に変えてみせるよ」
と言い切った。私は不思議な気持ちになった。普通ならそんなことはただの慰めくらいにしか聞こえない。でも、橋上さんの言葉に、なぜだか自信が湧いてきたのだ。
もうミスを繰り返したくない。変わりたい。
そう思った私は、
「よろしくお願いいたします!」
と大きく頭をを下げた。そして、橋上さんの教育が始まったのだった。
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