不定期連載小説『YOU&I』1話
主人公ではない脇役だとしても、人生は続いていく。スポットライトが当たらないその人生には、果たしてどんな意味があるのだろうかーー。
國立 春樹は都内の大学に通う大学生1年生。特に夢や何やらなんてのはないが、「とりあえず大学に行こう」と思い進学する。アニメやテレビドラマなんかで見る“憧れの大学生活”なんてのは國立にはなかった。高校生時代から人付き合いは少なく、むしろ人と積極的に関わる気はさらさらない。
ただ毎日淡々と授業に出て家に帰るという生活。しかし、國立自身は満足していた。
大学では高校生のときのようなクラス制ではなく授業も自分で選べる。そして授業が終わればその後は自由。変に人と関わることもなく、帰りに一人で本屋に寄り、買った本をカフェで読む。そんな時間が何よりも幸せに感じていた。
しかし、そんな平穏な日々は続かない。一人の人物との出会いにより国立の“脇役”としての生活が始まるのであった。
この日もいつも通り國立は一人で授業を受けていた。すると、
「これから課題を出す。そしてこれはグループ単位で行ってもらうから、近くの人とかで5、6人くらいで適当にグループを作ってくれ」
と教授が全体に向けて言ったのだ。國立は耳を疑う。
(グ、グループ!? 大学でもそんなことがあるのか……)
國立には友達がいない。周りがどんどんとグループを作っていく中、國立だけが取り残されていく。どうすることも出来ず、ただただ時間だけが経っていった。
「そろそろ全員グループ組めたか? 課題を発表するぞ」
教授はそういうと課題を黒板へと書き始めた。気づけばグループを組めていないのは國立一人だけ。周りもそれに気づいておりチラチラとこちらを見ている。
(……もう無理だな。この授業はあきらめるか)
國立は少しため息をつき、この授業の単位を諦める。荷物をまとめ、教室を出ようと席を立ったとき、
「待って」
と誰かが國立のカバンを掴んだ。國立は驚き振り向く。
「良かったら、うちらと一緒に課題やらない?」
そう小声で話しかけてきたのは、中野亜希だった。中野との面識が全くなかった國立は驚きのあまり立ち尽くす。
(い、今何て言った? 一緒に課題やろう? ……どういうこと?)
頭をフル回転させても何も答えは出てこない。目だけが泳いでいた。
「おーい、そこ! 何やってるんだ? 座りなさい」
黒板に課題を書き終えた教授が國立のことに気づき注意をする。
「ね、ほら早くこっち来て」
それに合わせて中野は、少し強引に國立を自分のグループへと引き込んだ。國立は渋々中野のグループの席に座る。そこは中野を入れて5人のグループ。他のメンバーも中野の行動に驚いている様子だったが、國立を笑顔で歓迎した。しかし、國立は居心地が悪い。
それからしばらく課題の説明が続く。
「なら、これからこのテーマについてグループ内でのディスカッションを行いなさい。それをレポートにまとめて来週の授業で提出してもらうから、しっかりと取り組むように」
教授はそう言いうと、いったん教室から出て行った。残された学生たちは、グループ内で課題に取り組み始める。中野のグループも同様に話し合いを始めた。
▶To be continued
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