遅咲きの桜 #毎日ネタ出し82日目

【タイトル】

遅咲きの桜

【あらすじ】

大学って薄っぺらいところだと思う。それは人間関係もそう。だから俺は決して他人に「素」を見せない。それは「心」を開いていないからだ。

どれだけ仲良くなろうが、私は他人を信用できない。信用できないというよりも、信用したくない。

たまに懐にすっと入ってこようとする奴がいるが、ああいうタイプが一番苦手だ。そういう奴に限って、

「●●って素直じゃないよね」

とか

「●●って本当はこういう性格だよ」

とか、よくも知らないでペラペラと人前で言う。お前は何を知ってるんだとツッコミを入れたくなるが、愛想笑いをしてスルー。

別にトラウマがあるわけでもない。過去にいじめられたりとか、裏切られたとか、そんな深い動機があるわけでもない。

根本的に人が嫌いなのかもしれない。

一つ悔しいのが、そんなこと言いながらも人の群れの中にいることだ。仲間外れにされているなんて思われたくないし、友達がいないとも思われたくない。

こんなプライド早く捨てたいと思いつつ、今日も人の群れで愛想笑いを浮かべる。

しかし、幸か不幸かそんな日々とも急なお別れを迎える。

ある日、友人に誘われた飲み会に参加するのが面倒になったので、「体調が悪くなった」と嘘をついてドタキャンをした。それで一人でドライブしていたところを、たまたま別の友人に目撃され一気に信頼を失くしたのだ。

翌日から大学へ行っても、友人たちは話してくれなくなった。ただ、最初こそ気まずくなったが、慣れてくれば独り身も悪くない。誰にも気を使わなくてもいいし、愛想笑いをする必要もない。

なので、以前より自然な笑顔が増えた気がする。

すっかり存在感が薄くなった俺に、一人だけ声をかけてくれる奴がいた。名前は黒崎。そいつも嫌われ者だ。いつも焦っていてテンポが悪い。

だから周りからバカにされることが多く、一人でいることが多い奴だった。俺は内心、

(こいつと同類か……。俺も落ちたもんだな)

と思っていた。しかし、黒崎と関わることが増えていくと、なぜか黒崎には色々なことが放せてしまう自分がいた。今まで一切素を見せなかったのに、なぜか黒崎には素の笑顔を見せてしまう。

そんな俺たちを見た周りは更にバカにしてくる。さらには、

「黒崎なんかと一緒にいないほうがいいぞ。今ならまだ謝れば前のグループに戻れる」

なんてことを言ってくる奴さえも現れた。だが、丁重にお断りする。俺は初めて心から人と過ごして楽しいと思えたから。

これは俺と黒崎のぎこちない友情のお話しだ。


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takuma@note作家
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