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天下統一 #毎日ネタ出し24日目
【タイトル】
天下統一
【あらすじ】
「今回は誠に残念ながら不合格とさせていただきます」
またこのメール。
もう今月だけで何度目だ。何度オーディションを受けても一向に受かる気配がない。
私は高校を卒業してから役者を目指して上京した。たまたま地元で映画のエキストラ募集があり、そこに参加してから役者を目指すことになる。
上京したての頃は、エキストラや少しセリフのある役などをもらえており、何とか役者としての活動をしていた。しかし、それから数年経っても仕事の量は変わらない。いつまで絶ってもエキストラばかり。たまに舞台に出演したりもするが、チケットノルマや稽古がきつくて最近は全くやらなくなった。
バイト先から帰るとき、新宿のアルタビジョンに大きく映る芸能人たちを見て、
「……私もいつかあんな風になれるのかな」
とつぶやいた。上京してきたころのような自信や勢いはもう完全になくなってしまっている自分に気づく。完全に自信を失くした私はうつむきながら新宿の街を駅へと向かって歩いていた。
すると、
「お姉さん、ちょっといいですか?」
と声をかけられる。振り返るとそこには何とも変わった格好の男性が立っていた。
「な、何ですか?」
新宿を歩いていれば、ナンパやキャッチに声をかけられるなんてことはよくあり、いつもは素通りしていたのだが、この変な格好の男を前にして、つい反応してしまった。
男は真剣な眼差しで
「俺と一緒に天下とらない?」
と言ってきた。
「……はあ?」
意味が分からなかった。頭がおかしい人に絡まれたんだと思い、
「あ、大丈夫です。間に合ってるんで」
と言い、この場から去ろうとすると、
「あのビジョンに映れるよ。それどころか、もっと大きなことも出来る」
と去り行く私に向かい、男は大きな声で話しかけた。
私はピタリと足をとめた。変な人だ、あんなのは嘘に決まっている。
頭の中ではそう思いながらも、男の言葉を無視することが出来ない自分に悔しさを感じた。そうして、私は男の元へと歩き出す。
そう、この一歩が私の運命を大きく変えるのだった。
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