普通の話 #毎日ネタ出し70日目
【タイトル】
普通の話
【あらすじ】
伝説のテレビ番組がある。それは、魂のぶつかり合いだった。番組といっても、その中のひとつの企画だ。とある男が好きなように話をするという単純なもの。しかし、その企画は驚異の視聴率を叩き出した。
果たして、この伝説の企画とは一体どういうものだったのか。
それはとある普通の男の話である。彼は特になんの取り柄もないサラリーマン。40歳を過ぎても家庭を持たず、未だに親と同居しているような冴えない男だった。
しかし、彼が唯一他人に誇れることがある。それは「人の目を気にしない」ことだ。だから、何歳になろう親と同居も出来るし、周りに何と言われようがお構いなし。
これはこの男にとっても誇らしいことだった。周りの奴らは、世間体なるものを気にし、やりたくもない仕事につき、持ちたくもない家庭を持ち、どんどんと自分の人生を削られていく。
その点俺はどうだ。確かに安月給かもしれんが、誰の目も気にならん。生活も普通に送れるし、何一つ不自由がない。人間とは本来こうあるべきだ。
男はたまに独り言としてこのようなことを呟いていた。
そんな彼が、ある時街を歩いていると声をかけられた。どうやらテレビ番組の撮影らしい。街頭インタビューとして「●●の不倫について」なんてしょうもないことを聞かれたのだ。
男はハッキリと言ってやった。
「不倫が出来るならしてみたい。だが俺は結婚もしてないから不倫なんてしようと思っても出来ない。不倫を出来る奴が羨ましいよ」
こう答えたとき、インタビューをしているスタッフの顔は引きつっていた。どうせ俺のインタビューなんかカットされるんだ。男はそう思ったが、撮影スタッフの顔は引きつったまま。後々知ったのだが、どうやら生放送での街頭インタビューだったらしい。
そんなことを生放送でインタビューするなと思った。発言は最低なことだと自覚している。しかし、だからといって何も気にすることはない。男はそのまま何も気にせず、普通に暮らした。
しかし、あの発言がどうやらネットでウケたらしい。
男の知らないところで、あのインタビュー映像はネットに出回り、いつしか彼はプチ有名人となっていた。テレビ番組も、そのことを嗅ぎつけ、彼への出演オファーを出すようにになった。こんな男にテレビ番組の出演をお願いするなど、世も末だと彼も感じただろう。
男は、ある一定の条件をテレビ番組につきつける。テレビに出演してもいい。だが、15分でいいから好きなように話しをさせろ。使えないと思ったら没にしてくれていいから。
テレビ番組ってのはつくづく変なところだ。まさか、こんな条件を飲んでくるとは男も想定していなかった。
しかし、これが伝説の番組になるとは、このときは誰一人として知る者はいなかった。
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