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届かぬ電波 #毎日ネタ出し55日目
【タイトル】
届かぬ電波
【あらすじ】
「……ます……? きこ……ま……か?」
いくら呼びかけても自分の声は届かない。まるで自分だけ違う世界に迷い込んでしまったように、誰も私の呼びかけに答えてくれない。
きっかけは3日前。散歩中、ふと目に入った路地裏の神社。
「こんなところに神社なんてあったっけ?」
私は何かに引き寄せられるように、ふらっとその神社へと立ち寄った。そして鳥居をくぐった瞬間、耳に水が入ったような変な感覚に襲われたのだ。私は方向感覚を失い、その場に倒れ込んでしまう。
そしてそのまま気を失った。
目が覚めると、そこには見慣れた風景が広がっていた。そう、ここは私の部屋だ。
「なんだ、何か変な夢でも見たか?」
私は不思議に思いながらも、いつも通り大学へと向かう準備を進める。まだ身体には耳に水が残っているような違和感は残っていた。
そして、その違和感は確かなものへと変わる。
大学へ到着するも、誰とも会話が出来ないのだ。友人の姿を見つけ声をかけるも、まるで水の中にいるように声が届かない。そして、誰も自分の存在に気づいてくれないのだ。
何かがおかしい。
私はふらふらと大学内を彷徨いながら考え込んだ。そして、原因はあの神社にあるのではと思いつく。急いで神社へと向かうも、不思議なことにどこに神社があったか思い出せないのだ。
ただ闇雲に街を走り回る。そして、その間も誰一人として私の存在に気づく人はいなかった。
「俺は死んでしまったのか?」
頭にそんな疑問が思い浮かぶ。死んでしまったとしたらこの全ての現象に説明がつく。私は一気に血の気が引いていくことを感じた。
そして、日は沈んでいく。誰にも気づかれず、ただただ街を彷徨う自分の姿が情けなく感じてきた。
「一体どうすりゃいいんだよ。このまま幽霊として街を彷徨い続ければいいのか?」
ふらふらと歩き続け、気づけば見知らぬ場所まで来てしまった。そこでふと周りを見渡すと、何やら不穏な空気が流れている。その先に進むと、そこには手足が縄で縛られ、血を流して倒れている人が横たわっていた。
幸いにもまだ死んでいない。
誰かに早く伝えなくちゃ。私は必死に叫んだ。しかし、誰にも声は届かない。早くしないとあの人の命が危ない。私は全ての力を絞り出し、
「誰か聞こえますか!」
と叫んだ。すると、一人の少女がこちらにやってきた。そして私の元へとやってきて、
「お兄さん、今叫んでた?」
と話しかけてきたのだ。ようやく私の声が誰かに届いた。そして、彼の女のおかけで、さっきの人は無事に警察に保護され一命をとりとめた。
胸をなでおろした瞬間、再び不穏な空気を背中に感じた。少し遠くかもしれないが、確かにさっき感じた空気だ。
私は少女に声をかける。
「ごめん、もう一回ついてきてくれないか? もしかしたら俺は人を救えるかもしれない」
「……うん、わかった」
もしかしたら、これは元の姿に戻るために必要なことかもしれない。何か分かるかもしれない。
そうして少女と私は走り出した。
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