フリーランスかけ出しの方にポイントを紹介!クリエイターが知っておきたい仕事受注のきほん #安心創作勉強会
noteを含めインターネットで発信するときに必要な知識、考え方をまなぶ、オンライン勉強会シリーズ「安心創作勉強会」。
著作権をテーマにお届けした第一弾に続き、第二弾として『クリエイターが知っておきたい 仕事受注のきほん』を開催しました。
フリーランスのイラストレーターとして活躍されているサタケシュンスケさんに、個人で仕事をするうえでのポイントを解説いただきます。
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登壇者
イラストレーター サタケシュンスケさん
兵庫県神戸市在住。広告制作会社勤務のグラフィックデザイナーを経て、
2007年にフリーランスのイラストレーターとして独立。2021年に法人化。株式会社ひととえ を設立、代表取締役就任。
主な仕事は広告、書籍等で使用するイラストレーションおよびキャラクターの制作、モチーフは人物や動物が中心。得意とするジャンルは子育てや教育、ファミリー向けのタッチ。
代表作に NHK おかあさんといっしょ「ガンバラッパ★ガンバル〜ン」やAGF マリーム パッケージ、ベネッセ こどもちゃれんじ「おしゃべりシュッポ」など。アマビエ疫病退散プロジェクト を通じて新型コロナウイルス感染症対策・医療従事者への寄付活動、イラストレーターユニットなりゆきサーカスの一員としても活動中。
note / Twitter
フリーランスの経験や失敗談をつづったnoteも人気です。
ポートフォリオのつくりかた
かけ出しでまだ実績が多くないとき、どういった見せ方をすればいいかは悩むポイントだと思います。そのときに大切なのは、「できること」と「やりたいこと」が伝わるようにすること。
これは私のポートフォリオです。プロフィールのあとは、まずオリジナル作品の紹介をしています。シリーズものでイラストが描けるという「できること」もアピールしています。
後半にこれまでのお仕事作品、実績をまとめる構成です。実績では、具体的に「自分のイラストをこんな風に使っていただけますよ」ということが伝わるようにしています。
私はかけ出しの頃は「できること」に比重を置いて、そこから実績を増やしながら、できることの幅を広げていくことが大事だと思っています。「できること」を介してつながったお仕事相手に「やりたいこと」をマメに伝えながら、少しずつやりたいことに比重を移していくようなことをしていました。
私の場合、今はポートフォリオはできることとやりたいことが半分半分。SNSではやりたいことしか載せていません。媒体によって見ている人や見る場面が違うので、自分なりに割合を調整するのもオススメです。
得意なジャンルと詳しいジャンルを明確にする
得意なジャンルというのは、例えばイラストレーターの場合だと「絵を描くこと」以外のジャンルです。これまで就いたことのある職業や、育児の経験、趣味や語れることなどを明確にして、お仕事相手に伝えておくと、その分野のお仕事を頼んでもらいやすくなります。
たとえば前職が看護師の方であれば、医療系のイラストを他の人よりも詳しくリアリティを持って描けそうですし、具体的なアイディアを提示してくれる可能性もありそうですよね。
また、必ずしも独創的でハイクオリティな作品ばかりをアピールするのも、仕事の幅を狭めてしまいます。私も当初は他との差別化を狙いすぎて、ポートフォリオが自分の作品集のようになってしまっていました。仕事相手には「こういう作風しか描けない」「イラストが主役の仕事しか頼めない」と思われてしまっていたようで......。なにかをわかりやすく伝えることがイラストの役割でもあるので、イラストが主役であれ脇役であれエキストラであれ、仕事の目的に合わせてこんなことができますよ、ということを幅広く見せるのがいいと思います。
かけ出しでまだ実績が少ないなら
作品数が少ないなら、その作品の制作の流れを深堀りしてポートフォリオで見せるのもオススメです。ラフはこういう状態で、こんな風に進めて行きますというのをまとめるなかで、自分のできることや特徴を伝えることができます。
また、やりたいことはモックアップ(完成形のイメージ)をつくって載せてもいいと思います。自分の作品が仕事や社会でどのように使われるイメージなのか、そういう使用感をこちらから提示するのも効果的です。
これは私の実体験ですが、お仕事相手に「実績はマメに見せてくれる方がうれしい」と言われたことがあります。力作を貯めてまとめて見せるより、新作をこまめに見せることで、こちらの成長や変化も分かってもらえますし、そこから「じゃあこんなお仕事を」というお話につながりやすいと感じています。
契約時にチェックするポイント
契約時にこれらの情報がそろっていて、仕事相手と合意ができていないと契約はできません。納品形態は、データでの納品なのか、印刷までやるのか、はたまたデザインまで期待されているのかなど、相手の前提や知識によってかなり変わってくるので、こちらからきちんと確認するのが大切です。
料金設定の方法
やってしまいがちなのは、単純に時給換算してしまうことです。そもそも、フリーランスが仕事相手に提供しているのは、時間ではなく成果物です。自分の成果物の料金を時給換算にしてしまうと、同じ納品物でも短納期であれば、時間がかかっていないから料金は半額でいいの?という考え方もできてしまいます。仕事相手と感覚を合わせるためにも、時給換算はオススメできません。
料金設定のうえで考慮するべきは
・使用媒体、展開規模、使用期間、著作権譲渡の有無 など
です。
例えば広告に使われるイラストの依頼であれば、その広告が全国展開なのか一部地域のみなのか、使用期間はいつまでで、その後は更新料をいただいて使用してもらうのか。
自分のイラストが広告として展開されている間は、競合他社からの同じような仕事を受けられないので、上記を明確にしておかないと結果的に自分の首を絞めることになりかねません。
業界によって本当に差があるので、わからない時は素直に仕事相手に予算を聞きましょう。または同業者に相談するのも手です。最近はブログやYouTubeで自分の成果物の相場感を開示している方もいるので、検索して参考にすることもできますね。
数をこなしながら自分のなかに基準をつくっていけるといいと思います。
受ける受けないの判断は?
代わりがきく仕事も受ける
「これは自分が受けなければいけない仕事か?代わりがきく仕事ではないか?」と考え、代わりがきくものであれば断るという方もいると思います。私の場合は逆で、代わりがきく仕事だからこそ、他の人との差も見せやすいと思っています。
その中で成果物のクオリティだけでなく、仕事の進め方ややりとりの感じもわかってもらえるので、総合的に評価してもらった結果次のもう少し大きな仕事につながっていくこともあります。
物量の多い仕事の経験を積んでおく
また、物量の多い依頼はキャリアの早い段階で経験しておくのもおすすめです。例えばイラストの仕事であれば、数百点のイラストの納品などですね。こういう仕事を経験することで、自分がどこまでできるのかという基準ができます。
受けない方がいい仕事
ではどんな仕事は受けない方がいいのか?まず、スキル的に追いついていない仕事は受けるべきではないですね。例えば私の場合、「イラストをアニメーションにしてほしい」という依頼は、技術的に実現できないので難しいです。それでも受けたい場合は、自分にないそのスキルを持った誰かと一緒に受けるなどの対応が必要になります。
断らないで済むように、自分にないスキルを持った人たちとのネットワークをつくっておくというのも手ですね。
自分の作品や作風を見ずに相談してくるクライアントからの依頼も受けないことをオススメします。「イラストレーターなんだからなんでも描けるだろう」と思われて、作風からかけ離れたものを期待されている場合、お互いの希望を叶えることはむずかしいですよね。
案件を滞りなく進めるために
お仕事を受注して制作に進んだら、なるべく早い段階で進捗を相手に見せることを大切にしています。できれば相手が驚くほどのスピード感で見せられるといいですね。初めての相手であればお互いに不安もありますし、自分の進め方をはやめに見せれば、相手に安心してもらうことにもつながります。その際、「たのしくてこんなに早く描いてしまいました!」ということも伝わると、仕事を頼んだ側にとってもうれしいですよね。
一人で締め切りをギリギリまで使って完成度を高めるよりも、はやめに見せて、そこから仕事相手と一緒にこまめなやりとりをしながらクオリティを高めていく方が、大幅なやり直しなどもなくお互いにハッピーだと思います。納品物や手間は同じでも、相手が抱く印象が大きく変わるので、見せるタイミングはすごく大事ですね。
あとは、依頼されたことにプラスアルファの提案をすることですね。頼まれていない別の案を自分から提案したり、相手の合格点より少し高いところを目指すことで、リピートにつながっていくと思います。
案件を終えたあと
せっかくがんばって納品したのですから、誰かに見てもらいたいですよね。納品物を自分の実績としてポートフォリオやSNSで公開してよいかは、クライアントに確認しましょう。守秘義務があって公開NGの場合もあれば、条件付きで公開OKの場合もあります。
納品物を紹介する際も、愛情を持って丁寧に行うと、クライアントも依頼してよかったと思ってくれますよね。SNSで紹介した際の反響などがあればそれを伝えたりするのも喜んでもらえます。
納品を終えたあとも気持ちよく関係がつづけられるよう、余力があれば丁寧に行いたいポイントです。
クリエイターからの質問
およそ200件もの事前質問が!その中からいくつか、サタケさんにお答えいただきました。
質問:他のフリーランサーとの協業、 横のつながりを構築するコツは何かありますか?
サタケさんの回答:こちらから仕事を依頼するのも手だと思います。自分のWebサイトやポートフォリオをつくるのを手伝ってもらうとか、なにかできない部分で依頼するとか。その中で相手の仕事の進め方を知ることもできますし、いきなり「友達になりましょう」などと言うより仕事が最初のつながりであるほうが、相手からも警戒心を持たれにくいですよね。
質問:異業種交流会以外での営業の仕方を知りたいです
サタケさんの回答:私はかけ出しの頃は、出版社やメーカーなどの大元のクライアントではなく、その間に入っている制作会社やイラストレーターのマネジメントをしている会社に営業をしていました。要はイラストの仕事が集まっていて、イラストの発注先を決めている会社ですね。
イラストレーター年鑑のような本に会社がたくさん載っているので、そこから探すこともできます。
当時はSNSなどもなかったので、直接電話をして緊張しながらアポを取っていました。私は営業が苦手だったので、意中の会社にしぼって、つながりができてから同じところに頻繁に会いに行っていました。
質問:次につながるような仕事の断りかたは?
サタケさんの回答:「こういう条件であればぜひ受けたかったです」というのを正直に伝えて断るのがいいのでは。金額がこれくらいなら、納期がこれくらいであれば、という風に具体的にこちらの条件を伝えることですね。
「よくわからないけど無理らしい」と受け取られてしまうと、相手も次の仕事を頼みづらくなると思います。また、こちらが過剰に申し訳なさそうにしてしまうと相手に気を使わせてしまうので、フラットな伝え方も心がけたいですね。
質問:イラストレーターとして大切にしていること、今後やりたいことは?
サタケさんの回答:「なんのために描いているのか」というのは意識しています。たとえば来月一件も仕事がなかったからといって、まったく描かなくなるかといえば違う。誰にも依頼されていなくても、時間があれば自分のために描きたいと思える状態を保つようにしています。展覧会を定期的にやっているのもそのためです。お仕事のためだけにならないよう、自分のやりたいようにやれる時間や作品を大切にしていますね。
今後は、3Dやアニメーション、木彫りの動物など、平面のイラストに限らず動いたり実際に手に持てたりといった別の表現方法を増やしていきたいです。コロナの状況がおさまれば、海外で展覧会もやってみたいですね。せっかく言葉がなくても伝わる、イラストの仕事をしているので。
サタケさんから、最後のひとこと
私がnoteにフリーランスの経験をあれこれ書いているのは、自分がかけ出しの頃に「こういうことが知りたかった!」ということを、次の人のために残していければという想いがあるからです。
まさにフリーランスかけ出しの方に読んでほしいですし、知りたいこと、分からないことがあれば直接聞いてくれてもかまいません。
フリーランスライフをたのしく、有意義なものにしていきましょう!
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こちらのサークル「創作をまなびあう会」では、安心創作勉強会についての意見交換や、テーマにちなんだお悩み相談などできます。ぜひ活用してくださいね。
noteはこれからも、だれもが安心して創作や発信するための知識や考え方をまなぶ場を提供していきます。
今後もオンライン勉強シリーズ「安心創作勉強会」をお楽しみください!