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DMMらしい“勝利にこだわる”マネジメントを求めて――挑戦し続ける組織を後押ししたのはEVeMのマネジメントの型
創業から27年。ジャンルを問わず幅広い領域に参入し、挑戦を続ける合同会社DMM.com(以下、DMM)。2024年現在も60以上の事業領域に取り組み、非連続な成長を果たしています。
現場で得られる実践的な学びを重視し、一律的なマネジメント研修には懐疑的だったという同社が、なぜEVeMのプログラム導入を決めたのでしょうか。その背景と受講後の変化について、DMMグループ全体の財務経理や法務等の機能を担う合同会社DGホールディングス代表・清水勇人さんと、DMM内事業部のHRBP、及びDMMのゲーム事業部門(合同会社 EXNOA)人事部部長を務める黒田賢太さんにお話を伺いました。
※取材の内容、インタビュイーの役職は2024年8月取材当時のものです。
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構造から変えなければ、成長ではなく膨張する組織になってしまう危機感
―――「なんでもやっているDMM」というフレーズの通り、貴社ではあらゆる領域に事業を展開されています。あらためて企業のミッションを伺えますか。
黒田様(以下、敬称略):ミッションやビジョンを持たない、というビジョンのある会社です。あえて言うなら「何でもやっている器(うつわ)」のような会社でありたい。面白そうなもの、商売になりそうなビジネスを受け入れて、いち早く投資をして育てる、インキュベーション的な機能を持った組織体だといえます。
―――順調な成長を遂げられていますが、人事領域における課題はあったのでしょうか。
黒田:DMMには陣頭指揮を執って事業を立ち上げ、0を1に、1から10、100にできるプロフェッショナルがそろっています。ただ、そこから100を101、102と段階的に成長させ1000まで育てられる人材がまだ少なく、人事としてはここに可能性を見出していきたいと考えました。
陣頭指揮をとってきた人ほど、いわゆる文鎮型の組織づくりに陥りやすい傾向があります。構造から変えなければ、成長ではなく膨張を続ける会社になってしまうのではないか、という課題感がありました。そこで、今まであまり投資していなかったミドルマネジメント層の底上げに力を入れる必要を感じ始めたのです。
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―――より事業を成長させるための手段の一つに、マネジメント層の育成という選択肢が加わったのですね。
清水:私たち経営層は、もともとマネジメント研修には懐疑的な考えを持っていました。仕事は研修で学ぶものではなく、自身の実体験や、先輩社員の背中を見て学び取るものだと考えていたからです。しかし、従業員の数が急速に増え、数千人規模の会社へと成長する中で、マネジメントの管理コストが大幅に増加しました。
さらに、コミュニケーションツールの発展に伴い、仕事のスピードが以前よりも強く求められるようになりました。更に更に、コンプライアンスの徹底やハラスメントの防止といった社会的な要請の変化により、マネジメントに対しての要求がますます高まってきました。そのため、これまでのように実体験や先輩社員からの学びだけでは、マネジメントの課題に対応しきれないのではないかという危機感を抱くようになったのです。実際、現場のマネージャーたちからも、こうした課題への対応に苦労している声が聞こえてきたのです。
黒田:私自身も前職ではいわゆる日本の大企業に勤めていたので、多くのマネジメント研修を受けましたし自身でプランニングした経験もあります。その一方で、マネジメント研修に疑問を感じていたことも事実です。例えるなら、自転車の乗り方を学びたいのに、きれいに自転車に乗っている姿を見せられるだけで終わるような感覚でしょうか。「自分自身が乗りたいんだよ、すぐに実践するための補助輪をくれよ」という違和感がありました。そこで、当初はDMMらしい人材育成プランの内製化を検討していたのです。
現実に「補助輪」をつけてくれる実践的なプログラム
―――マネジメント研修に懐疑的だったDMMが、なぜEVeMを選択したのでしょうか?
黒田: DMMらしいマネジメントについて模索している時に、長村(禎庸)さんのnoteを見つけて興味を惹かれたのです。「マネジメントスキルの習得が事業成長に本当に役立つのか」というシビアな視点を持ちながらも、EVeMが提唱する内容には、まるで「補助輪」のように実践を支えてくれる可能性があると感じました。
清水:私も実際に長村さんの本を読んでみて、全体的にDMMのマネジメントの目指すスタイルに合致すると感じました。特に方針転換が頻繁に行われる中で、「抽象的な戦略・指示を受けて、マネージャーはどう行動していくべきか」など、実際によく出くわす状況下でのマネジメント対処法がそこには書かれていたんです。また部下の心理的安全性の確保と指導のバランスの取り方について、DMMでは「部下に気を遣いすぎて、必要な指導ができないマネージャーにはなるな」と言われています。こういった考え方の一致が、EVeMのプログラムを受ける決め手になりましたね。
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―――導入に至るまでには、人事としても強い働きかけを行ったと伺いました。どのようなプロセスを経たのでしょうか?
黒田:DMMは、研修にもとにかく実践的であることが求められます。その実効性が証明できなければ、経営陣には通らない。DMMには「ちゃんと稼ぐ」というDMM.ESSENCE(DMMらしさ)があり、この観点から見ると、「人材育成」という一見利益に直結しないように見える言葉は響きにくいのです。「それ、儲かるの?」と返される。
育成施策を導入するには、やはりDMMのカルチャーに沿ったストーリーを紡ぐ必要があると考えました。「ちゃんと稼ぐ」という行動規範に沿って、人材育成も事業成長につながるものであれば良いのです。そこで「DMMにとっての人材育成」とは「権限委譲できる相手をつくること」と定義しました。マネジメント業務の精度が高まれば、さらなる事業成長が可能です。この指針にフィットした、実践的な育成が期待できるプログラムとしてEVeMを挙げました。
権限移譲を実現するためには、まずEVeMのプログラムの内容を幅広いマネジメント層に知ってもらう必要があります。そこで、DMMにて、長村さんにマネジメントに関する勉強会を開催していただくことになったのです。私たちは、マネジメントに課題意識を持つ人々に声をかけ、さらにマネジメント層全体にアナウンスを行いました。その結果、最終的に300人近くの参加者が集まり、上限に達するほどの反響がありました。このように多くのメンバーの関心が寄せられたため、亀山会長にも参加してもらう事となりました。この勉強会をきっかけに、トライアル受講から本受講へと進んでいったのです。小さな火をしっかり点火させていく、極めてオーソドックスなアプローチでしたね。
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―――上限数300人が参加という数字のインパクトは強いですね。それだけの人数が参加された理由は、どんな点にあったのでしょうか。
清水:事業の成長への可能性はもちろん、数億円の採用費をかけて1000人採用して200人が残るより、300人の採用で200人残るほうが、当然コスト削減になります。本部長や事業部長は特に数字を重視しているので、マネジメント強化が採用費削減につながる可能性も感じていたのではないでしょうか。
また、本部長陣には、DMM初期から在籍するメンバーが多い。私もその一人ですが、やはりその中には私と同様、研修というもの自体に懐疑的なスタンスを持つ人もいました。ただ、その部下である部長やマネージャーの中にはマネジメント手法に迷いがあり、「機会があれば学びたい」と思っている人も結構いたんです。勉強会に人が集まったことによって、研修需要に疑問を持っていた経営陣にも、実体としてのニーズを理解してもらえたという点もよかったと思います。
勉強会後「自部署の予算を使って追加で受講したい」という申し入れも
―――受講後の参加者の声をお聞かせ願えますか。
清水:昨年末、トライアル参加者にアンケートを取っています。「大変良かった」「良かった」という回答が94.4%で、「一般のマネジメント研修とは違う」と感じた人が89%いました。また、「他部署に勧めたいですか」という観点で評価点をつけてもらったところ、5点満点中平均は4.27点でした。多くの受講者からは、自分のためにもなったし、他の部署にも勧めたいというポジティブな反応が返ってきました。しかし、一般的にはこのようなプログラムを体験してアンケートを取ると、高めの点数が出てくると思うんですよね。だからこの数字自体はそこまで重要視してません。我々が驚いたのは、受講者自身やそのオブザーバー(受講者の上司)から直接我々に(能動的に)「EVeMの研修良かったよ!」と言ってくれる方が何人もいた事でした。
黒田:本部長レイヤーがトライアルでの実際のプログラムの体験を経て、自分の事業部の予算を使って追加で80人受けさせたいという依頼や、部長だけではなく、次世代の部長候補にも受けさせたい、マネジメント職の登竜門にしたいといった相談が来ていますね。
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―――受講後に変化はありましたか。
黒田:やはり組織における共通言語の獲得は大きかったです。多岐にわたる事業を展開するDMMには本当に多様な人材が必要で、外部から人が出入りする高い流動性が前提となっています。それぞれのバックグラウンドも異なるので、言葉一つひとつについて「DMMではこのように定義している」と明示できることは、コミュニケーションの齟齬を無くすという点で効果を生んでいると感じます。
また、「マネジメントとは何か」という理想型を吸収できる点も有効でした。基本の「型」を知らずに「DMMらしい型」を作り上げることは難しいという事です。EVeMプログラムを一度受講して終わり、ではなく内容を咀嚼したうえでDMM独自のエッセンスを付加して再定義する。そんなアプローチを取れば、よりスピード感を持って僕ららしいマネジメントに到達できると考えています。最終的にはDMMらしい、面白いマネジメントスタイルに変化させていきたいですね。
EVeMを信じられたのは、変化を前提としたプログラムだから
―――お話を伺っていると、皆さん変化に対して積極的ですね。
黒田:そうですね。EVeMを信じられたのも、変化を前提としたプログラムだからだと思います。我々ベンチャーは、安定した企業が行う「平時のマネジメント」ではなく「戦時のマネジメント」を実施する必要がある、この考えがDMMと合致していましたし、かなり深く刺さりましたね。
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―――お2人は、EVeMをどういう人・組織にお勧めしたいですか?
清水:いま現在、急拡大のフェーズにある会社ですね。やはりマネジメントに一番迷いが生まれやすい時期は創業期や安定期というより、拡大期だと思います。ここでうまくマネジメントできた会社はより大きな会社に成長できるでしょうし、うまくコントロールできなければ衰退してしまうのではないでしょうか。そんな分岐点に立つベンチャー企業に勧めたいプログラムだと思います。
黒田:私は、日本の全企業が受けてもいいのではないかと思っています。特に、優秀な人材を多数抱えている大企業ほど、内乱を抑えるための“平時のマネジメント”に終始している。これが日本の弱点になっていると感じます。この強力な閉塞感を打破する解決策を提示できる大企業があれば強い。社会も良くなると思うので、大企業にこそ受けてもらいたいですね。
―――DMMもすでに大企業といえますが、内部から見るとまた認識は異なるのでしょうか。
黒田:企業規模が大きくなっても、ベンチャー企業であることは変わらないという認識です。我々の会社のポリシーが「安定は事業成長の鈍化」と考えているので、常に組織に「揺らぎ」を入れることが求められている点も大きいと思います。私は、入社して最初に「うちの組織に揺らぎを入れるのが、人事の仕事だよ」と言われました。前職では企業に安定をもたらす業務だと思っていたのですが、DMMでは逆で、揺らぎを入れることで一時的に組織は混乱するが、この混乱を乗り越えていこうと行動することで組織はより良くなる。揺らぎが成長の伸びしろになっている、そこに面白さを感じます。
常に「揺らぎ」を求めて挑戦し、戦時のマネジメントを続ける。それがDMMのスタイル
―――最後に、DMMは今後どういう組織を目指されていくのでしょうか。
清水:常に「揺らぎ」を求めて挑戦し、勝利にこだわるマネジメントを続けることが、DMMのスタイルだと思っています。EVeMで習得したマネジメントの型もあえて壊し、また組み立て、自分たちのエッセンスを加えつつ、終わることなく成長を続けていきたいですね。
黒田: DMMは、日本でも唯一無二のユニークな会社だと思っています。いつまでも、面白そうなことに誰よりも早く反応できる、好奇心を忘れない会社でありたいですね。
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黒田様、清水様、ありがとうございました!
EVeM HERO INTERVIEW
インタビュイープロフィール
合同会社DMM.com
清水 勇人 様
合同会社DGホールディングス代表
黒田 賢太 様
合同会社DMM.com 組織管理本部 人事部 兼 合同会社EXNOA 人事部長
※上記の部署名、役職はインタビュー当時(2024年8月時点)のものです
▼合同会社DMM.com 様について詳しく知りたい方は、下記からご覧ください。
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