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ほろ苦い泡に溶けこむ郷愁の在りか


母方の親戚はみな仲がいい。

夏には必ず、あちこちから祖父の家に集まっていた。


私たちが幼い頃は、一日中芝生を駆け回ったり、近くの川で遊んだりしていた。

まぶしいほどに鮮やかな緑の芝に、川で釣った真っ赤なザリガニがいる風景。

夜になると、星たちがとても近くに感じられる。

ずっと見ていると、吸い込まれそうで…空ごと落ちてくるんじゃないかと、こわくなるほどに。

もう今では見られない光景だけれど。



過ごしやすい夜は、「外でご飯にしようか?」と誰かが提案する。

私は、よくぞ言ってくれた!と嬉しくなる。

芝生にござを敷き、折りたたみのテーブルをいくつか持ち出すと、ランプやらランタンやら…とにかく灯りがとれるものを探して持ち寄る。


祖父の家の倉にはなんでもあった。


台所でせっせと料理を作る女性たち。

それを運ぶ子供たち。

外では男性たちが、食事が待てずにビールをちびちびと飲んでいる。

子供たちは解放感が嬉しくて、ジュースを片手にぐるぐるとまわりながら、一人一人と乾杯をしていく。


寝っ転がると、そこは天然のプラネタリウム。

露を含んだ夜の芝が心地よくて。

楽しかったなぁ。


理由なんていらない、ただ飲みたいから飲むんだと、私より先に大人になっていた従兄姉たちは言っていた。


私は眠くなると、「お先に。」と言って家に入って寝てしまっていたけれど、二十歳になって初めてビールで乾杯をした夜は、嬉しくてみんなと話をしながら、芝生の上で朝を迎えた。


真夜中に、突然ゲストが来たりもする。
近所の人たちとも仲良しで、来るもの拒まずの家なのだ。

「おっ、大きくなったなぁ!」とか、

「しばらく見ないうちに、綺麗になったなぁ!」

とか言いながら。


空がだんだんと、ラベンダー色に明けていく。

少しくすぐったいような高揚感を抱え、特別な一日がまた始まるのだ。




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