どんど焼きと夢
題名「どんど焼きと夢」
作者:img_00
今日は日曜日、普段なら昼まで二度寝するが、今日は珍しく目覚まし時計が鳴っている。あー眠い、と愚痴を言いながら起きる。
今日は、自治会の行事でどんど焼きをする。場所は、近所の河川敷だ。どんど焼きは、役目を終えた正月飾りを焚き上げる行事。最近は、正月飾りを塩でお清めして、一般ごみとして処分する家庭が多いので、行う自治会も少なくなった。
寝ぼけながら、何とか身支度を整えると、いつもの革ジャンを羽織って、家を出た。自治会長代理として、しゃんとしないといけないので、ほっぺたを叩いて気合を入れる。自転車で河川敷まで行く途中で、テントを積んだトラックとすれ違う。「おはよう、姉御」と声を掛けられたので、「今日はよろしくお願いします。」とあいさつをした。
河川敷につくと、前日に用意しておいたやぐらのブルーシートをはがしている最中だった。お寺の住職も来ていたので、テントを組んで準備は万端だ。最近の正月飾りはプラスチックとかが使われていることが多いので、いったん預かって、選別をする。基本的に、近所で作った伝統的な正月飾りが多いので、外したプラスチックは段ボールひと箱もなかった。
みんな揃ったし、もうそろそろ時間だ。
やぐらに火をつけると、次々に正月飾りやダルマを燃やしていく。合格と書いたダルマを見て、少し考えた。進路について、親からは好きにしていい。と言われている。音楽をやりたいなら、専門学校。普通に考えれば、大学。もうそろそろ、自分で決めないといけないが、決心がつかない。
ふと見ると、小さくなった炎で子供たちが大きなマシュマロを炙って遊んでいる。そう言えば、子供のころ焼き芋して怒られたことあったな・・・。最近の流行はマシュマロか・・・。これはこれで、やんちゃしているな。と思っていると、
「姉御も、一緒にやらない?」
と誘われたが、火の始末とか、お仕事があるのでやんわりと断った。
若いっていいな・・・。と思ったが、自分だって十分若い、まだ17歳だ。確かに、進路については大きな決断だが、今は自分のやりたいことに集中しようと思った。やっぱり、音楽をやりたい、専門学校にしよう。
本気でやらせてもらえるだけでも十分恵まれている。
覚悟を決めて、家に帰ったら両親に「専門学校に行って音楽を本気でやりたい。」と話してみることにした。
執筆・挿絵 img_00様
投稿 春原スカーレット柊顯
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