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【レトロゲーム回顧録】フェリオスの思い出



ナムコの新作シューティングゲームに期待を寄せる


 私がフェリオスに出会ったのは高校受験が終わり、高校に無事合格した後だった。
 それからしばらく経ったある日。
 自転車で隣町にあるバッティングセンターに立ち寄った時にナムコの新作のシューティングゲームであるフェリオスの筐体が入荷していた。
 1プレイ100円で当時中学生の私には高い値段だったが、ナムコの新作という事であまり難しい事を考えずプレイ。
 ゲームをする前にゲームの難易度を選べる親切な所に良い印象を与えた。
 
 ゲームは楽しかったが、ゲームはあまり慣れておらずチャプター2(ステージ2)の最初の所であっさりゲームオーバーになってしまったが、チャプター1(ステージ1)のボスのメドゥーサを倒した後、石になっていたアルテミスが元に戻って綺麗なアニメーションと流暢に話すデモシーンには驚いてしまい、コンテニュー画面で助けを求めて困った表情を見せ、ゲームオーバー時に拗ねる表情を見せるヒロインの姿に二度驚いてしまった。

フェリオスの難易度選択とライフ設定について

 フェリオスはゲームを始める前にイージーコースとハードコースを選択できる。
 イージーコースはチャプター(ステージ)1~4まで、ゲームを進めて残りのチャプター5~7はスキップされ、デモ画面で説明される。
 ゲームの最強の剣であるフェリオスの獲得は説明文のみで語られて獲得したことになっている。
 ラスボスのデュポンも第一形態を倒せばエンディングを迎える事が出来る。
 しかし、途中からアルテミスのデモシーンとアニメを見る事が出来ないのと、全面クリア後のスコアはハードモードに比べて少ない。
 
 ハードコースはチャプター1~7までゲームを進めて、アルテミスのデモとアニメを全て見る事が出来る。
 チャプター7では最強の剣であるフェリオスを獲得するために、「P」「H」「E」「L」「I」「O」「S」の文字アイテムを全部取らなければならない。
 ラスボスのデュポンも第一形態だけでなく第二形態があり、第二形態を倒すとエンディングを迎える事ができる。
 ハードコースの方が難易度は高い反面、全面クリア後のスコアは高い。
 エンディングはイージーもハードも同じ作りである。
 基盤のディップスイッチで難易度選択をOFFにした場合、ゲームの難易度はハードでプレイすることになる。
 ライフの初期設定は2つだがゲームを連続でコンティニューをしてライフ上限を最大4つに増やす事ができ、ゲームを終了させない限り効果は続き、ディップスイッチを使って自機の最大ライフ4に増やす事が出来た。
 ライフを回復させるには、ゲームの中盤でライフ回復アイテムが出現するので回復アイテムは貴重な存在である。
 
 ゲームのモチーフはギリシャ神話をベースにしたオーソドックスな縦スクロールシューティングで、ファンタジーとシューティングを融合させるアイデアは、ドラゴンスピリット以来の作品でキャラクター性を重視するナムコらしい発想だった。
 音楽・グラフィック・各ステージの演出・ストーリーや世界観やキャラクター達等どれをとっても良いシューティングゲームだったが、フェリオスにふたつの問題点があるとすれば、ゲームの主人公であるアポロンとヒロインであるアルテミスのキャラクター設定とボスを倒した後のアルテミスのデモのアニメーションと美声で話すことにあった。

勘違い必須!2人の設定に難あり

 ゲーム上の設定では主人公のアポロンは勇敢な騎士で、ヒロインのアルテミスは王国の一人娘の王女で2人は恋人同士という設定。
 ギリシャ神話の事を少し知っていれば2人の関係は双子の兄妹の関係で、ギリシャ神話とゲームの設定の大きな違いによるギャップによく混乱と勘違いをされる事が多かった。 

挑戦と苦戦の日々、そして…無念の撤去

 4月になり高校に入学後に同じ隣町のゲームセンターにフェリオスが入荷した。
 1回のプレイ料金は50円で同じ町にあるバッティングセンターより安く、部活が休みである毎週日曜日は、自転車に乗って隣町のゲームセンターに通う事を楽しみにしてフェリオスを遊ぶために通っていた。
 ゲームの難易度はハードコースが難しそうだったので、いつもイージーコースを選んでいたが、ゲームは難しくチャプター4の途中でゲームオーバーになってしまい先のステージに進めずラスボスを倒してエンディングを見る事が出来なかった。
 チャプター4のボスである炎の魔人アンタイオスに安全地帯があり当時のゲーメストにも掲載されてその後、チャプター4のボスを倒すのが楽になりゲームの全面クリアするプレイヤーが出はじめた。
 あの当時のシューティングゲームにしては珍しく安全地帯があり知っていれば一部のボスはノーダメージで倒すことも出来る。
 常連のゲームプレイヤー達はフェリオスのハードコースを選んでプレイしても、1コインノーミス全面クリアは当たり前で、いつも彼らがゲームをプレイすれば、いつのまにか人が集まって常連のプレイをいつも最後まで真剣な顔でゲームを見入っていた。
 大抵の場合アルテミスのデモのアニメシーンやセリフをショットボタンを押して強制的にキャンセルしてある意味残念(?)な事をしていた。
 一部の律儀で、良心的(?)なプレイヤーはアニメシーンとセリフをキャンセルしないでちゃんと見せてくれるプレイヤーもいた。
 いつまでもゲームが下手な私はゲームの上手い常連達の脇でいつもゲーム画面をいつも憧れの眼差しで眺めていた。

 しかし、とある日。いつもの様にゲームセンターに遊びに行くとフェリオスは撤去され別のゲームに変わり、残念な思いをした。
 8月のある日、1つ上の先輩の親友と2つ年下の後輩の親友とその友達と市内のゲームセンターに遊びに行きフェリオスを遊んだのが最後で、その後ゲームを見掛ける事はなかった。
 こうしてフェリオスはイージーモードですら1コインクリア出来ない状態でゲームは終わってしまった……。

ゲーム音楽CDとその後のフェリオス

 毎月楽しみにしている「ゲーメスト」を買ってきて、読んでいたら「ナムコビデオゲームグラフィティVOL.6」の発売を知り、収録されている音楽の中にフェリオスの曲が入っていることに嬉しくなり、CDの発売を楽しみにしていた。
 部活が休みである日曜日に私はCDが売っている駅ビルにJRに乗ってCDを買いに行った。
 家に帰って、早速買ってきたゲーム音楽を聴いたのだが、予想以上の出来に驚いてしまい、アルテミスの美声(?)もキッチリとCDで再現していた。幸いにも私は音楽をヘッドフォンで聞いていたので外には漏れなかったと思いたい……。  
 他のゲーム音楽も同様に、良い音楽と聞きごたえのある満足の1枚で初めて買ってきたゲーム音楽CDは気に入って、時間があれば全部の曲を楽しく聞いた。
 翌年、様々なアーケードゲーム作品に出演したヒロイン達を特集したゲーメストの5月号増刊であるギャルズアイランドを買って、アルテミスだけではなく他のヒロイン達の紹介文を読んでイラストに萌えていた。

 それから数年後。
 親友の家に遊びに行った時に彼がアーケード版フェリオスの基盤を持っていたので、彼の薦めでゲームをプレイさせてくれた。
 難易度はイージーモードでプレイ。道中は順調に進めていたがチャプター4の途中でハマってしまい連続コンティニューをしてライフを最大にしたが、残念ながら念願だったフェリオスの全面クリアは出来なかった。
 しかし一時的であれ大好きだったゲームを、遊べた事は楽しい思い出である。
 
 フェリオスはゲームの世界観とストーリーにギリシャ神話をベースにした作品で、ペガサスに乗った騎士の自機と各ステージをチャプター(章)と表記しておりファンタジー色が強くゲーム中に出てくる各ステージのボスの名前もギリシャ神話に由来した名前は分かりやすく取っ付きやすい作品になっている。
 ナムコのシステム基盤「SYSTEMⅡ」を使った拡大・縮小・回転機能を使いメリハリのある高い演出は上手く出来ており、各ステージのグラフィックは良い。
 音楽の出来も良く、チャプター1~3の前半に流れる勇壮なテーマ曲はテンポとリズムが良く、各チャプターに合わせたゲーム中に流れる音楽はゲームの盛り上げに一役買っている。
 各チャプターにいるボスとの戦いでは出現する前の静かで緊張感のある音楽からボスとの戦いの曲の流れが上手く繋がり緊迫ある曲に仕上がっていて、ラスボスであるデュポンとの直接対決の曲も上手い曲作りになっている。
 デュポンの登場曲とアルテミスの曲は好対象で、コンティニューの寂しいメロディーラインの音楽からネームエントリーの哀愁漂う曲の流れの動きも良く、アルテミスを救出した時に流れる甘く優しいメロディーラインからファンファーレが鳴りそこから明るいエンディング曲などゲーム音楽として全体的に良い曲が揃っている。
 本作のヒロインであるアルテミスのデモシーンとアニメーションばかり目立ち多くのシューティングゲーマー達から軟派なギャルゲーと勘違いされやすい作品だが、ゲームの中身は硬派な縦スクロールシューティングゲーム作品で、ゲームの難易度は後半のステージに行くほど難しくなり、フル装備ノーミスでゲームを進めればゲームの難易度と敵は強くなっていく内容である。

 本作は1990年にメガドライブ版に移植され発売。
 2009年にアーケード版の忠実移植でバーチャルコンソールアーケードに配信、2023年にはアーケードアーカイブスに配信された。
 ゲーム雑誌の「ゲーメスト」の企画で1989年に行われた「第3回ゲーメスト大賞」においてベストシューティングゲーム賞5位、ベスト演出賞4位、ベストグラフィック賞3位、ベストVGM賞8位、年間ヒットゲーム20位を受賞。1991年に発売されたゲーメストムック「ザ・ベストゲーム」では46位を獲得した。
 本作の最大の魅力は、ヒロインのアルテミスの存在は非常に大きく、1989年の「ゲーメスト」のベストキャラクター賞では2位を獲得、1990年に発売された「ギャルズアイランド」の人気投票では2位を獲得、1993年に発売された「ギャルズアイランド2」では9位を獲得した。
 アルテミスは囚われヒロインのお姫様というお約束の属性に綺麗なアニメーション、アルテミスの美声に4Mある音色のデータの半分近くセリフに費やした事で、当時多くのプレイヤー達から支持され、硬派で熱い心を持つシューティングゲーマー達の心を鷲掴みにして彼女の可愛らしいイラストは、多くゲーマー達が萌えたのだった……。

 フェリオスはキャラクター性を重視するナムコ作品におけるギャルゲーの代表作となっている。



  • 執筆 現地改修

  • ©DIGITAL butter/EUREKA project

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