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箱根仙石原温泉から流星群を観よう!(2024年8月2話)

 御盆休みの8月12日(月曜)・13日(火曜)に、流星群などを観察するため箱根仙石原の温泉に宿泊しました。今回のブログ記事は、この「遠足」を振り返って書いてみようと思います。


 今回の参加者は、私を含めて5人です。目的地は、箱根町(神奈川県 相模地方)の山奥にある仙石原ですが、そこへの経路は人それぞれなので、私は大磯を経由して箱根に向かう事となりました。


8月12日(月曜)
相模 大磯町

12時51分
12時51分

 当日。蒲田(東京 大田区)から出発した私達は、蒲田駅から電車に乗って川崎駅で乗り換え、湘南海岸の大磯駅に到着しました。13時、駅前のマイクロバスに乗車し、大磯城山じょうやま公園がある西北西の方向に向かいます。

13時11分
13時11分

 城山台地上にある、湘南学習センターに到着。ここで、観望会の引率指導者の方と合流し、天体望遠鏡などの機材を積み込みました。13時半頃、荷物の確認を終え、いよいよ箱根に向かいます。

14時
14時

 相模湾の湘南海岸に位置する大磯町は、1885(明治十八)年に日本初の海水浴場になった場所でもあるそうです。


相模 箱根町

15時36分
15時36分

 大磯町から小田原市を経て箱根町に入り、箱根湯本駅を通過します。箱根は、それ自体が大きな火山ですが、この辺りの標高が低い地域は、噴火によって地下のマグマが空洞化し、そのせいで山体が陥没したカルデラだと考えられます。そこから箱根山を登り続けると、ようやく仙石原に到着。今回の観測・宿泊に使うスポーツクラブの建物は、有名なアニメの舞台になった事もあるそうで、どこか見覚えのある文字列が…。

 その後、ほかの参加者と合流したり、遅めの昼食を買いに行ったりするために、しばらく別行動する事になりました。私は(空腹を満たすべく)付近のスーパーマーケットに向かいました。

16時50分
16時50分

 16時頃には、大磯町などに放送される湘南短波ラジオの収録も行われました。丁度この頃は、南海トラフや神奈川県内の地震活動が活発化していた時期でもあり、ここ箱根の地形を含め、地学的な話題が豊富なタイミングでした。

 箱根火山の中心かつ最高峰の神山(1438m)は、約2万年前(旧石器時代)に生まれた成層火山(何度も噴火して噴出物が層状に堆積した火山)です。その中で、現在も活動している噴火口が大涌谷であり、約3000年前(縄文時代)から噴火を繰り返しています。大涌谷から沸き上がる噴気には、硫化水素H2Sが含まれるため「硫気孔」と呼ばれます。そして、この神山大涌谷の地熱で温められた湧水が、仙石原に流れて温泉になっています。

 ここ仙石原(標高700m)は、かつては箱根山の火口原湖でしたが、早川という河川の運搬・堆積作用によって埋められ、現在は湿原になっています。


 18時頃…本日の月齢は7.7で、右半分が明るい「上弦の月」を観る事ができます。折角の機会なので、宿泊する和室(2階)の壁にプロジェクターを映し、この月について勉強する事にしました。

 月の白い大陸には、隕石(微惑星)の衝突による丸いクレーターがあります。また、大陸の外側には、海底のような黒い地形(水無し海)が広がっています。

 地球を含む太陽系の惑星は、微惑星という大きな隕石の衝突・合体で生まれました。月が出来た頃、地球の周辺にはまだ多くの微惑星が残っており、それらが月に「重爆撃」のように次々と落下した結果、多くのクレーターが形成されたようです。月のクレーターには「アリストテレス」など、主に西洋の科学者の名前が付けられています。なお、微惑星は月だけでなく地球にも落下しますが、微惑星の成分にはが含まれており、地球に水環境をもたらす役目も果たしました。

 また、月面では(地球と同じように)火山活動がありました。そのうち塩基アルカリ性の玄武岩質マグマは、温度が高い代わりに粘性は小さく、その溶岩は薄く広く流れます。また、このマグマは黒い有色鉱物を多く含むので、それらが固まった所には黒い岩石の「水無し海」が広がりました。こうして、今に至る月の姿が出来上がったのです。

 19時以降、夕食を頂いたり、仙石原温泉に入浴したりしながら、星空が良く見える深夜を待ちました。

 また、ハワイ島マウナケア山(玄武岩質の緩やかな噴火による楯状火山)からのYouTubeライブ配信を室内に上映する事で、日本より5時間先の夜空と流星群を(箱根よりも更に澄んだ空で)観る事ができます。ハワイ諸島の最高峰(4205m)であるマウナケア火山は、日本を含む国際的な天体観測所になっています。また、マウナケアの溶岩は玄武岩質であり、月の水無し海と似た火山であると言えます。


スウィフト・タットル彗星

 微惑星の衝突・合体によって、太陽系の惑星達が出来上がった後、衝突せずに残った微惑星は、乾燥した小惑星や、氷を含む彗星などに分かれました。彗星や小惑星の中には、流星群の原料になったり、地球に落下するかも知れない物もあります。

 ペルセウス座流星群は、スウィフトSwiftタットルTuttle彗星という彗星の破片が地球に落下し、大気との摩擦で燃える事によって生ずる流星群です。そのスターダストは、地球が8月を迎える空間に多く浮遊しており、それは地球(夜)から見て東のペルセウス座の方向であるため、毎年8月にペルセウス座のほうから現れる流星群となります。

 スウィフト・タットル彗星は、太陽の周りを約133年で公転しており、それぐらいのペースで地球に接近(回帰)します。紀元前から中華王朝で「客星(知らない天体が急に現れた)」として記録されており、近年は1862(文久二)年7月と1992(平成四)年9月に地球接近を目撃されています。彗星が地球に近付くと、流れ星の原料であるスターダストが補給されるので、その年の前後には特に多くの流星群が見えます。

 そして、スウィフト・タットル彗星の次回の地球最接近は2126年8月になる…予測されているのですが、その際に地球(インド洋)に落下・衝突し、人類を含む生物を大絶滅させる可能性がある…という説がありました。これは、約6500万年前(中生代 白亜紀)のユカタン半島(メキシコ)に小惑星が衝突し、恐竜やアンモナイトなどを滅ぼした事件の再来と言えます。その後、彗星の動き方が再計算され、当面は地球に衝突する可能性は低いと考えられるようになりました。大きなスウィフト彗星は、私達に美しい流れ星をプレゼントしてくれる一方で、もしかしたら「怒ると怖い」星でもあるようです。

 隕石の衝突は、地球の歴史に、時には人間の神話にも影響を与えたと思われます。例えば『旧約聖書』(創世記)には、ヨルダンの死海南岸にあった「ソドム・ゴモラ」という都市が登場します。その部分を読んでみると…。

 『旧約聖書』「創世記」19章(ソドムの滅亡 )
 『旧約聖書』
創世記」19章(ソドムの滅亡)
創世記 19:23-29 太陽が地上に昇ったとき、ロトはツォアルに着いた。 主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、 これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。 ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。 アブラハムは、その朝早く起きて、さきに主と対面した場所へ行き、 ソドムとゴモラ、および低地一帯を見下ろすと、炉の煙のように地面から煙が立ち上っていた。 こうして、ロトの住ん ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。 主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、 これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。 しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。 アブラハムは朝早く起き、さきに主の前に立った所に行って、 ソドムとゴモラの方、および低地の全面をながめると、その地の煙が、かまど ロトが村に着くと、ちょうど太陽が昇ったところでした。 その時、天から、火のように燃える硫黄が、ソドムとゴモラの上に降りかかりました。 そして、平野に点在するほかの町や村といっしょに、ソドムとゴモラをすっかり焼き尽くしてしまったのです。人間も植物も動物も、いのちあるものはみな死に絶えました。 ロトの妻も夫のあとからついて行ったのですが、天使の警告に背いてうしろを振り返ったため、塩の柱になってしまいま ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。 主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、 これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。 しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。 アブラハムは朝早く起き、さきに主の前に立った所に行って、 ソドムとゴモラの方、および低地の全面をながめると、その地の煙が、かまど 太陽が地上に昇ったとき、ロトはツォアルに着いた。 主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、 これらの www.bible.com

 この町は、天から降った火と硫黄によって壊滅し、植物が生育できない塩の土地になってしまったようです。これは、約3600年前(紀元前1650年頃)の隕石落下(空中爆発)によって、死海沿岸の都市が焼失してしまった実話に基づいているのではないか…とも言われます。

 このように、地球への隕石(小惑星・彗星)衝突は、この星と人類文明の歴史・未来を考える上で、興味深く重要なテーマなのです。


8月13日(火曜)
夏の星空とペルセウス座

 そして迎えた深夜。校庭に望遠鏡や寝袋などを展開し、いよいよ実地観測が始まりました。

 天体を見付け易くするため、携帯電話に「星と宇宙 AR星座早見盤」アプリケーションをインストールしました。星座をアナログで覚えようとしてきた私にとっては、携帯カメラを向けるだけで天体の位置・名前が分かる便利な時代になった事に、隔世の感があります。自然の天体だけでなく、人工衛星の通過も分かります。

 東のほうを見上げると、天頂の近くに琴座織姫ベガ星)が輝いており、その右下に鷲座牽牛彦アルタイル星)、左下に白鳥座(デネブ)が見え、これら三つの一等星(アルファ星)を結ぶ大三角形が作れます。また、南の低空には蠍座(アントアレス)が、その左隣には射手座(南斗六星)も見えます。これらは、夏の代表的な星座として有名ですね。大三角や射手座を通る部分には、銀河系の星々が渦巻円盤状に集まっている天の川が見え、射手座にはブラックホール(天の川銀河系の中心天体)が存在すると考えられます。

 夜が深まるに連れて、東から秋の星座が昇って来ます。ペガスス座(※)やアンドロメダ座、そして流星群の突入地点(放射点)があるペルセウス座などです。この頃には、多くの流星(緑色に光りながら燃えるのが特徴)を観る事ができます。

※「ペガスス」はラテン語(ローマ神話や学名)で読んだ場合の発音で、ギリシャ語では「ペガソス」に、そして英語だと「ペガサス」になります。

 幸運な事に、今夜の東天には火星・木星が並んでいるのも見えます。アンドロメダ銀河や木星は、天体望遠鏡で拡大して観察する事もできます。

1時4分
1時4分

 更に時間が経つと、本来は冬の星座である牡牛座(プレアデス星団)やオリオン座(蠍座の正反対方向にある)が見え始め、朝が近付き空が明るくなってきます。この頃には、流星群が良く見えるピークも過ぎているので、観測を終えて客室に戻りましょう。

 日本を含むアジア仏教文化圏では、ペルセウス座流星群が降り注ぐ8月中旬は、死者に想いを馳せる盂蘭盆会(御盆)の期間であり、なおかつ太平洋戦争が終結した時期でもあります。そう考えると、あの数多の流れ星は、亡くなった人々の御霊に重なって見えるかも知れません。


恒星のスペクトル型

 翌朝。再び温泉に浸り、昨夜までの疲れを洗い落としました。

7時34分

 7時半、施設内の食堂で朝御飯を頂きました。食堂に設置されているテレビでは、開催中のオリンピックで活躍した選手達が取り上げられていました。

 和室に戻った私達は、持参したスペクトル分光器を用いて、光(可視光線)に含まれる虹色(七色)の成分について学びました。スペクトルの考え方は、私達が地球上で見ている太陽光線だけでなく、太陽以外の恒星の色を分析する時にも役立ちます。

 恒星の光を分析すると、太陽と同じように複数の色が帯状に分かれます。しかし、それぞれの色の太さは恒星によって異なり、赤部分が太ければ赤い低温の星に、青部分が太ければ青白い高温の星になります。私達は、日常生活では「赤色=火=熱い」「青色=水=冷たい」というイメージを抱いていますが、化学反応や核融合の場合は、比較的低温な燃焼は赤く、高温になるほど青くなります。また、特定の元素によって生ずる色(輝線)や、逆に見えなくなる色(吸収線)もあります。これらは、天体の姿を解き明かすのに役立ちます。


 こうして、楽しい合宿は終わりを迎えました。私達は、箱根から下山して大磯に戻り、機材をセンターに無事に収納したのを確認し、大磯駅前で解散しました。

 その後、蒲田駅に到着し、今回の合宿企画は無事に完遂されました。私は、中学生の頃から天文地学に関心を持ち始め、特に夏休みに流星群を観るのは、高校時代からの憧れでした。その思い出を、こうして今も更新し続けられるのは、とても感慨深い事です。ありがとう御座いました!


 台風の接近が懸念されていた先日、横浜の店内で「マジパン」というアイドルグループが臨時ライブしている所に偶然、立ち会いました。とても元気を貰える歌舞でした。




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