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帰り道は林檎の香り 足取り軽い、美容室のはなし

神宮前で逢いましょう

【帰り道は林檎の香り ~足取り軽い、美容室のはなし~】

 今でこそ自分で美容室を選び期間が空いても2~3ヶ月にいっぺんは通うようになった。

 ブリーチをかけている訳ではないが、カラーはしているのとちょっとでも美容室に通わない月が続くと結ってもなかなかまとまらない程の毛量と化するのでカットだけでもこまめに通っている次第である。

 子供の頃は、美容室でシャンプーしてもらう時に妙に背中がくすぐったくなるので(今でもそうだが)あまり好きではなく高校の頃なんかも行って半年に一回という感じだった。

 成人してから、色々とやってみたい髪色や試してみたいカットが増えて、

(自分で美容室、選んで行ってみようかな~)

 とホットペッパービューティーやGoogleの力を借りて、2019年から2020年上半期まで初めて関内のとある理容室(レトロな家族経営の美容室だった)に通っていた。


 その理容室もいい美容師さんだったが、段々お洒落というものに慣れ始めてくると人は高望みをしてしまうものである。

 2021年の誕生日辺りから、原宿のヘアサロンに通い始めた。

 殊に最近はインスタやXなどのSNSで色々な人と接していると、

「アニメの推しと同じカラーにしました!」

 と、薄いピンクやグラデーションカラー(先端だけブリーチして青や緑など派手な色に染めるヘアカラー。鬼滅の影響で一時期かなり街で見かけた)に染めたりアイドルのコンサートなどで“ヘアメイク”と言って推しのイメージカラーのリボンやパールを差したUピン、推しのアクリルキーホルダーなどで髪の毛をデコレーションする…という平成を生きた我々にはギャルの“盛り髪”と通じる何かを感じるライブの日のためにあるお洒落があるそうだ。

 “ヘアメイク”についてはロリィタさんがばっちり縦ロールヘアを作りお茶会に行きたい場合でも珍重されるようである。

 もちろん、どうしてもばっちり決めたい日のヘアスタイルはプロに一任してもいい。

 いつかロリィタブランド主催の大きなお茶会に参加する時があれば当日の天気予報でよっぽど天気が悪くなければ横浜の美容室でお願いしてみたい所だ。

 もっとも…私は「そっちの方が結果的に安上がりだよな」と思い、美容室で使われているクレイツと言う会社のコテ(いわば業務用なので、けっこうフンパツした)を購入し、動画を見漁って縦ロールヘアのコツをどうにか掴んでツインテールの時などにくるくると巻いている。


 先程、原宿のヘアサロンに通っていると書いたが。

 ロリィタの聖地で髪を整えに行く…という事に学生時代から憧れがあったのもあるがそう頻繁に行く訳ではない。

 ヘアカットだけの場合、横浜のサロンに通っている。

 東京の方は山手線の原宿駅、竹下通りの入り口からも目と鼻の先にあるので終わった後にクリスティーに紅茶とサンドイッチを取りに行き、竹下通りの喧騒から離れてほの暗く居心地のいい空間で休憩した後ラフォーレ原宿に行ける事もありちょっとしたお出かけである。

 横浜の方は、前はルミネ横浜の上階にあったサロンにお世話になっていたが今は閉店してしまった(美容師さんも良かったし、内装も可愛かったのになぁ…)。

 よって今は自分の予算に合わせて色々な場所を試している所である。

 ヘアサロンで髪を整えてもらうと、自然近いうちにどこか可愛いカフェなど新しいスポットを開拓したくなるのだ。

 長かった髪を思い切って切りっぱなしのボブにして、前とはテイストの違う若い子(10代が集う韓国風のインテリアだったりする)ヘアサロンにこの前行って来た。

 モニターにはK-POPアイドルのPVが流れていて、やはり客層は10代~20代の女の子が多かった(“女の子”に関しては、そのサロンは女性限定なのでそりゃそうなのだが)のと美容師さんにも同じ趣味の方が多いらしく、

「明日、推しのライブの当落なんです」

 と施術中話しているお客さんや、美容師さんとお客さんが高校生の女子グループさながらどこのライブ会場は推しが至近距離で見えるやらあの物販イベントがどうとかの話で盛り上がっていた。

 今の高校はもしかしたら、休み時間こんな感じなのかもしれないと私は勝手に空想を膨らませていた。


 普段の生活の中で一番帰り道の足取りが軽いのは?と問われると私は「美容室帰り」と即答する。

 行きの道中と美容室を後にした時の気分が天と地ほど違うからだろう。

 スタイリング剤をつけず、セットもせず…という状況で横浜や原宿の街に乗り込むので私としては丸腰で歩いているのに近い。

 (あくまで私個人の感覚なのであしからず)可愛い服を着て、リボンのついた靴を履いてもちゃんと髪の毛をセットしないと決まらないなぁ…という感が出てしまうのだ。

 前髪も伸びきって撫でつけていないとホラー映画の貞子みたいになっていくので、

「もう何でもいいから、早く施術の時間が来てくれ……」

 という考えでいっぱいになっている。

 カラー剤を染み込ませている間は、花を育てる過程で乾いた土を肥料や水で潤している光景を想像する。

 トリートメントでも大体同じことを考えている。

 カットする際にも量の多い髪をすかれる辺りから園芸種の薔薇を育てる時の剪定を思い出すのだ。

 セットする時にもちゃんと整えられたぱっつん前髪というのが命である私なので美容師さんが前髪にハサミを入れて、髪とにらめっこされつつ綺麗に整えて頂いているとハサミのチョキチョキという音に、

(前髪が生き返る音がするぅ~…)

 とすら考えている始末だ。


 施術後、お会計を済ませて街へ出ると前髪を整えてもらったのも相まって広がる街並みが明るくなっている(…ように感じる)。

 さっきまでヘアセットもせず“丸腰”の状態で歩いていたのも相まってお会計の前に自分で髪に飾ったリボンの髪飾りに触れて、サラサラと整えられた髪をなびかせ街を歩くのはかなり気分がいい。

 帰る前にどこへ寄ろうか、と空を見上げるのだ。




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