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国立国会図書館デジタルコレクションで読める国語辞典(小型辞典)

前回は国立国会図書館デジタルコレクションで読める中型~大型の国語辞典を取り上げましたが、今回はよりコンパクトな「小型辞典」に注目します。本記事は2部構成で、第1部では三省堂、小学館、旺文社など、主要出版社の小型辞典を、第2部ではその他の出版社の小型辞典をそれぞれご紹介します。

凡例1
・辞書出版を手掛ける主な出版社を50音順にリストアップ
旺文社、角川書店、講談社、三省堂、小学館、大修館書店、中教出版
・各出版社から出された国語辞典は改版も全て記載
・以下の出版社から出ている小型辞典については国立国会図書館デジタルコレクションでは閲覧不可のため掲載していない。
岩波書店、学習研究社、集英社、新潮社、大日本図書、福武書店、明治書院
・学習辞書、実用辞書については別の記事でまとめる予定のため除外。
・各項目の「編者」と「出版社」には、国立国会図書館デジタルコレクションの検索結果のリンクを付している。

凡例2
・各辞書では本稿執筆者が好む怪奇小説「手招く美女(オリヴァー・オニオンズ)」を引き合いとして「まねく」「美しい」「女」の単語を引き比べている。各語を選んだ理由は以下のとおり。
「まねく」
「近くに来るようにうながす」という直接的な意味と、「身近にもたらす」という比喩的な意味を持つ多義語であり、語義の細分化の程度や用例の特徴を確認できる。
「美しい」
抽象的な概念を表す単語のため、語釈の差異や文量の多寡を確認できる。また、類語比較(「きれい」「きよら」との違い)や語誌(「小さくて親しみやすい」という原義について触れているか)の有無を確認できる。
「女」
単なる言い換えとしていないか、社会的・生物学的な意味をどのように表現しているか、「女」に紐づく慣用句や連語、派生語をどの程度まで網羅しているかを確認できる。

・引き比べに用いた画像について、複数の版がある場合は最新の版から取った。


主要出版社の小型辞典

旺文社

旺文社詳解国語辞典

収録語数:4万4千
出版年:1985年
編者:山口明穂秋本守英
出版社:旺文社
概観:単なる言い換えを避け、類語とのニュアンスの違いを明確にした詳しい語釈が特長。全ての語義に必ず用例を示しているのは国語辞典では唯一。

『辞典語辞典』を参照

角川書店

角川国語辞典 改訂版

収録語数:7万5千(1969年新版の収録語数。改訂版の語数?)
出版年:1961年
編者:武田祐吉久松潜一
出版社:角川書店
概観:旧字体を用いた書き方、アクセントを併記している。古語も採録。

『辞典語辞典』を参照

講談社

講談社国語辞典(初版)1966年
講談社国語辞典(改訂増補版)1972年
講談社国語辞典(大活字本)1982年内容および文字組みは改訂増補版と同様。

収録語数:初版7万2千、改訂増補版7万2千
出版年:初版1966年、改訂増補版1972年
編者:久松潜一林大阪倉篤義桐原徳重
出版社:講談社
概観:用字用語辞典としての役割を重視しており、フォントや上付き記号、括弧の種類を使い分け、事細かに表記の違いを示している。

『辞典語辞典』を参照
古語と現代語に分けて立項している。

三省堂

三省堂国語辞典(1961年初版第2刷)
三省堂国語辞典(1968年新装版第1刷)※付録の項目数の追加のみ。
三省堂国語辞典(1974年第二版第1刷)※見出し語や用例、対義語の追記など初版から大幅に増補改訂されている。
三省堂国語辞典(1982年第三版第1刷) ※第二版から更に増補改訂。通常版机上版革装版の三種類を閲覧できるが、内容は全く変わらない。

収録語数:初版5万7千、第二版6万2千、第三版6万5千
出版年:初版1961年、第二版1974年、第三版1982年
編者:見坊豪紀
出版社:三省堂
概観:小学生上級~中学生向けと一般向けの国語辞典を兼ねる路線で編まれている。語釈は「ことばの写生」と呼ばれる方法により、読んで分かりやすいことを目指しており、漢字や難しい語は少ない。

新明解国語辞典 通常版革装版特装版の三種類を閲覧できるが、内容は全く変わらない。
新明解国語辞典 第2版 通常版机上版革装版の三種類を閲覧できるが、内容は全く変わらない。
新明解国語辞典 第3版 通常版小型版机上版革装版の四種類を閲覧できるが、内容は全く変わらない。

収録語数:初版69,885、第二版69,885、第三版約7万2千
出版年:初版1972年、第二版1974年、第三版1981年
編者:山田忠雄
出版社:三省堂
概観:編者の山田忠雄が言い換えで済ませる語釈や同語反復に強い不満を抱いていたことから、意味の本質を追求する語釈を展開。辞書を愛好する界隈では本書のユニークな語釈が常に話題となっている。

『辞典語辞典』を参照

小学館

新解国語辞典

収録語数:7万
出版年:1960年
編者:金田一京助、佐伯梅友
出版社:小学館
概観:新選国語辞典(1959年)を中高生向けの学習用国語辞典として新たに編纂しなおしたもの。基本的な古語も採録している。

『辞典語辞典』を参照。

大修館書店

新国語辞典

収録語数:約5万6千
出版年:1963年
編者:石井庄司小西甚一
出版社:大修館書店
概観:中高生から一般向け。中学・高校の教科書に掲載されている語を基礎に、新聞・雑誌などからも語彙を収集して見出し語数のおおよそを決定。その後の語義の執筆や用例の選定も含め、10年もの歳月をかけて編纂された。語釈は旧来の辞書的な説明を避け、分かりやすいことばを用いることに心を砕いたとある。改訂されることなく忘れ去られた辞書だが、丁寧な語釈や充実した用例は得難く、後述の『例解国語辞典』と比肩し得る一冊である。

中教出版

例解国語辞典

収録語数:約4万
出版年:1956年
編者:時枝誠記
出版社:中教出版
概観:単なる言い換えに留まらない分析的な語釈が辞書を好む界隈から高く評価されている。ほとんどの語に用例を添えていることも特長の一つ。

その他出版社の小型辞典

新編国語辞典 1951 国民図書刊行会 久松潜一編
新編国語辞典 再版 1952 国民図書刊行会 久松潜一編
新編国語辞典 3版 1952 国民図書刊行会 久松潜一編

現代国語辞典 1951 信学社 小林国雄編
現代国語辞典 新版 1961 河出書房新社 小林国雄編

当用国語辞典 1954 葛城書房 安藤正次、芹野一栄編

標準国語辞典 1955 信学社 小林国雄編

標準新総合国語辞典 1957 和光書房 永山勇編

国語辞典 1957 宝文館 土岐善麿編

総合国語辞典 1958 山田書院 麻生磯次、市古貞次、松田武夫編

国語辞典 : 現代語・古語 1962 昇竜堂出版 西下経一編

言海国語辞典 1962 言海社 中山久四郎編
言海国語辞典 1963 言海社 中山久四郎編 ※1962年版と刊行年が異なるが、内容は全く同じ。序文と奥付を読んでも経緯は記されていない。
必修国語辞典 1965 言海社 中山久四郎編 ※『言海国語辞典』とほぼ同じ内容と思われるが、収録語数が4万2千から3万4千に減っている。例によって、タイトル改変や語数削減の経緯は全く書かれていない。

新解国語辞典 1962 金園社 塩田良平編
金園社国語辞典 1963 金園社 塩田良平編 ※タイトルと前扉のイラストが異なるが、その他は全く同じ。
精解国語辞典 1966 金園社 栗原圭介、新垣淑明編 ※タイトルの改変、編者の変更、語義排列を五十音順にするなど細かな変更はあるが『新解国語辞典』および『金園社国語辞典』と中身はほとんど変わらない。

清水国語辞典 1969 清水書院 山岸徳平編
清水国語辞典 修訂版 1975 清水書院 山岸徳平編

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