最近読んだ本の話(20240912)
ということで、今年は雨と酷暑が交互に続いています。アッツイ! タブレット食べて熱中症に気をつけて!
最近まで俳句を作ったり、小説を書いたりしていましたが、なかなか形にならないので、溜まっていた書評を片付けていくことにしました。
また今更ですが、noteと平行して紙の日記もつけています。
紙ベースだと「数ヶ月前に何があったかな」と気になったら簡単に確認できるのでオススメです。でも物理的にスペースを取ってしまいがちなのが難点。
クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~
五月雨きょうすけ『クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~』電撃文庫、2023
猫人族、小人族、天使族、すべての種族を巻き込んだ全世界規模の戦争が集結した後、実験都市・ミイスが作られた。ミイスは各種族が混じりながら平和に暮らす、人口が十万人をゆうに超える大都市である。田舎からミイスへ引っ越してきた〈猫人族〉のアーニャ。結婚相談所で勤めることになった彼女のもとにやってくる、ドタバタな依頼の数々。
ガッツリとしたファンタジーコメディで、なかなか読ませます。読者には馴染みのドワーフやエルフからバグズ、ダービー、ハーフリングなど、それぞれ十七種族も登場するのに物語がゴチャゴチャにならず、適度な匙加減で動いています。
文章や単語の配置もカチッとしており、常にパズルのピースがうまくはまる感覚があって面白いです。
主人公のアーニャも読んでいて好きになれるキャラクター。性格もとっつきやすい。結婚相談所の仕事は山あり谷あり様々であり、クセつよな人々が集まってくるので、あんまり直視したくない現実がモロに見えてくることもありますが、しかしアーニャがカラッとした性格をしているので、あまり読者を引かせないで物語に没入させてくれます。ほかにも美人所長のドナ、ダチのメーヴェなど、キャラクターも楽しい。
ただ、途中で誰かが絶叫するとフォントがデカくなるので、その辺りは賛否両論分かれそうです(私はやや苦手)。
短編がいくつも合わさって長編になる構成です。「追放」や「BL」、昨今の時事テーマもうまく取り上げており、オチもきちんとついており面白い。
「結婚相談所」という作品の根底を流れる問題意識も新鮮です。少子高齢化、晩婚化、マッチングアプリが叫ばれて久しい現代ですが、時事ネタを意識しながら読むと、更に新しい見方ができます。
著者の五月雨きょうすけさんはアーススター・ノベルでも本を出版されており、スゴい……!
ウは宇宙ヤバイのウ![新版]
宮澤伊織『ウは宇宙ヤバイのウ![新版]』ハヤカワ文庫、2023
久遠空々梨は登校中の女子高生である。横には従姉妹のヌル香。そこへ隕石が落ちてきて世界が滅亡する。ヌル香が時間を巻き戻したのでどうにか二人は生存したのだが、その過程で空々梨の正体は星間諜報組織〈偵察局〉のエージェント、クー・クプリスであり、ついでにヌル香の正体は偵察船〈ヌルポイント〉であることがわかった。幼馴染の加羅玉ちよを巻き込み、二人は時間と宇宙を駆け巡る冒険に挑む。迫る隕石の再墜落、襲い来る異星人の艦隊、宇宙がヤバイ活劇である。
すごい設定から始まるギャグですが、SFの土台がしっかりしているので面白いです。数ページに一回くらいギャグも仕込まれているので、笑いながら本格SFを読めます。旧版では主人公の性別が男性でしたが、新版では女性に変更されています。
重たくないギャグ口調で話が進むので、読んでいて楽しいし、スイスイと読める文章にも手軽さがあって良いです。夜中にがっつり読んでもいいし、スキマ時間にちょっと読むのもOK。
旧版の絵もモチっとしていて良いのですが(amazon調べ)、新版だと令和的なスタイリッシュさが追加されているというか、熊ってこんな怖いの!? と、絵柄にパワーがあり、どちらにも良さがあります。
途中、松明を持つ熊が登場する辺りが異様に迫力がある。ドルガハー! バオオオオーッ! とか叫び声も強く、真似したくなります。
他にも斥力ガントレットや現実テクスチャなど、登場するガジェットも面白い。他のSFをリスペクトしたガジェットも多いのですが、新鮮に楽しめました。あと、ウグルク人の情報テクノロジーの情報は文章のパワーがあり、単純に笑ってしまいます。
色んな作品のオマージュ、パロディが含まれており、巻末には参考文献リストが書かれているのでありがたい。
なお私は参考文献の中で、吉村昭『羆嵐』しか読んでいませんでした。とりあえずこの本を読んで『ソラリス』を買ってきました(たぶん『ソラリス』に洲谷洲わふれむはいないでしょうけど)。
およそ300頁ほどで、そんなに長くない作品ですが、登場人物や展開にメリハリがあります。百合成分が多いのですが、百合のパターンも多様なので、内容ぎっちぎちであり大変嬉しい。
サクッと読めて良い文章のSF。面白かったです。
忍ばないとヤバい!
藤川恵蔵『忍ばないとヤバい!』MF文庫J、2023
日本には忍者がいる。忍者は犯罪者を狩ることで治安を守っている。世間から秘匿された治安維持組織『半蔵門』に属する影山忍は高校生であり、超忍となるためのトレーニングを続けている。ある日、転校生として白石雪という美少女が転校してくるが、彼女は忍者であり、抜け忍であり、ついでに忍の家に泊めてくれるよう頼んできた。
最初は読んでいて、はー、現代日本を守るとかノリが平成ですか??? と考えていましたが、読んでいくと面白くなります。
主人公の忍が最初から「忍者ってなんなんですか」とか「超忍になったとして何が良いんですか」など、読者が気になっているところをズバズバ突っ込んでくれるので、疑問点を初めのうちに解決できてストレスフリーになります。まあ忍や師匠(ネコ)もギャグ寄りのキャラクターなので、簡単にスルーされてしまうんですが……
世界観も絶妙にユルく、ギャグが多い世界です。女性にモテることを至上とする主人公、子離れできない師匠、忍者なのに美少女として目立ちまくっている雪など、楽しめるキャラクターが多いです。
笑えるセリフも多く、
「今時のラノベ主人公は唐突にピアノを弾き始めるぞ」
だったり、
「俺は不特定多数の異性に愛されたいんじゃなくて、たった一人の異性と真実の愛を追求したいんですよ」
であるとか、
「暗示の術で料金をタダにしたの」
など、やべえ……やべえよ……というワードが多い。あと、同級生の深山茜(主人公にいきなり銃を撃ってくる)も好きです。
忍の第一印象は鈍感系主人公でしたが、読んでいくうちに、だんだん若年版の高倉健になっていきました。
一番印象的なのが師匠のマオでした。ぶっちゃけネコ……ネコなのですが、メキメキ上達する弟子をそれでも手元に置いておきたいので、「自分はまだまだ修行が足りませんと言え!」と無理やり言わせるくだりが面白い。
師匠が弟子にダダ甘なのに、忍がまったくマオの気持ちに気づいておらず、「なんか嫌ってるっぽいし実力不足と評されてるな……」と、恋愛とは違う方向性でトンチキに考えており、ニヤニヤしてしまいます。
本部である半蔵門の描写が出てこないのですが、ホワイトハッカーの育成をしてたり、イーサン・ハントが使うような装備を作ってるのかなと考えると面白い。想像が広がります。キングスマンみたいなスーツとか袴も作ってほしい。
最終決戦も面白く、ぜひ続きが読みたい作品です。
今回は以上です。
また、(たぶん)逆噴射小説大賞も今年は開催されるので、小説の研鑽もしていきたいですね! どんどん小説やエッセイも書いていかないと、腕が落ちてしまっていけません。
《終わり》