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Go read it(20220726)

 日記のタイトルには0502とか0622みたいに数字で日付を入れている、今回は何度もタイトルを入れ替えるほど長く書いてました。時間が過ぎ……小説を書き……俳句を詠み……エルデンリングを起動する……しかしこれ以上noteが滞るのは良くないので一大決心して書きました。もうちょっと構えていない感じでやりたいですね。

 今日は読んだ本の感想を述べたいと思います。

ぶんころり『田中 年齢イコール彼女いない歴の魔法使い1』マイクロマガジン社、2015


 元々は『小説家になろう』で連載された作品です。完結済み。書籍化されて六年ほど経ちますが、書籍版では独自路線で連載中です。十一巻から独自路線に入り、いまは十三巻まで続刊です。
 私は異世界転生ジャンルについて熱心なファンではないのですが、この作品は読み始めてから急に八時間ぐらいかけて読み耽ってしまい、次の日を台無しにしました。
 とにかく主人公・田中のキャラクター性が面白い。何がすごいかって全く心情や目的といった方向性がブレません。基本的な目的が、田中は(ちょっと外見がブサメンなので)異世界でモテモテになりたいのですが、これがブレない。物語ってAに到達するとすぐにBに行ったり、ちょっと飛ばしてCに行ったり、急にZとかに動くこともあるんですが、『田中』では田中があらゆる手を尽くして目的を達成しようとするにも関わらず、作品の構造上目的は達成することができません。
 ブサメンなのでモテモテどころか罵詈雑言を浴びたりけなされたりするし、対策のために手を打ったら別な問題が発生してきて更に別なクエストをこなす羽目になるし、他のアクが濃いキャラクターたちがどんどん出てきます。よりいっそうこじれていく展開が、そんじょそこらの作品をなぎ倒すほどの強いリアリティを持って迫ってきます。他の作品が麦畑だとすると、これは突如として麦畑の中心地に発生した竜巻みたいな感じ。
 そして下ネタが多いです。「たぶんこの作品をアニメ化とかは無理だろうな」「やるとしたらOVAでそうとうニッチな方向性になるな」というぐらい様々な方向性の下ネタが出てきます。淡々とした文体なのに単語の迫力も凄く、田中は自分の顔を指して「ブサメン」「醤油顔」と語ってますが本当に説得力がある。
 文体も丁寧で、5W1Hがハッキリしている。圧縮した文章や展開は用いずに、あくまで丁寧。良い意味でスルスルとお茶漬けのように読めるので、ハレンチな内容とかお下劣、グロ描写が出てきてもすんなり受け入れられます。転生前はサラリーマン(三十代後半)だったので、社畜特有のジレンマやブラック現場もモリモリ出てきますが、これもスルスルと読めます。体面、本当に大事。オススメです。


https://gcnovels.jp/tanaka/


川上稔『境界線上のホライゾンⅠ 上・下』電撃文庫、2008


 以前に購入していたのですが、「薄い本とかギャルゲーがちょくちょく出てくる、今のライトなノベルの文脈って、この作品辺りが原点なのでは?」と考えて読み始めました。厚い! そして用語も多い!
 あらすじ――重奏統合争乱という災い(ニンジャスレイヤーでいうY2Kみたいなやつ)で軽く滅んだ日本。その上空を母艦・武蔵に乗り合いながら日本人は生活しているのだが、イギリスやフランスなどの各国は着々と武蔵を侵略しようと伺っている。武蔵では、各国の王と戦国大名が教導院(高校みたいなところ)でともに生活しており、だいたいハイスクールの生活リズムで物事が進んでいく。日本の地域も半分ぐらい各国に乗っ取られており、羽柴秀吉の辺りは神聖ローマ帝国になったし、下関地域は大内・大友・三征西班牙(トレス・エスパニア)になった。織田に至ってはP.A.ODAになって全貌すらわかっていない。たぶん明智光秀がカナダを征服しようとした辺りと似ている気がする。
 一回滅んだせいで歴史とか終わってしまったので、歴史を再現するために日本は中世の戦国時代ぐらいから歴史をやり直しているのだが、平行してイギリスやフランスは現代技術を持ちつつも、三十年戦争時代から歴史を再スタートし、世界史を有利に進めるために日本を舞台として争う構えを見せる。そして各国入り乱れての争いが始まる――
 ざっくり書くと「一回滅んだ日本を舞台に日本人とヨーロッパ各国人が戦争を繰り広げてメッチャ戦ったり貿易交渉したりラブコメしている」という内容です。いきなり用語や世界観すべてを理解しようとしてもパンクするので、完全な理解は後回しにして中身を読んだほうが良いです。
 中身は、学園生活、恋愛、ギャルゲー! 薄い本! たくさん登場します。大河ドラマかってくらい人物が出てくる。そしてものすごく広い世界観。日本史と並行して世界史の質量がぶつかってくる。あと巨大ロボも出る。
 Ⅰの上と下では日本編というか、空飛ぶ武蔵がいかにして日本各地を回るようになるかの準備がされていく過程が語られます。最初の辺りなのに、終盤では最終回みたいな演出がされていくところがニクイ演出。
 Ⅱではイギリス・スペイン編が繰り広げられます。面白そう。


今回は以上です。
《終わり》




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復路鵜
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