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『モンテーニュ逍遙』を読みながら

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『モンテーニュ逍遙』の読書メモ、勝手な注釈。本書を読んでくださるみなさまに感謝を込めて。『随想録』へのいざない。
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2024年7月の記事一覧

『モンテーニュ逍遙』第3章

第三章 《よろづの物の父母なる天地》 と《我らの母なる自然》──モンテーニュの自然と老荘の自然── (pp.88-124) 「我らの母なる自然(ノトル・メール・ナテュール) nostre mere nature (notre mère nature)」の表現は、『随想録』の各所に散見。第1巻第20章、第26章、第27章、第31章など。 自然思想の観点から、老荘との比較が始まる。この比較は次章以降にも続く。 111頁〜119頁に『随想録』第3巻第12章「人相について」か

『モンテーニュ逍遙』第2章

第二章 《天地ハ我ト並ビ生ジ万物ハ我ト一タリ》 ──モンテーニュとキリスト教── (pp.60-87) モンテーニュのキリスト教信仰 モンテーニュの論証の仕方 『随想録』第2巻第1章の位置づけ (本章から) モンテーニュは《le monde n'est qu'une branloire pérenne》と言って、宇宙を生々流転する全体としてとらえている。(p.64) 《le monde n'est qu'une branloire pérenne》… 「世界は永

『モンテーニュ逍遙』第1章

第一章 《ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず》 (pp.41-59) キリスト教の自然観、ルネサンス時代のユマニストたちにみられた自然観 モンテーニュの自然観、モンテーニュの根本思想 (補足)アルベール・カミュのキリスト教観との対比 (本章から) 物心ついてから最後の日に至るまで一貫して変わらなかったという、彼の根本思想とは、一体どのようなものであったのか。それは理解しがたい(mésconnaisable) ものでも捕捉し難い(insaisissabl

『モンテーニュ随想録』の構成

『モンテーニュ逍遙』を読んでくださるみなさんへ モンテーニュの『随想録(エッセー)』は、全3巻全107章で成り立っています(第1巻は57章、第2巻は37章、第3巻は13章で構成)。 たくさんの章がありますが、それぞれの長さはまちまちで、1〜2頁だけのもあれば、第2巻第12章のように200頁近くにも及ぶ雄編もあります。 一つ一つの章が「エッセー」(essai) という〈試み〉であり、これらが寄り集まって『エッセー』(Les Essais) という書物になっている、と捉えても良

『モンテーニュ逍遙』序章

序章《それは彼であったから、それは私であったから》か ──どうして私はモンテーニュの友となったか── (pp.15-39) 章題は『随想録』のなかの有名な一節から。モンテーニュが若い頃に交友したエティエンヌ・ラ・ボエシとの関係を述べたこの一文を借りながら(あるいは自身に置き換えて)、本章では著者がなぜモンテーニュを友としてきたのかを語っている。とはいえ、本章では私事をとりとめもなく書いているわけではなく、また、なぜ東洋思想との比較にもとづいて論じようとしているのかをただ説

『モンテーニュ逍遙』冒頭の引用

逍遙学派はすべての学派の中で最も社交的であるが... 『随想録』第2巻第17章「自惚れについて」からの引用。 逍遥学派(ペリパトス派)école péripatéticienne ... アリストテレスが創設した古代ギリシアの哲学者の一派。 回廊(ペリパトス)を散歩(逍遥)しながら哲学論議を交わしたことからこの名があるらしい。 今、子ハ、大樹ヲ有シテ其ノ用ナキヲ患ウ。… 彷徨乎トシテ其ノ側ニ無為ニシ、逍遙乎トシテ其ノ下に寝臥セザル。… 『荘子 内篇』「逍遥遊篇第一」か

「モンテーニュって、だれ?」

『モンテーニュ逍遙』を読んでくださるみなさんへ ミシェル・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne, 1533-1592 16世紀フランス、ルネサンスの時代に『随想録』(Les Essais, エセー、エッセー)という作品を書いた人。 (キーワード) ルネサンス Renaissance … 「14〜16世紀にイタリアを中心に西欧で興った古典古代の文化を復興しようとする機運に端を発した、社会のさまざまな変化」(1) で、フランスでは16世

『モンテーニュ逍遙』〜『随想録』へのいざない〜

祖父関根秀雄の旧著『モンテーニュ逍遙』が、新版として刊行されました。(2024年7月2日) 関根秀雄著『新版 モンテーニュ逍遙』(国書刊行会) モンテーニュ Michel de Montaigne, 1533-1592 は16世紀フランスに生きた人で、『随想録』(エセー、エッセー)という作品を残しています。「エセー」 (essai) は元来、何かを試すことを意味するフランス語ですが、この作品をきっかけに「エッセイ」(随筆)という大きな文学ジャンルが発展したことは、ご存じの