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欧州: EUバッテリー規制

最近改定・採択されたEUバッテリー規制について概要を整理した。バッテリー製造に使用される重要鉱物資源の供給を、一部の国に依存していることを鑑み、そこからの脱却を狙った法規構成になっているが、特にリサイクル済み原材料の使用義務は、それだけの量が市場でAvailableになるかがカギ。

記事要約

  • EVバッテリーとかも作りっぱなし、廃棄しっぱなしではいけない、しっかり使用済みバッテリーを回収し、その中の原材料を再利用する、そのためにはバッテリーの設計・生産プロセスから考えていこうという流れ。

  • その背景には、原材料供給の中国らへの過度な依存がある。

  • 新たに制定されたバッテリー規制はその製品設計から生産プロセス、再利用、リサイクルに至るライフサイクル全体を規定するもの。特にリサイクル原材料がそれだけ市場に出回るかが不透明。




1. 循環型経済への動き

EUグリーンディールが掲げる脱炭素、特に道路交通部門のそれにはEVシフトが不可欠(100%か否かは別として)、そのEVのバッテリー(正極活性物質として)にはコバルトリチウムニッケルなどの各種重要鉱物が使用されるわけだが、その原材料をどう確保するかがEUの課題。

EVバッテリーの構造
EVバッテリーの構造(出典:岩谷産業株式会社

別記事で紹介したが、中国を筆頭とした一部の国がこれら重要鉱物資源の供給源を握ってしまっている。

EUも、サーキュラエコノミーの一環で鉱物資源の回収・リサイクルを推進してきたが一向に効果は現れず、遅ればせながら重要原材料法/CRMAなる法規を2023年に策定した。2030年ベンチマークなどを設定。

この流れで、EVバッテリーも作りっぱなし、廃棄しっぱなしではいけない、しっかり使用済みバッテリーを回収し、その中の原材料を再利用する、そのためにはバッテリーの設計・生産プロセスから考えていこうということになり、バッテリー規則制定の運気が盛り上がったのが2020年頃の話。

2. EUバッテリー規則概要

2020 年12 月、欧州グリーンディールの一環として、欧州委員会がバッテリー規則案を提示。2006年に発行された既存のバッテリー指令を大幅改定する内容で、EVバッテリーや産業用バッテリーなどあらゆる種類のバッテリーが対象となり、その製品設計から生産プロセス、再利用、リサイクルに至るライフサイクル全体を規定。主なものは以下の通り。

  • カーボン・フットプリント/CFP申告義務:製造者や製造工場の情報、ライフサイクルの各段階でのCO2排出、第三者検証機関による証明などを含む(2024年7月1日から)

  • CFP値の上限値導入(2027年7月1日から)

  • 製品の性能分類/performance class表示義務:ライフサイクル全体から見た、各種対象製品のCO2負荷度やら耐久性の認識を容易にするため(2026年1月1日から)

  • 特定原材料の使用量開示義務:コバルトや鉛、リチウム、ニッケルを含むEVバッテリー、産業用バッテリー、自動車蓄電池が対象(2027年1月1日から)

  • 原材料別の再資源化率(Material Recovery rate)の導入:リチウムについて2025年までに35%、2030年までに70%。

  • リサイクル済み原材料の最低使用割合(2030年1月1日から)

  • 他、使用済みバッテリーの回収義務など

欧州委員会による法案公表後、コデシに則り欧州議会&EU理事会で修正案を議論、そして3者協議/ Trilogue の末、2022年末に暫定合意、2023年7月に官報発行された。

※コデシ含め、欧州連合の意思決定過程概要はこちら

これら政策決定過程で、欧州委員会提案から強化された要求事項あり。

  • 廃棄された携帯型バッテリーの回収率:2027年末までに63%、2030年末までに73%の達成が製造者またはその責任者に求められる

  • 原材料別の再資源化率:リチウムの再資源化率の目標値を2027年までに50%、2031年までに80%に設定

  • リサイクル済み原材料の最低使用割合:コバルト16%、鉛85%、リチウム・ニッケル各6%(施行時?)

  • バッテリーパスポート:産業用バッテリー(2kw<)、EVバッテリーなどが対象、電子上の記録を介してバッテリーの性能や耐久性、CFP情報アクセスを確保

  • 他、責任ある原材料調達などサプライチェーンに対するデューディリジェンスの義務化や、QRコード設置、使用済みバッテリーの回収(ユーザーリクエストなど)

各種義務の適用開始時期は異なる。詳細は法文要参照。

3. コメント

かなり踏み込んだ形となったバッテリー規制。対象となる在欧州企業や、欧州市場に製品を輸出する企業は対応を求められるわけだが、かなり大変。特にリサイクル済み原材料とか、それだけの原材料が市場でAvailableならいいのだろうが、そうでないと需給が崩れ、非常にコスト高となりそう。

そしてこのバッテリー規制が中国産バッテリー&EVの域内輸入にどのような影響を及ぼすのが要注視。


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