脱炭素と省エネ
1月16日、国際エネルギー機関/IEA(於:パリ)が、脱炭素/ネットゼロにおける省エネの役割についてウェビナー開催。その概要とそのインプリケーションをサクッとまとめてみた。
記事要約
同じ生活水準を保ちつつもエネルギー使用量を抑える省エネ取組というのは、2050年ネットゼロ/脱炭素を達成するうえで非常に重要。
現在の省エネ改善では、COP28での合意(省エネ改善2倍 by 2030年)は厳しい。だから政策をもっと頑張ろう。がIEAのメッセージ。
今日のウェビナーはあくまで政府関係者に向け。IEAが主張する政策パッケージ・アプローチの説明がメインだった
1. そもそも省エネとは?
日常生活で使用している電気やガス、石油などのエネルギー資源を、より効率的に使おうというのが省エネ。例えば、電球をLEDに変える、古いエアコンを高性能エアコンに買い替える、古い車を新しい車に変えかえる、等。
省エネすると、生活水準は変わらないがエネルギー使用が減る。結果、一般家庭としても出費が減って助かるし、国としても国全体のエネルギー使用が減りエネルギー安定供給が改善する、そして企業としても無駄な出費が減りリーンな経営体制につながる。そして何よりも脱炭素に貢献。省エネのいいところはまだまだあって、以下の図がそれを包括的にカバー。国際機関の省エネ・エキスパート間ではよくつかわれる図。
ということで誰もが大好きな省エネ。エネルギー資源に乏しい日本は、オイルショック以降鬼のような努力で省エネ大国に。国際機関でも省エネといえばジャパンだよねとなるくらい。
2. 省エネの役割 by IEA
①IEA省エネ年次報告書レビュー
なお、今回のウェビナーの内容は、IEAが毎年公表している年次報告書「Energy Efficiency 2023」が元ネタなので、さらっとレビュー。
まず、省エネに関する世界的な潮流だが、省エネ改善率は少し鈍化している(細かい話だが、IEAは省エネ改善をglobal primary energy intensityを使用)。2021年に2%近く省エネ改善が見られたが、2023年は1%弱どまり。なお、2050ネットゼロに達するには、2022-30の省エネ改善率は最低でも4%弱は必要とのこと。厳しい。
世界全体でみると鈍化している&省エネ改善4%なんて無理と思うかもしれないが、国別にみると、過去10年間で少なくとも一年は省エネ改善4%突破した国が世界の80%以上とのこと。
2023年はとくに欧州勢に省エネ改善が見られた。主な要因はエネルギー高(エネルギー使用を控える/抑えるようになる)&経済停滞(そもそもエネルギーを使わなくなる)。
②ウェビナー概要
ウェビナーの題名は「Doubling global progress on energy efficiency」。COP28で合意に至った「省エネ改善2倍 by 2030」を達成する上での現状(上述)と必要な政策に関して説明。
規制/Regulations(例:建物省エネ基準など)、情報/Information(例:エネルギーラベル等)、インセンティブ(例:既存物件リフォーム時の補助金)の3つの柱から構成される政策パッケージが必要とのこと。
さらに、Digitalisationを通じた発電-グリッド-産業-家庭などの総体としてエネルギー使用を最適化。
元ネタは以下。
3. 思ったこと
日本を含め、世界のエネルギー関係者から一目置かれる国際エネルギー機関/IEA。COP28で合意に至ったエネルギー関連の目標値設定にもIEAが一役をかっている(なお、COPについては下記参照)。
今日のウェビナーの焦点は、あくまで政府関係者向け、彼らに対しどういった政策を計画・実施すべきかという内容だった。政策パッケージの考え方などはずいぶん前からIEAが主張していることで、あまり目新しいものは見当たらなかった。しかし、やはりIEAといえばデータ分析。省エネ改善率の傾向などは非常に興味深い。
なおIEAは、建物や運輸、産業といった個別セクターや電力セクター等を含めたエネルギー・システム全体で、脱炭素化が不可欠な要素/Componentsを細かく仕分けると、各種再エネ導入も含め50個以上になる算定している。そしてそれぞれの進捗をまとめているのがTracking Clean Energy Progress。省エネ含めほぼ全部黄色か赤。
省エネについては特に先進各国でもうかなり取り組みが進んでいて、これ以上は絞ったぞうきんをさらに絞るようなものと関連業界では言われたりする。トップランナー制度とかがそうで、これ以上省エネとなると、技術を変えないといけなくなったりする(内燃機関からEV、ガスボイラーからヒートポンプなど)が、そうなると価格が問題。そこを政策で対策できるかが課題になる。
久しぶりにIEAウェビナーを見たが、課長以外知っている人が一人もいなかった。最長5年で出ていかないといけないIEA、昔の同僚は既に旅立っていったようだ。
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