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蟻とハリネズミ、東雲に。2

孤独ぶって嘆くのは簡単なことだけど
それを力に変えるのは至難の技だ
どこまでも無様でカッコ悪いのは自分が一番知ってる
それでも悲劇のヒロインなんかじゃなくて
自分の人生の主人公になりたい
ーー不可思議/wonderboy 『火の鳥』

閑話休題。

とりあえず、蟻やハリネズミが人間の言葉を話すことについては気にしたら負けだということがわかった。
「理解遅くね?」
「まぁそういう人もいるかもだけどね」
「時間って有限なんだけどなぁ」
蟻たちがうるさいし、とりあえず「話す」ことができるということに関しては突っ込んではいけないようだということで落ち着いた。

「それで、何にざわざわしてんの?」
不意に一匹の蟻が訊いてきた。
「考えてるんだよ」
ぶっきらぼうに答えてみた。別に嘘じゃない。
ただ、今の自分について、
ただ、これから先のことについて、
なんとなく、考えてみたかっただけだ。
その言葉に、へえ、と蟻が興味もなさそうに相槌を打つ。

「ーーそれってさ、本当に考えたいの?」
蟻の言葉にビクッとハリネズミが身を震わせた。

「は? 本当に考えたいから考えてるんじゃん」
ムッとして思わず語気が強まった。昔からこういう「本当に〜か?」という問いが嫌いだ。
「ふーん」
「そういう感じかぁ」
「別に『今は』それでいいんじゃない」
「でもなぁ」
言いたい放題の蟻たち。
めちゃめちぇムカつく。

「……自分たちの方が、知ってるように聴こえてるんでしょ?」
ハリネズミがボソッと呟いた。
「そうそう、そうなんだよ! って、……え?」
すごいもやもやが心の中に広がっていくのを感じた。
自分のなかを透かして見られているような気持ち悪さと、
その気持ち悪さを感じながらもどこか振り切れない自分。

動物と虫のくせに。
湧き上がる不快感と焦りにも似た苛立ち。

訪問者、「夜明けに」から

「考えるというよりも、逃げたい」
「むしろ、逃げたいということを意識することすらも逃げたい」
独り言のように、語り出す蟻たち。

「うるさい!」

力任せに足裏の砂を払いながら部屋に上がった。
こんなやつらを視界に入れておくのはもう耐えられない、苛立ちが増すだけだ。
夢なら早く覚めてくれ。
早く日常に戻りたい。

奥の部屋へ向かおうとして、
そこで気づいた。
背後の庭に、何かいる気配。
それは視線を感じる、みたいなうまいこと言語化できない感覚だった。

「今のお前にはおあつらえ向きだな」
「確かに」
「目には目を、歯には歯を」

ごちゃごちゃ言ってる蟻を無視して振り返った。
庭には一人の少年が立っていた。
一見普通の少年。
ただ一点だけヘンな、きになるところと言えば

左の手首からたくさんの血を流していたことだった。

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