
余白を埋める=想像力を巡らせる
「余白をつくること」
これは、作品創りでわたしが大切にしている価値観のひとつです。
この絵は、数年前にわたしが描いた絵。
所属している演劇ユニットで使用するフライヤーの一案として創作したものでした。
残念ながら、当時のフライヤーに使われたのは別の作品ですが、
色味や雰囲気が今でもとても気に入っています。
突然ですが、皆さんはこの絵を見て何を感じましたか?
何が描かれているのか、何を表現しようとしているのか……想像してみてください。
青い色彩から、海や空を想像したでしょうか?
同じ青でも、暗く深い色味の部分もあるので、深海や宇宙を想像した人もいるかもしれません。
作品を見た人自身が、こうして想像力を巡らせるまさにこの瞬間を、
わたしは「余白を埋める」と呼んでいます。
結論、この絵でわたしは「星空」を表現しました。
当時の演目は、星座や惑星をテーマとしていたのです。
抽象的な絵なので、ピンとくる人もこない人ももちろんいると思いますが、
このテーマを前提にしてもう一度絵を見てみると、少し見え方が変わるかもしれません。
最初から答えを提示されてしまうと、どうしても想像力にストッパーがかかってしまいます。何が描いてあるんだろう、どんな思いが込められてるんだろうと模索することで、あなたの想像力はどこまでも豊かに広がるのではないでしょうか。
わたしがやたら「想像力」にこだわるのには、
自分自身が表現者であることがひとつの理由だと思っています。
絵を描いたり、演劇に携わったり……。
芸術には、きっと正解も不正解もありません。
誰かに答えを求めているばかりでは、あなたの世界はそこで止まってしまう。
「何の絵ですか?」と訊かれれば、「何だと思いますか?」とわたしは答えます。
この絵に何を感じ、何が見えたのかを教えてください。
わたしもあなたに対して、想像力を巡らせたいと思います。
わたし自身も、豊かでありたいのです。
この「余白を埋める」という行為について
個人的にシンパシーを感じて止まない演劇団体があるので紹介させてください。
女優としてもご活躍されている、吉田のゆりさんが主宰をされている演劇団体「のびる」です。
のびる第五回公演「散り散り星」
作・演出 吉田のゆり 2020年3月28日(土)〜3月29日(日)
自団体では叶いませんでしたが、ちゃっかりフライヤーにわたしの絵を使っていただいています。だからご紹介するというわけではないのでご安心ください。笑
吉田さんが織りなす演劇作品は、観客が想像力をフルに働かせる余地があり、わたしにとってその余地の幅が絶妙にいい。
わたしのちっぽけで、意固地なこだわりが、
奇跡的に「散り散り星」という一作品で究極なまでに表現されていたように思います。
当時上演された生配信を3度にわたり自宅で観ました。
後日公開されたアーカイブも実は何度も繰り返し観ていますが、
何度観ても正解を見つけられずにいます。
台詞のひとつひとつ、登場人物のひとりひとりに対して、
わたしはたくさん想像力を巡らせました。
何でこの人はこんなことを言ったのかな。
どうしてこうなっちゃったのかな。
この人は間違っていたのかな。
これでよかったのかな。
深く深く考えていたら、登場人物全員がなんとも愛おしく思えてきて、
過去に観たお芝居の中でも群を抜いて大切な作品になりました。
こればかりは、内容について不躾にわたしがつらつら書き記しても味がありません。ぜひ一度のびる作品をご覧いただき、余白の海に浸ってみてほしいです。
「余白を埋める」ことは、自分を豊かにする。
今回は絵や演劇に触れてきたので少し敷居が高いように思われてしまうかもしれませんが、ちょっとした頭と心の体操だと思ってもらえるといいかも。
あなたがほんの少しだけでも、作品を楽しむことができますように。
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