胸糞?傑作?「ハウス・ジャック・ビルト」
「ダンサーインザダーク」や「ドッグヴィル」など、
胸糞映画には定評のある、ラース・フォン・トリアー監督の最新作。
「ハウス・ジャック・ビルト」
(5/5現在amazonプライムで観れます)
なんでよりによって記念すべき1本目がコレなのか…
自分でもどうかしてると思います。
あっ、先にお断りしておきますが、
まともな思考をお持ちの方は、絶対に見ないでくださいね!
120%後悔しますんで!
止めましたからねっ
そんな人様に勧められない映画の感想をなぜ書こうと思ったかというと、
見てから3か月くらい経つのに、いまだに思い出してしまうからです…
観た直後は、
「ああっくそ!酷い映画を見てしまった!!もう二度と観るか!」
と思いましたが、後になってふと、
「あれ…
すごい映画だったよな…」
と定期的に脳裏に過るのです。
そういう映画で言うと、「mother!」もそうでした。
てかまあ、あれだけインパクト強けりゃ脳裏に残るわ!
記憶に残る映画が良い映画なのか?
という疑問はさておき、
このとんでも映画「ハウス・ジャック・ビルト」の感想をば…
って、言うても数か月経っているので細かいところ忘れてるんですよね!
もう二度と観るまい…!と思ったのに、
ちょこちょこカンニングして補完しつつ、書いていきたいと思います。
◇
超気弱な殺人鬼爆誕
主人公ジャックは、本当にさえない中年のオッサン。
車が故障して立ち往生している女性にちょっぴり親切心を出したのが運の尽き。
その女性(ユマ・サーマン)は「アンタァ助けなさいよ~」となぜか上から目線で要求。
ジャックは渋々知り合いの鍛冶屋に連れて行き修理してあげるのですが、
高慢な女性は、助けてもらっておきながら尚も散々なじり続け、
「アンタって殺人鬼っぽいわよねェ、ま、そんな勇気ないでしょうけどォこの蛆虫野郎が!」
と、挑発しまくり。
(殺されたいんか?)
それでもぐっと我慢して運転を続けるジャックに、
観てる側としては、
(いや~もうやっちゃってもいいんじゃない?どうせやるんでしょうに)
と思うわけですが、結構な時間耐えます(笑)
で、結局誘導されるかのように第一の殺人を犯してしまうわけですけど、
ウン、言葉の暴力ってエグイよね!
女性の車を森に隠しーの、その死体を持っていた冷凍倉庫に隠しーので、取り合えずひと段落。
で、第二の殺人です。
(急に目覚めるやん)
中年の一人暮らしのおばちゃんの所に、
自分は警察官だの、いや、やっぱり保険の調査員だの、支離滅裂なことを言って、
なんとか押し入ることが出来たジャック。
中年おばちゃんを絞殺します。
と、思いきやまだ息があるおばちゃん。
慌ててハーブティを飲ませたり、クッションを敷いてあげたりするジャック。
いや、やったん君やがな!
起き上がろうとしたのでやっぱり首を絞めてナイフで胸を一刺しし、とどめを刺すジャック。
やっぱり殺すんかい!
もうツッコミなしでは観れません。
おばちゃんの死体をビニールでくるみ、自分の車に移動させようと外に出たところで、
(カーペットの下に血が飛び散ってるのでは…)
(電気スタンドの下に…)
(額縁の裏に…)
と、気になって何度も掃除しに帰ってしまいます。
そう、ジャックは強迫性障害だったのです(ついでに潔癖症)
出たり戻ったりしてるうちに、パトロール中の警官がやってきて万事休す。
なんとか脱出し、慌てたもんでおばちゃんの死体を車内に運ぶ間もなく、
ロープで引きずり逃走。
おばちゃんの顔面はズリズリと道路に削られしっかり道案内の赤い線を描く…
ああ、なるほど。
な~んだ、コントか。(ニッコリ)
絶体絶命!
と思っていたら、突如スコールがやってきて、血の跡を洗い流し危機を免れたジャック。
しかし、これが、気弱だったジャックに自分は神に選ばれし人間だという大いなる勘違いさせてしまうキッカケとなったのであった…
そして立派なサイコキラーに
妙に自信をつけてしまったジャックは殺人を重ね、
死体を芸術的に飾り撮影したりなんかして、
もう立派な、どこに出しても恥ずかしくないサイコキラーに。
まず冷凍倉庫でポージングさせて固めてから撮影するところが、なかなかサイコポイント高いと思います。
そんな風に殺人を重ねていくうち、強迫性障害も治まってくるのでした。
…まあここまではね。
面白い映画だなあと思ってましたよ。
ほぼコントですし。
ですが、ここからが…ね…
試写会で席を立つ人が続出!なんて書かれてましたが、ここからでしょうねえ。
このくだりだけは本当に嫌だったし、耐えられなかった。
書くのも正直いやですが、まあ…書きます。
恋人と連れ子の幼い兄弟を殺害するのですが…
鹿狩りになぞらえて兄弟をハンティングした挙句、
亡くなった状態の兄弟を添え木をして無理やり座らせてピクニック再開。
打ちひしがれる母親に、
「ジョージは食欲がないのかな?パイなら食べるかも?食わせてやれよ」
と命令します。
鬼畜!
倫理観ないんかこの監督
と、多くの人がこのシーンで思ったことでしょう。
先ほどまでの「わぁコントみたい~」という笑みがスッと消えました。
ちょっと途中リタイアしそうになりました。
子供たちもジャックを慕っていましたので、
まあまあ交際期間も長かったと思います。
衝動的でもないので、ジャックの家族の形というのは殺害して記念撮影して自分の作品とすることで、成立するのでしょうかね。
まあ、わからんよサイコキラーの心理なんてさ。
悪夢のピクニックのあと、
母親も殺し、狩った鳥と並べて記念撮影。
ちょっと反抗期だった下の子を、
針金などを駆使して、ニッコリスマイルで手を振るご機嫌boyに改造してお得意の冷凍保存コレクションします。
その後も殺害を重ね、
自信に満ち溢れたジャックは外見も見違えるほどのイケオジに。
ちょっとこのあたり「ジョーカー」を連想させます。
とはいえ変態殺人鬼なので、こちらは
恋人のおっぱいをコインケースにして愛用したり、
男たちを大勢捕まえて並べ、
「フルメタルジャケット弾で何人の頭を貫通できるかナ?」実験に取り組んだりしますが。(だからなんでそんなに腕っぷしが強いんですか?)
まあ、もうここまでくると全くかばい様もありませんが、
ジャックにも一応「捕まりたいのに誰も捕まえてくれない」的な葛藤があるようで、
かくれんぼの時はいつも見つかりやすい草むらに隠れたもんさ、haha
みたいなことを時々話す、
心の中の師匠であるヴァージ(ダンテの「神曲」に登場する古代の詩人ヴェルギリス)に語ったりします。
あ、そうそう、
ジャックにも夢がありまして、それは”理想の家を建てる事”です
殺人の傍ら、ちょっと作りかけては壊しを繰り返してきました。
ま、知らんがな!て感じですけどね!!
例の「フルメタルジャケット弾で何人の頭を打ちぬけるかナ?」実験の際、
いや、これフルメタルジャケット弾とちゃいまっせ!
え!まじかよ交換してくるわ!
偽物売りやがってこん畜生!
よしもっかい実験開始や!
あ、距離足らんわ!扉開けてもうちょい遠くから狙うわ!
みたいな、世にも奇妙なすったもんだを繰り広げているうちに、
ついに警察が押し寄せ、ジャックも年貢の納め時。
ああ…結局理想の家を建てられなかった…(いや、マジで知らんがなだよ)
打ちひしがれるジャックに
心の中で、ヴァージのおやっさんが囁きかけます。
「お前にはお前のやり方があるじゃあないか」
そっかあ!と、今までの死体の山で家をこしらえるジャック。
まあ、なんということでしょう、全然共感できないDIYです。
ひらめいた!ちゃうぞ!このサイコ野郎!
ついに警察が乗り込んできた時、
その死体でこしらえた家の中にはいると…
なぜか異世界に!!!
え?なになになに?どした急に!
みたいな視聴者の気持ちをよそに、
ダンテの「神曲」のような世界にヴァージにいざなわれ(コスプレも)
”向こう側”に渡ろうと試みますが、足を滑らせ、煮えたぎる溶岩の中に落ちていくジャックなのでした…。オワリ
ジャックとは一体なんだったのか
結局ジャックという男は、
完璧主義を装ったただのダメ人間だと思います。
何度も家を建てかけては、骨組みの段階で壊し何も成しえない。
だって、建ててしまえば、自分の才能のなさが露呈してしまうから。
理想だけを語って、やる前からアレコレ理由をつけてやらない人って、いるよね~~~!
できるよ?できますけど?
やらないだけですけど?
みたいな。
プライドだけがうず高くそびえたっているもんで、
心の中ではダンテの「神曲」の登場人物と対話したり、
自分が高尚な存在であると思いたいのでしょうな。
そんな自尊心と現実とのギャップに苦しんでいたジャックが、
唯一成しえたことが殺人なんですよね。
本当は見つけて欲しい、才能を広く知って欲しい、という気持ちがあったのかも?
ストーリー的には、有名なシリアルキラーの手口などが散りばめられていて面白かったです(あっ結局面白かったとか言っちゃってる)
殺人しまくっても捕まらないってすごい才能だと思うし、
もっと他のブレイクの仕方あったと思う。
結局否定できない面白さ
「悔しいけどやっぱこの監督天才だな」
と、思ってしまいました。
うーん、くっそー、最低だけど面白いわ…
映画は面白いけど監督の人間性疑う!みたいな感じ。
これは、邦画「告白」観たときにも感じました(笑)
見せ方や映像美、演出。
どれだけゲスな内容でも否定できない凄さ。
そして挙句エンディングの歌詞が「出て行けジャック、2度と帰ってくるな」ですしね。好き放題やってシャレでまるっとまとめた感じ。
ああ…どんなに倫理観ゼロな事を押し出しても、天才は何やってもいいし、受け入れられる場所があるんだな。
それを見せつけられたような作品でした。
なんかすんごくラース・フォン・トリアー監督が羨ましくなりましたよ。
このご時世、子供の殺害シーンって濁したり伏せたりするのが普通になってますからね。
それを有名監督がやるんだから…すごいよな…
ラース・フォン・トリアー監督の作品って、拒絶しながらも憧れてしまうところがあるんですよね。(殺害シーンをやりたいわけではないですよ!)
普通世間体を考えたり倫理観から隠すべきところを、これだけ自由にさらけ出せたら良いだろうなあ。
もっと自由に生きようかな…みたいな、作品とは別の部分の感心はありました(笑)
ちなみに…
観てる最中、胃がムカムカして、
どんなグロイ作品観ても気分悪くならないのに、
流石に倫理観のないシーン多くて堪えたんだなあ…
と、思っていたのですが、
画面酔いでした。
ドグマ95の名残なのか、序盤結構カメラが揺れます。
その気持ち悪さも相まって、ジャックの行為がさらに醜悪に感じていたのもあるかも。
もしかして、これも計算だったりして…!?
ラース・フォン・トリアー監督が鬱病だった経験を生かしたという「メランコリア」は、他の作品と毛色が違い、おすすめです。美しい!まあ、しっかりと鬱映画なんですけども!
#ネタバレ #映画感想文 #映画 #映画レビュー #note #ハウス・ジャック・ビルト #ラース・フォン・トリアー
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