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読書日記 【ハーモニー】
こんばんは。今日は少し肌寒い1日でしたね。低気圧なのか、心身調子が悪いというコメントをTwitterでも見かけたので皆様ご自愛下さい。
さて、本日はこちらも以前Twitterで見かけて読む事に決めた、『ハーモニー』という本の話だ。
以前[ユートピア〜悪のウイルス]というドラマの話を書いた。あちらは現在の話で、生物兵器として開発されたウイルスとそのワクチンがテーマで今のコロナ禍とシンクロしていると書いた。
『ハーモニー』は、絶対にそうなって欲しくないが、私達一人一人が自覚しないと確実にその方向に向かっていると思わせる、プライバシーも人権も無い世界が実現してしまった未来の話だ。
著者の伊藤 計劃さんは、34歳という若さで2009年の3月に亡くなられている。なので、この本はそれ以前に書かれたという事だが、その博識と想像力、未来を予見する力に驚かせられる。『ハーモニー』は、英語版も出されフィリップ・K・ディック賞も受賞している。フィリップ・K・ディック氏はSFロマン小説の神様の様な人で、私も大好きな映画『ブレード・ランナー』も彼の小説が元になっている。
近未来が舞台の『ハーモニー』では、アメリカ国内で民族対立がエスカレートし、大災禍という虐殺が起きたことが前提だ。そして、その影響が各国に及び核弾頭を使ったテロも起きて全世界滅亡の危機に陥る。
その反動で、各国は独立したものでは無く、世界を一つの政府(本の中では生府と呼ばれる)がまとめる事になる。その一つの生府とは、国連(United Nation)であり、世界保健機構(WHO)だ。これらの設定を聞いただけでも、背筋が凍るのは私だけだろうか?
私の血糖値モニターでは無いが、未来では体の中にWatchMeと言うナノチップが入れられ始終政府にモニターされており、太ったり、喫煙や飲酒など不健康な生活を送る事も許されない。それは、人や人の体が公共の資源だからだ。未来では、自分自身の体でさえ政府と社会のものであり、自死の権利も無い。自分のものは自分の頭の中の、感情や判断する力だけだ。
主人公トァンの親友のミァハが、“この社会はね、自分自身を自分自身以外の全員に人質として差し出すことで、安定と平和と慎み深さを保っているんだよ“と話す。
ナノチップでのモニタリング、自己管理、抗酸化処置と累積RNA転写エラー除去で72歳が30代後半の美貌を保ち続けているという話も出てきて、近い未来には本当にそんなことも可能になりそうだ。
又、ARを使ったコンタクトレンズであらゆる人の社会評価点が一目でわかる。中国の一部の地域では2018年から既に社会信用システムと呼ばれる似たようなユーザー評価システムを政府が導入しており、そのスコアが低いと銀行でお金が借りれないだけで無く、飛行機や新幹線にも乗れない。(https://ja.wikipedia.org/wiki/社会信用システム)
(ちなみに、ARを使ったコンタクトレンズのディスプレイの開発の成功が先月発表されていた↓)
アメリカでは、政府の主導では無いが、法人主導で同じ様な事が2020年米大統領選挙後から起きている。その人の政治的見解によって右派であれば飛行機に乗る事を拒否されたり、会社から解雇されたり、SNSやオンラインサービスのプラットフォームから追放されたりしている。
14年以上も前にこの小説の中で起きる事を想像していた著者は天才だろう。そして、この小説の最後にもゾッとする程納得出来る、だが絶対にそうなって欲しくない未来のディストピアが描かれている。