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サキの忘れ物 津村紀久子

『サキの忘れ物』
津村紀久子・著。新潮文庫。

短編集です。

表題作が絶品だったせいか、そのほかの短編がなんか物足りない感じがして読みが進みませんでした。
こんなに薄い短編集なのに、おそらく史上最低のペースで読了しました。(260ページを1ヶ月かけて)

何度となくほかの本に手を出して,この本を放置しそうになりながら、またこちらに戻り数ページを読むということを何度も繰り返してダラダラと読み続けていました。

一つ読み終わるごとに、なんか小さい満足感があって、じゃあ、次も読んでみようかとなり、それでも一気に読むほど夢中になるわけでもない。

でも読むのをやめられない。気がつけば、あっ最後の短編まできたのか、などと思いながら読み終わってしまった。そして、本の厚さの3倍ぐらいの充足感があることに気づいた。

その理由を考えてみた。
うまく言い表せないのですが、なんというか、津村紀久子さんの文章は粘り強いのです。だから読む方も丁寧にじっくり読まないとその面白さがわからないような気がします。エンターテイメントではないのです。さーっと読んで終わりの話じゃなくて、言葉の一つひとつや一文や一行に、ものすごく意味が込められているように感じられるのです。
それをわかるには、丁寧にじっくり読まないとわからないのだ、と勝手に解釈しています。
他の人の小説と同じように読んではこの上なくもったいない、と私は思っています。

それともう一つは、

多分、バラエティさがあったのだとおもう。
短編集にはだいたい2種類の作り方があるような気がする。

本一冊の中に一つのテーマがあって、各短編がそれにつながるような話を集めてつくるタイプ。
そしてもう一つは、
個々の短編が全く関連性がない短編集。
これはさまざまな雑誌や発表媒体で公開された個々の短編をまとめるタイプ。
この『サキの忘れ物』は後者だと思います。

ほんとに全く違うタイプの小説を集めた短編集でした。そしてそれぞれに味があって面白かった。
津村紀久子さんが、いろんな書き方を試しているような短編が多かったように思います。

このバラエティ感の中に、
これはまさに、「サキの忘れ物」の中で出てくる『サキ短編集』をオマージュしたのではないか、と勝手に邪推したくなるぐらい、雰囲気が似ているように感じています。
この本(サキ短編集)はまだ読んでる途中なのでアバウトな勘ですが、編集感覚が似ているような気がしています。

とにかく、短編集の醍醐味を十分に味合わせてくれました。

⭐️スイーツは自宅の近所のカフェ#coffeeandbakedouceur
のキャラメルプリンです。めっちゃ美味しかった。😊


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