顧客の本当のニーズを調べることが、なぜ最適な事業をつくるのに不可欠なのか?
こんにちは、ソーシャルイノベーション事業部の田村千佳です。
もうすっかり秋になりましたね。紅葉を見ながら五平餅(みなさんご存じですか?)を食べたい気分です。
さて、先日メルマガでも案内をさせていただきましたが、
社会起業塾イニシアティブの分科会として、「顧客リサーチを通して最適な事業を考える」講座を開催しました!
この講座は、社会事業家のマネジメント支援の第一人者であるIIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]の川北秀人さんに講師を担っていただいております。
そして、ゲストとしてNPO法人ReBit 代表理事 藥師実芳さんと
NPO法人チャリティーサンタ 代表理事 清輔夏輝さんにもお越しいただきました!
今日はこの講座から学んだ「顧客の本当のニーズを調べることが、なぜ最適な事業をつくるのに不可欠なのか?」についてお伝えしたいと思います。
川北さんも、「社会起業家は当事者のニーズの代弁者となり、ニーズに基づいて事業をつくる」ことが大事とおっしゃっています。
活躍している先輩起業家の方々からも
「創業期、当事者に1,000人アンケートをとりました」
「新規事業を始めるときには、必ず調査をしています」といった声を聞きます。
事業ステージに関わらず、顧客(当事者やステークホルダー)に向き合い、
その声を聞き、社会や顧客に最適な事業を創っていくこと。
それが中長期的によい事業をつくる上で外せないポイントの一つだと改めて学びました。
学びと発見があふれる白熱した3時間
当日は、「再度、リサーチの講座を学び直したい」
「新規事業を担当しているので、リサーチの仕方を勉強したい」
といった理由から、募集団体以上のお申込みをいただき、合計17団体(28名)の方が参加されました。
活動領域は、環境、子どもの食、福祉、教育など、様々です。
分科会は、全団体の自己紹介からスタート。
その後、ReBitの藥師さん、チャリティーサンタの清輔さんより、これまで行ったリサーチ結果をどう事業に反映したのか等について、事例をご紹介いただきました。
顧客を知ることが社会に最適な事業にとっていかに必要なことか、そのプロセスの大切さやそこからの学び・大事にしていることをシェアいただきました。
例えば、清輔さんからは、「自団体だけで調査をすると、自分たちが言いたい事だけにフォーカスしてしまうので、外部の力を借りて調査をすることを大事にしている」
藥師さんからは、「自団体のためだけの調査ではなく、調査結果が他のステークホルダーにも使ってもらいやすい調査内容であることを意識している」とお話いただきました。
つづいて、川北さんのご講義です。
調査する上での抑えるべきポイントに加えて、
「調査は困っていることが分かれば解決するわけではない。見えた課題に対して、どう・誰と解決するか?を考えることが大事」
「統計的に正しいことよりも、人道的に正しい調査をする」
(例えば、当事者が支援情報について知らない場合、あえて教えることで、「こういう情報がありますが、使いたいですか?使いたくない場合はなぜですか?」と聞く。)
といった大事な視点を教えていただきました。
参加者からも、
「漠然とアンケートを取らなきゃ、という気持ちでいたが、設計してやっていきたいと思った」
「人道的な調査をしなければいけないというところが印象的だった」
「調査内容の活用が、社会への啓発や担い手を増やすことに繋げられることを学んだ」
といった感想が寄せられました。
質疑応答の時間も、自団体が実際にしようと思っている調査も見据えて、多くの質問をもらいました。講座終了3分前とギリギリまで、白熱していました…!
顧客の本当のニーズに耳を傾け、最適な事業をつくる
講義を聞いて、本当のニーズを把握することは、とても難しいことだと改めて感じました。
届けたい相手から聞いた内容が「ウォンツ」なのか「ニーズ」なのかは
注意深くなる必要があること、
本当に課題解決を目指すのであれば、「ニーズ」に耳を傾けることが大事だと学びました。
上述した、「人道的な調査をする」と同じ内容ですが、実際にアンケートやヒアリング調査をすると、ニーズを引き出しづらいことがあると思います。
その場合に、どのように「ニーズ」を正しく把握できるのかについても講座で取り扱われました。
例えば、こんなパターンと解決方法が考えられます。
A)ご本人が必ずしも「困っている」と認識されていない場合
⇒「●●さんの周りに、●●というような支援があると良さそうな方はいますか?」といったように、ご本人の周りで困っている方の状況について聞く。
B)自分の状況が正しく認知できない/伝えられない場合
⇒課題の渦中から抜けられた方に「その時には何が必要でしたか?」
「若い人にどんなメッセージを送りたいですか?」
これを聞いたときに、自分自身もこれまで業務の中で実施したヒアリングで思い当たることがありました。
例えば、新しいプログラムをつくる過程で起業家の方にヒアリングをした時です。
その時は、「●●という課題」を感じている方に向けた新しいプログラム実施を考えていました。ニーズはあるだろうと思いつつ、本当に起業家のみなさんがそう思われているのか、確認するためにヒアリングを実施しました。
そのヒアリングを実施する前に、内部で話していた内容がこちらです。
「『XXさんは●●という課題を抱えていますよね!なのでヒアリングさせてください』、とストレートに聞いても、そもそも本人が課題だと思っていないかもしれない。さらに、あなたは課題がありますよね、と決めつけたような言い方になってしまうと、ネガティブに受け取られたり、必要な回答が引き出せない可能性もあるよね。だから、周りでこういう課題を抱えている起業家の方はいますか?と聞くことにしよう」
また、創業期の起業家向けのプログラムを新しくつくるときに、
「プログラムの対象となる人へヒアリングするよりも、創業期を抜けた先輩に、当時どんな支援があると良かったですか?と聞く方が、正しいニーズが把握できるよ」
とフィードバックをもらいました。
まさに、どちらもAとBパターンのことですよね…!
課題の渦中にいる方に聞くと、ニーズではなくウォンツになりがちであることを実体験で学ぶことができました。さらに、何が知りたいのかを明確にし、そのためにどう問いをつくるのかというプロセスの重要性も同時に感じました。
そして、川北さん発行のソシオ・マネジメント「社会に挑む5つの原則、組織を育てる12のチカラ」(p13)では以下のような記載があります。
“市民(公益)活動やNPOにとって大切なことは、
1歩先の視野を持って、半歩先の事業をつくること。”
目の前の当事者の「ウォンツ」に応えることも大事なときがたくさんあると思います。そこに加えて、
「その当事者がこのまま支援が受けられなければどうなってしまうのか?」
「その人の本当の願いは何なのか?」と、
長期的な視点を持ちながら、本当の「ニーズ」を探り、最適な打ち手を考えることが大事だと学びました!
川北さん、藥師さん、清輔さん、ありがとうございました!
- INFORMATION -
<11/24-12/2開催>
社会課題解決を仕事にしよう
「SOCIAL CAREER WEEK 2022 」
世界を変える、未来を創る仕事に出会う1週間
まだ見ぬ「未来」をつくるのは、自分自身。
変化と多様化のスピードが加速する中で、
より良い社会を目指して、次代に誇れる仕事をしよう。
11月24日から12月2日までのあいだ、
ソーシャルセクターの仕事に関心がある方を対象に
『社会課題解決の仕事に出会う(SOCIAL)』と
『ソーシャルキャリアを考える(CAREER)』の
2つの観点で、さまざまな場を企画しています。
社会起業塾のOB団体、クロスフィールズや
Rebitから社会課題解決の今を知るセッションや、
さまざまな団体の採用支援をおこなっている
ETICコーディネーターからみたキャリアアップ事情など、
ほかでは聞けない内容が盛りだくさんです。
ぜひ、お越しください。
《概要》
■開催日程:2022年11月24日(月)~12月2日(金)
■参加方法:オンライン(12月2日(金)夜のみ恵比寿周辺にて調整中)
■対象:ソーシャルセクターの仕事に関心がある社会人・学生など
■参加費:無料
■お申込み:イベントページより各企画のバナーをクリック
■主催:NPO法人ETIC.DRIVEキャリア事務局
※プログラム詳細も、こちらをご覧ください。
ジェレミー・ハンター教授
Special Session for Social Leaders
人生を意図的にシフトさせ、
新たなステージを迎える半年間
「Transition(トランジション) 2023」のご案内
マインドフルネスやセルフマネジメントを、米国ピーターF.ドラッカースクールでMBAやエグゼクティブに教えてきた、世界でも草分けの一人ジェレミー・ハンター氏による特別セッションです。
今回のテーマは「Transition(トランジション)」。
仕事での役職の変化や転職、結婚など、目に見える変化(Change)とは異なり、「Transition(トランジション)」は、自分自身の内側に起きる変容のこと。
心理的な変容であり、目に見える変化(Change)と同時期に起きることもあれば、目に見えない変化であるTransition(トランジション)のみが起きることもあります。ジェレミーさんはこういった大人になってからの成長は意図的にするものだと言い、本セッションの目的でもあります。
立ち止まる機会をつくり、自分の人生を考える時間を持ち、丁寧に見つめることで、Transition(トランジション)を意識的に体験します。まずはTransition(トランジション)を知り、そして対処の仕方を学び、半年のセッションで実践していきます。
これまでに200名以上のソーシャルリーダーが参加してきたセッションです。講師のハンター氏からのメッセージや、これまでの参加者の声も参考にしていただけましたら幸いです。
《概要》
●日時(全6回への参加が必須)※間に30分の休憩をはさみます
2023年1月26日(木)、2月9日(木)、3月2日(木)、3月8日(水)、5月10日(水)、5月31日(水)各10:00~13:30
●場所:オンライン(Zoom)
●対象:
・ETIC.が主催するプログラムに参加したことがある、または、ETIC.が提供するサービスを利用したことがある方(スタッフの方の参加も歓迎です)
・過去に参加した方からの推薦がある方(ETIC.スタッフからの推薦も含む)
●参加費:本プログラムは、利益を目的としておらず、日本のソーシャルセクターにこのセッションが必要だと考える、ジェレミーさんの協力と、事務局のボランティアベースの活動により成り立っています。
参加費は、【一般】と【ソーシャルリーダー】の2種類を設けています。
【一般(営利企業)】27万円(税込)/人
【ソーシャルリーダー特別価格】12万円(税込)/人
●申し込み、詳細はこちら
「ユースセンター起業塾/事業創造コース」
公募開始のお知らせ
ETIC.が2021年から事業パートナーとして参画する「ユースセンター起業塾」についてお届けします。
このプロジェクトは、認定NPO法人カタリバが推進するもので、日本全国で10代の居場所「ユースセンター」の起業を目指す人たちに3年間の助成と伴走支援・経営支援を届けています。
昨年度から1期生である全国14団体の皆さまとともに活動してまいりましたが、この度、子どもたちの意欲や創造性を育んでいくための「居場所」をさらに日本全国に増やしていくために2期生公募を行います。ご関心のある方はぜひ内容をご確認ください。
■ユースセンター起業塾/事業創造コースについて詳細はこちら
※公募期間は【2022年11月21日(月)~2023年1月16日(月)15:00】まで
応募をご検討いただける方は、まずは公募説明会へのお申込みをお待ちしております。
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公募説明会のご案内
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本事業の申請を検討いただいている方/団体を対象に、説明会を開催いたします。
説明会への参加は応募上必須ではありませんが、
公募要領の内容を理解いただくため、ぜひご参加ください。
開催後、当日の発表資料は上記HPにて公開いたします。
■日程:
①11月24日(木)20:00-21:00 @Zoomウェビナー
②12月3日(土)10:00-11:00 @Zoomウェビナー
プログラム:事業趣旨・公募要領に関する説明、質疑応答
※申し込み〆切は各日、前日の12:00までです。
※日程が合わない場合は、アーカイブ視聴のお申し込みが可能です。
■説明会(アーカイブ視聴)のお申し込みはこちら
■お問い合わせ先
認定特定非営利活動法人カタリバ
インキュベーション事務局
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WEBサイト
Editor's Note - 編集後記 -
私自身は今回の講座を通して、日々やっていることの中で、
「できていること」「できていないこと」を振り返る機会となりました。
特に、ソーシャルイノベーション事業部では、「経験学習サイクル」を回して日々みんなで学習しようね★とコーディネーターのスキルアップを頑張っています。
稚拙で、爪の甘い文章だったと思いますが、文字化することを通して、学びを概念化することができたと感じています。
特に、「ニーズ」を確認する力はまさに起業家の伴走コーディネーターとして非常に必要なスキルであることを、改めて腹落ちしつつ、反省しました。
私は、社会起業塾イニシアティブという20年間続いてきたプログラムの担当をしています。
しかしながら、起業家の皆さんのニーズの代弁者としての理解には及んでいません。
これまでの卒塾生140人に繋がり直しも含めてヒアリングさせてもらうのは良いかもね、とチーム内で話が出ています。
今回学んだことを活かして、140人の皆さんに何を聞きたいか、ヒアリング結果を元に何を生み出したいのか?仮説を持って臨みたいと思います。
お読みいただきありがとうございました!(田村)
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