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新島に流れ着いた姫路のボール
キャンプ場に着いた。テントは2、3張りしかない。暑い盛り、少しでも木陰になりそうなサイトを選んでリュックを放り出した。
先住のキャンパーが声を掛ける。もうここに来て数週間になるという。髪が長く体格の良い青年で、海に潜って銛で食料調達をしており、カエルなどの爬虫類も食する。
テントを張り、疲れて寝てしまった。
夕暮れに起き出すと、キャンプ場には無数のテントが所狭しと並んでいた。みんな、欧米系の外国人である。先住青年によると、日本在住の外国人ネットグループだという。
夜になり、炊事場に設置した機器から音楽が流れ始め、数十人の男女が踊りはじめる。時とともに音量が上がり、ヒートアップしてトランス状態になる。
近づいて一枚写真を撮ると、リーダーと思しき東南アジア系の男性が近づいてきた。「迷惑掛けましたか?」。いや、と私は答えた。テントからは、セックスをする声が漏れた。
翌日、海岸に出る。長く伸びる砂浜には誰もいない。
漂着物の中に、ソフトテニスの白いボールがあった。まだ空気は入っている。拾ってみると印字があり、姫路の高校名だった。
放課後、コートから打ったボールがフェンスを超えて用水路に落ちる。支流から河を下り、やがて瀬戸内海に出る。紀伊水道から太平洋に出て、黒潮に乗る。
ボールを高校に届けようか、と思った。新島で見つけたんです。
己のあざとい心を見たようで、ボールを置いて海岸を去った。