⑧アフガニスタン料理と「ほんとのトルコ人」
今回、イスタンブールに行くにあたって、移民のことを書くならこれしかない!というくらい持ってこいの本に出会いました。
で、この澁澤さんの本によると「ほんとのトルコ人」と呼ばれる人々が、ゼイティンブルヌという中心から少し外れた場所に住んでいるという。そもそもこのエリアには、牛の皮革工場がたくさんあり、そこで働く人たちの多くの人々が「ほんとのトルコ人」だったらしい。
こちらは、私がゼイティンブルヌに来て初めて出会ったハザラ人の若い女性と私。シーシャ屋でバイトしていて、フレンドリーな雰囲気で英語も出来たので、私の方から「ハザラ人ですか?」と聞いたら「そうよ!」と明るく答えてくれました。今時の子という感じで、フランクで米国人のようなノリでした。まさかアフガニスタン出身の女性とこんなに積極的に話ができるとは思ってなかったので、軽いカルチャーショックを受けました。
彼女のような、モンゴロイド系の所謂「アジア顔」をした中央アジア各国の人たちをトルコでは、タタール人とまとめて総称するようです。そして、その人たちを「ほんとのトルコ人」と呼ぶのだとか。なので、このゼイティンブルヌは、アフガニスタンよりも旧ソ連の中央アジア諸国や中国のウイグル人が多かった街だったようです。
澁澤さんの本は、出版してから10年ほど経ったともあり、私たちが訪れた時とは街が変化していました。本の中に書かれていた、皮革工場跡地は、駅の南側にあった大きな地域で、現在、そこには超高級マンション(写真奥のビル群がそれ)とショッピングセンターがオープンしてました。
一方、駅の北側は、今も庶民向けの店が並んでいます。このメインの駅前商店街で、目につくのがアフガニスタンのレストランでした。書かれていたようなウイグル料理店は、あまり目立つほどはありませんでした。
こちらは、その商店街の金曜礼拝の様子。みなさん、モスクに入りきらないので、外の歩行者商店街で拝んでいました。この記事のトップ写真もそれです。道端で拝む景色も街の中心では、あまり見られない光景です。
現在もウイグル料理やウイグル人経営らしき肉屋。皮革工場で働いている人が多かったことから、肉屋もウイグル人がやっているのでしょうか?この食材店は、活気のある感じの店でしたが…
ウイグル料理店は、こんな感じでちょっと寂れていました。何軒かウイグル料理の店を見かけましたが、随分前にウイグル人向けだったが、今は活気がなくなったという感じでした。
ウィキで調べてみると、この地域のレストランの複数のウイグル人従業員が2017年イスタンブールのクラブでテロ活動を行なったそうです。そんなこともありウイグル料理店が減ったのか、はたまた皮革工場がアジア側に移転したためなのか、色々と事情がありそうです。
そんな中、商店街を歩いていると、なんと出来たばかりのカザフ料理店が、商店街のど真ん中にありました。話しを聞くと、イスタンブールで一番多くカザフ人が住むエリアがこのゼイティンブルヌで、しかも一番最初にやってきた移民がカザフ人なのだとか。そのあとウズベク人や他の中央アジアの人々がやってきたと料理店の店主は言ってました。
いただいたカザフ料理は、ほとんど肉の出汁と塩くらいの味付けで、限りなくモンゴルに近い料理だなあと感じました。しかし、羊以外の肉も色々食べるところにカザフらしさがあるのでしょうか。現地に行ったことがないので、まだまだ私にとっては、カザフ料理は未知の世界という印象でした。
世界的に知られるカザフ人の詩人の銅像が駅前広場にありました。カザフスタンでは、文化的な偉人として誰もが知っている方だそうです。ウィキを見るとモスクワにもあり、あのナリワヌイさんがデモの待ち合わせ場所をモスクワのアバイ像前にしていたそうです。しかし、この方の銅像に無礼なことをツイートしてカザフ人から総すかんをくらったという記事がwikiに載っていました。私もカザフスタンに行く時があったら、彼の詩は読んでから行こうと思います。
さて、この町の見どころは、なんと言ってもアフがニスタン料理!メインの商店街を歩いても、この写真のようなアフガニスタンの新し目のレストランに出会います。私調べでも、この町に10軒以上もありました。
夕方になると、アフガニスタンからの移民とみられるパシュトゥーン、タジク、ハザラ、ウズベクなどの諸民族の人たちが、こうしたレストランで平和を謳歌していました。多くの人が持つアフガニスタンのイメージとは、かけ離れたイメージでしたが、これこそが古き良き平和なアフガニスタンだったのかもしれません。
また、食材店も中央アジア系の店は、20軒以上あったかと思われ、アフガニスタンの女性向けの服屋も数軒見かけました。
主なアフガニスタンからの移民は、古くは80年代からいたようですが、90年代に特に増えたようです。実際、このゼイティンブルヌには、およそ2万人のアフガニスタンからの移民が住んでいると言われています。ちなみに、トルコ全体では20万人いるそうです。
この街には、いくつものアフガニスタンや中央アジアの店が住宅街の奥に潜んでいます。ある場所に集まっているわけでなく、まばらにあるので、それを発見していくのが楽しくて仕方ありませんでした。新大久保でハラールショップ巡りをして外国の食材を楽しめる方なら、この中央アジア食材を販売する店巡りは、楽しくてしょうがないと思います。
その中でも、明らかに品揃え豊かな「アジアマーケット」は、オススメ中のオススメです。こちらも駅から徒歩10分くらいの場所で、商店街から西へ少し入った住宅街の中にあります。
見てください!このように、中央アジア諸国でしか見られないような食材の宝庫です。
この店がすごいのは、食材並に衣服や雑貨も販売していること。オーナーさんは、この店で中央アジア各国の文化も伝えたいということで、こうした品揃えにしているんだとか。他の食材店なども見て周りましたが、ここが圧倒的に品数が豊富です。
私たちが撮影するだけでなく、色々なものを買っていくことが分かると、オーナーは、率先して色々なものを販売しようとアピールしてきました。その中でも、この商品は本当にレアモノです。
なんとアフガニスタン製の圧力鍋だそうです。アフガニスタンの人たちは、必ずこれを使って料理をするのだとか。実際、他の店でもこの鍋はよく見かけました。料理に対するアフガニスタン人のこだわりを感じます。
さて、そんなアフガニスタンの料理を食べるにあたり、どこに行って良いか迷っていたのですが、ここは現地の人に聞いた方がいいなと思いました。最初にアップしたハザラ人の女性に聞いたところ、こちらの「ナボイ・メヘマンサラエ」という店を勧められました。ウズベク人のオーナーが運営しているようで、アフガンとウズベク料理の両方を提供していますが、メインはやはりアフガニスタン料理でした。
ロケハン時と撮影時で、この店は2度訪れているのですが、1回目は1階のいかにもな食堂で、アフガンショルバなるものを食べました。写真は2階です。
1人で取材している時に食べたのが、アフガンショルバというスープです。たどたどしい言葉で、食べ方の説明を受けると、まずは、パンをちぎって皿にいれなさいと指示されました。終わったと告げると…
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カフェ・バグダッドさんが提案された「世界を知るための10皿」という企画に乗り、様々な国の料理を取り上げていきます。料理を通じて、移民の方々や、聞きなれない国に親しみをもってもらいたいと考えてます。今後はYouTube「世界のエスニックタウン」と連携した企画をアップしていきます。