【展覧会レポート】ジャン・プルーヴェ展|東京都現代美術館
こんにちは。休日の美術館巡りが大好きなRyan(ライアン)です。
先日、東京都現代美術館で2022年10月16日(日)まで開催していた「ジャン・プルーヴェ展」に行ってきました!
実際に行ってみて感じたことや学んだことを、プルーヴェの歴史や当時の様子と共にレポート形式で紹介します。
ジャン・プルーヴェ展
「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」は、20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えたジャン・プルーヴェを紹介する大規模な展覧会で、プルーヴェが手がけたオリジナルの家具や建築物およそ120点が、図面やスケッチなどの資料とともに展示されていました。
20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えたと言われるプルーヴェは、どのような想像力やアイデアでものづくりに取り組んでいたのでしょうか?
■プルーヴェってどんな人?
ジャン・プルーヴェは、ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレと同じ時代で活躍したフランスのデザイナーであり、建築家、そしてエンジニアでもあります。自らを「構築家(constructeur)」と呼び、フランスの建築生産の工業化に大きな役割を果たしました。
設計から生産までモノづくりのプロセスに一貫してこだわり、見た目のデザイン性よりも構造から導きだされるデザインに重きを置き、新素材や最先端の技術を常に追い求めていたデザイナーの一人でもあります。
現在も家具業界のみならず、ファッション・アート・建築の分野でも注目を集めている人物です。
プルーヴェがなぜ構造的なデザイン性で評価されてきたのかを見ていきましょう!
■家具や建物を工芸から工業へ
プルーヴェは、アール・ヌーヴォー(国際的な美術運動)の全盛期に、フランスでナンシー派の画家の父と音楽家の母に育てられました。
金属工芸家としてキャリアをスタートさせたプルーヴェは、誰もが工業製品を手にできる社会を目指し、新しいものを受け入れながら模倣せずに常に創造するという思想で、1920年代末に金属工芸から離れ、薄銅板を使うようになりました。
それにより、特注品と量産品の両方を手がける工業化の仕組みを構築したのです。
1930年代には市場の拡大にともなう大量生産の要請に応え、公共機関や大学に向けた家具を数多く手掛けました。
プルーヴェの思考と目指した社会が、プルーヴェ作品の「シンプルで美しい」という特徴を作り上げたいのです!
特注品の中には、自転車やフランスの銀行で使う移動式脚立もデザインしており、細部にはハイテクデザインの曲線美や、軽くて扱いやすい薄銅板によって再現された強い脚など、プルーヴェらしさを存分に見ることができました!
■圧巻のスタンダードチェア
プルーヴェの家具デザインにおいて、椅子は最も重要で、美しく整ったかたちを保ちつつ、剛性と人間工学に基づく合理性が交わるデザインが印象的でした。
1934年に作られた椅子は「スタンダードチェア」として知られる最初のモデルであり、その後も環境や素材の変化に合わせて改良が繰り返されます。例えば、第二次世界大戦時には資材不足の中で木材だけで作られた頑丈な椅子を作り、フランス国内ではクッションを付けて座り心地を高めた人もいたそうです。
私は小・中学校の椅子を思い出し、懐かしく感じました。
プルーヴェのなるべく簡素化・合理性を追求した製造方法で、多様に利用できて使い心地の良いものを作り出すための改良を続けた結果、その後もさまざまなオフィスチェアやイージーチェアが生み出され、異なる条件に適した応用型が作られるようになりました。
このエリアでは、プルーヴェが作った椅子から彼の建設的な思考と絶え間ない進化を感じることができました。
■組立・建築可能な建築
家具をつくることと建物をつくることは隔たりがないと考えたプルーヴェは、目的と機能がデザインを決めるという機能主義と製造を結合する合理性に基づいた「建設的思考」を構築しました。
また、1930年代から小規模で生産されていた構造体を組み合わせる仕組みを考案しました。
その先駆性には「工業製品の量産によって人々に健やか暮らしをもたらす」というプルーヴェの社会的理想が背景にあり、経済性、軽量性、拡張性を重視しながら快適さを高められるような改良を重ね、家具や建物の改造・解体・移設といった一次性も持ち合わせることを可能にしたのです。
《「メトロポール」住宅(プロトタイプ、部分)》
1930年代後半、ヨーロッパが戦禍に巻き込まれていくなか、部隊と武器の移動が戦略上、重要な位置を占めていました。
そこで、フランス軍の要請に応え、移動式の一次避難施設を設計しました。
それにより、「内部ポルティーク構造」方式と呼ばれる門型フレームの構造体と、「外部露出骨組み」方式と呼ばれる交換可能なパネルを使用したファサード(建築物の正面デザイン)の2つが開発されました。
この構造は3日で拠点を組み立てることができ、最適な物資の補給と戦力になりました。
《F 8×8 BCC組立式住宅》
この家は戦争被災者のために、1日半で組み上げられる画期的な工法を構築し、さらに戦時下で不足していた鋼材に代わり木材でできているプレハブ住宅です。
プルーヴェとピエール・ジャンヌレが第二次世界大戦中の極限状態で協働し設計・建設したもので、彼らの並外れた適応能力と近代化へのあくなき探求を表す作例だといえます。
▼「the CONSTRUCTOR ジャン・プルーヴェ:組立と解体のデザイン」
(YouTube)
以上で紹介した作品も含めいずれも解体・移築可能な建築物で、フランスの建築史において重要な位置を占めるとともに、プルーヴェの類まれな創造性を体現していると言える作品ともいえます。
《「メトロポール」住宅(プロトタイプ)》(1949年)
《F 8×8 BCC組立式住宅》(1942年頃)
《6×6組立式住宅》(1944年)
このような展示から、組立式住宅であることが強調され、建材や構造の特徴が浮かび上がってきます。
プルーヴェの素材への執着や構造に対する探究心などを肌で感じることができました。
個人的ベストワン作品
ズバリ!個人的に本展覧会でベストワンだった作品は、「メトロポール」チェアです!
後ろの脚が独特な形をしてますよね!
これは、プルーヴェが椅子に座るときに前脚を浮かせて後ろに傾けるのが好きで、後ろ脚を頑丈に補強する必要があったからだと言われています。
みなさんも小学生の頃によくやっていましたよね?(笑)
形状をよく見ると、荷物負荷が最も大きくなる部分が太く、先端に向かって細くなっているので、安定性が増すのです。
さいごに
「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」で学んだプルーヴェ作品の特徴をまとめました。
私はジャン・プルーヴェの作品で、家具・建物の在り方や、社会的理想を反映するものづくりの姿勢などが、考えるべき環境問題の応答としても捉えることができました。
みなさんもプルーヴェのように、自分自身で社会的理想を持ち、技術の探求を忘れない心を持ってものづくりをしたことはありますか?
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