人間なんて〇〇だから―Side S―
人間なんて、所詮は別々の生き物で。
同じような境遇、同じような経験、同じような立場
共通項を持っていたって、同じ人間にはならない。
誰もが違う考え方を持っていて、
誰もが違うことに魅かれ、
誰もが違うことに怒りや悲しみを覚えて。
駅で電車を持つサラリーマン。
仲間と笑い合いながら登校する学生達。
重そうな買い物袋を下げて歩く主婦。
神社で静かに手を合わせる老人。
誰もが違う人間。
自分という人間は自分しかいないから、
他者を全て理解することなど出来ない。
そんなことわかっているはずなのにすれ違うことに悲しみ、
自分の思いが伝わらないことに苦しむ。
違う人間だから仕方がないとわかっているはずなのに。
それでも、わかりあえないことが前提の世界の中で通じ合える瞬間があるから
僕達は生きていける。
ほんのわずかかも知れない。
ほんの一瞬かも知れない。
それでも、小さな共有と共感が個々の人間を結びつける。
きっと、今もどこかで、誰かが誰かと通じ合っている。
きっと、今もどこかで、誰かが誰かと結びついている。