だから、どうか気付かないままで。
あなたは本当の私を知らない。
知らないんじゃない。
知っていると思っている。
それどころか、もしかしたら、こんなことを考えたことさえないかもしれない。
それは信頼とも言えるかもしれない。
安心感とも言えるかもしれない。
愛情とも言えるかもしれない。
だけどね、あなたは知らない。
私があなたとは違う方向を見ていることを。
窓のある同じ部屋にいたとしても、あなたは窓を見ているの。
だけど、私は窓の外に広がる世界を見ているの。
それでも、あなたは同じ光景を見ているのだと信じている。
あなたは、今、私が何を見ているのか知っている?
私はあなたと違うものを見ている。
私が見ているものに気付いてほしいと思ったこともあったけれど、
今はもうそんなことどうだっていいの。
あなたは私があなたとは違うものを見るようになったことに気付かなかった。
それは私の胸に寂しさを植え付けた。
気付いてよ。ねぇ。気付いて。私を見て。私の気持ちに気付いて。
だけど、あなたは気付かなかった。
だから、もういいの。
気付いてくれなくていい。
私は私の見ていたいものを見ているから。
あなたに気付かれないように、私として生きる。
だから、どうかあなたは本当の私に気付かないままで。