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『雪見障子』

『雪見障子』

隣では静かな寝息 火照りが治まりかけた指で窓をなぞれば露が垂れる

貴方のガウンを羽織って外に出れば銀世界

吐息の白さを見つめて想う

愛しているという言葉に嘘など無いのでしょう

少なくとも私はそう信じております

だけど愛には形がない 重さがない 目に見えない

時として突然生まれ 時として一瞬で壊れてゆく

永遠と言ってはいても永遠も解らぬものですから愛の存在期間など解りません

だから不安になるのです 怖くて仕方がなくなるのです

言葉も想いも真実だとしても消えぬ保障などないのですから

人は愛が綻びても千切れる可能性を低くするために色々します

ですが法でも認めてもらえぬ私達の愛は より不確かなもの

それが口惜しくて小指を噛めば雪明りの元 朱が落ちる

この朱はきっと苦悩 どうにも出来ないもどかしさ

袖でそっと顔を覆えばあなたの優しい香り

愛を失う日が来たならば私はこの香りすら失うのでしょう

そして私自身をも失うのでしょう

貴方が愛しければ愛しい程 あなたを失うのが怖い

貴方が愛しければ愛しい程 私の不安は大きくなるのです

こんな私を愛してくださる貴方なのだから この気持ちを解って下さるでしょう

そしてきっと貴方も私と同じなのでしょう

この小指を叩き切って貴方に差し上げたら

貴方の小指を戴けたのなら

その時 私達の愛は形を持って不変となるのでしょうか

お望みならば差し上げます

痛みや恐怖などは感じません

それで確かなものと出来るならば