#66 -ご飯の炊き方を知らないヨーロピアンに遭遇した時。エピソード1
あの衝撃は忘れられない。一度遭遇しただけでボクの脳裏に半永久的に焼き付けられたあのシーン。。きっと同じ現場を目撃した日本人の人はたくさんいるのだろう。。そして誰もが同じリアクションをとったことだと思う・・・
*
日本人であるボクたちにとってはもはや頭で考えなくても体が勝手に動くほど日々の生活に溶け込んでいるこの習慣。
お米を備え付きの計量カップで計り、軽くお米を洗い、とぎ汁を捨て、炊飯器に入れ、印があるところまでお水をいれて後はボタン一つで終了。
しかし日本やアジアから遠く離れたヨーロッパでは炊飯器というものがない。Zojirushiなんて言葉も聞いたことがない人ばかりだ。
ところ変われば・・・というように、ご飯の炊き方も変わるのだった・・・
*
あれはまだボクが初のバックパック旅をしていたころだった。エストニアで滞在していたホステルで、リトアニア人の旅人が共有キッチンで料理をしていた。
ボク・何つくってんの?
Viktor・うーん、Riceとテキトーな野菜炒め。
へぇー、ご飯も食べるんだー。ライスは世界共通なんだなーなどと、世間知らずの21歳のボクは視界に入っている調理器具には疑問も持たず、世間話を進めていた。。
Viktor・おっ、そろそろご飯が炊けるな。。
そして次の瞬間、ビクトルはボクの目の前にあったアノ調理器具に手をつけた。。
その調理器具とは・・・・
ざるだった。
( ゚Д゚)!!
あまりの予想外の展開にボクの脳はフリーズして自体が呑み込めてなかった。。
そんなボクを余所に、ビクトルは慣れた手つきで作業を進める。
ざるを流し台に設置する。
お米が入っているであろうお鍋をコンロから持ち上げる。
そして・・・
当たり前のような顔をしてお鍋から大量のお米をざるへと流し込む。。。
ざぁーーーっと、普通見ることない大量のお湯も一緒に米と共にざるに流れていく。
Noぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
(;゚Д゚)・・・・・・・
まるで犯罪現場を目撃したような気分だった。
まるで坂道駐車した車がハンドブレーキを忘れて、坂道をくだっていく様子をみているような気分だった。
ざるに入ったぬめりっ気たっぷりのご飯をチャッチャっとパスタのゆで汁をきるようにしてから調理台に再び戻すビクトル。
ボク・いつもこうやってんの?
Viktor・ん??そうだけど、なんで?
いや、そうだ。彼からしたらこれが当たり前なのだ。。。象印も目の付け所がシャープなやつもここには存在しない。
しかしビクトルは続けてこういった。
Viktor・いつも買ってるライスがなかったからね、今日は。いつもは袋入りを買ってるんだ。
爽やかな顔して言っているが、べちゃライスをお皿に盛る様子に若干引き気味のボクだった。。そして彼が言った「袋入り」という意味をその時ボクはまだ理解していなかった・・・
Viktor・食べる?
無垢な顔をしてボクに問いかけるビクトル。。
これはテストなのか?日本人であるボクを試しているのか?このお米に対する冒涜に等しい行為に対するボクの反応を期待しているのか?
と、そんな訳のわからない思考が頭のなかを走り回っていたけど、ここまで酷いと試したくなるのが人間の性というもの。
ひとくちだけ・・・
とスプーンにべちゃライスを乗せ口に運ぶ。。。
べちゃアルデンテ・・・そんな言葉がピッタリな食感だった・・
ボクがゴードン・ラムゼイだったらFワードをしきりに放っていただろう。
想定外の不味さはある意味想定内だった。
まだ若かりし頃のボクは英語でハッキリと否定をすることが苦手だった。。100歩譲って、精一杯考えた結果、
Interesting・・・・
という、遠回しに「不味いね」という一言でかたづけた。
日本語で言うところの、
新しいっ!
と同等の言葉だとボクは思う。
その日の夜、ボクはベッドに仰向けになって今日の出来事を振り返っていた。
20年前くらいなら、手紙に、
「母さん、今日は不思議な出来事が起きました・・・」
と綴っていたことだろう。。
その衝撃の出来事から2,3日後、再びビクトルとキッチンで一緒になる。
Viktor・おぉTaro!今日はいつものライスが売ってたよ!ほらっ。
そう言って、いつものライスをボクの前に放り投げた。
エピソード2へ続く・・・
書くことを仕事にするための励みになります。