【風通風呂敷】コストカットの工夫の話
お久しぶりです。
今日は前回したお話をもう少し別の角度でお話しようと思います。
前回は「同じ銘柄の糸を30年以上使い続けることのメリット」と題して、同じ品質を保つことってみんななかなかしていないんだよ、でもコストカットの為には大事なんだよ、というお話をしました。
今日お伺いした内容は、上羽さんならではのコストカット法でしたので、ここに記しておきたいと思います。なかなか簡単にマネできることではありませんが、長ーくつづく商売には欠かせない考え方が詰まっています!
ぜひ最後までお読みくださいね。
1:チーズ染色と綛(かせ)糸
タイトル意味不明ですよねw
チーズ染色については以前書きましたので、詳しくはこちらをご覧ください。
「染めについて」の章で書いています。
①チーズと綛ってどんな?
簡単に言うと、”チーズ染色”というのは、
こういう状態で染めてしまうことです。まさにチーズみたいですよね。
で、綛(かせ)糸というのは、↓
こういうやつのことです。つまり”商品の状態”。
で、チーズと枷のイメージができたところで、コストカットのお話です。
②チーズと綛は何が違う?
まずチーズは、染める場合のひとつの単位です。大量に巻いておくことで染めの手間を減らし、均一に染めることを目的としていると思われます。
綛の場合は手染めをしたり、染めた糸を販売するための一定量に分けたもの、という位置づけでしょう。
ですので、チーズ染色したものを、販売単位に合わせて短く切って綛にする、ということですね。
③織る前の工程「整経」について
織機で織り始める準備段階として「整経」があります。
これは簡単に言うと、経糸を織機にセットする工程です。
経糸は大量にありますが、どの糸も同じような張り具合で均一に織機にセットしなければなりません。
で、整経するためにも糸をボビンに巻いたりなどのいくつもの工程が必要なのです。
はい、では織機にセットするまでに、ざっくりとどういった工程になるでしょうか?
チーズ染色
↓
いくつかに切って綛にする
↓
整経のためにボビンに巻く
↓
必要な長さにつなげる
↓
織機にセットする
。。。。。あれ?
切ったのにつなげてる??
え?なんでこんなことに??
④無駄を省く
実は、上記の工程はすべてバラバラの職人さんや会社を経由することがほとんどなんですね。また、実際は発注した会社を経由することがほとんど。
チーズ染色(染屋さん)
↓
いくつかに切って綛にする
↓
発注会社へ納品
↓
発注会社が整経屋さんに発注
↓
整経のためにボビンに巻く(糸繰り屋さん)
↓
必要な長さにつなげる(整経屋さん)
↓
織機にセットする(整経屋さん)
という感じ。
なので、それぞれの無駄に気づきにくいんです。
だって染屋さんはいつも、染め上がった糸は一定の基準の綛にしてから納品するのが当たり前。
発注している会社は、綛で納品されて当たり前。
整経屋さんは預かった綛から織機にセットするまでが仕事。
それぞれの仕事はまっとうしているんです。
なので逆に無駄に気づかないことがある。
(通常は切って綛にする方が扱いやすいので、綛にして当然なんですがね!)
でも上羽さんは糸屋とも染屋とも整経屋とも窓口はひとつ。
商品も一種類。
前回も言いましたが、ずっとずっと同じ商品を同じように作り続けている。
なので、注文は「いつもの頼むわ」で終了。
なので、上羽さんの会社を通さずに直接染屋から整経屋に送ってしまうんです。検品しません。それで大丈夫。
だからもう綛にする必要性がないんです。
なのでチーズのまま整経屋さんに渡します。
⑤無駄を省くメリット
さあ、手間を省くだけではありません!
こういう工程で、綛にしないことでどんなメリットがあるか。
それは
・つなぎ目がないからきれいで丈夫
・糸繰代がかからない
こんなメリットがあるんですね!
つなぎ目がない糸の方が、整経するにしても扱いやすくなりますよね!
それに織っていても、やはり切れにくい。
一本のきれいな糸はそういったメリットもあるんですね。
そして糸繰り代がかからないんです!
これも大きなメリットです。
チリツモで商品の価格に影響します。
整経代もやはり安くなるそうですよ!
こんなにメリットだらけなんですね。
2:上羽さんの無駄の省き方
皆さんも会社で”無駄を省く”努力はしておられるでしょう。
その無駄の省き方、どこまで俯瞰してやれてますか?
別部署の人の運用の仕方、別の会社の作業工程。
そういったことをどこまで把握しているのか?
それが大事になってくるんですね。
上羽さんの場合はそういった俯瞰の視点がかなり高い人であることがわかります。
染屋さんも”綛にする手間”、”糸繰りの手間”、整経屋さんの”糸をつなげる手間”。そういったことを「省くことができる」と気づく上羽さんの視点の高さを持ちたいものです。
それぞれの工程を把握しているからこそ考えつく無駄の省き方。
上羽さんの風呂敷は、なので品質に比べると安い商品になっているんですね。
上羽さんは気づいていないかもしれない。
のですが、そうして無駄を省いて作られた本当の”コスパのいい商品”は、地球にも無駄なく優しい商品になっていると思います。
10年以上も長持ちする生地でさまざまなものを包む。
エコバッグとしてやバッグとして、お弁当包みとして。
愛着をもってひとつの製品を長く使用することは、使い捨てるはずだった商品を生み出さないことにつながっています。
だから私は上羽さんの風通風呂敷が大好きです。